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静寂

 窓越しに見上げる満月が、今日は泊黄色に輝いている。


 創ってきて、果たして本当に良かったのだろうか。そんなネガティブなことばかり考えてしまう、静寂に包まれた真っ暗な夜だ。


 静寂といっても、電力を絶たれた人工物の稼働音が一切しないだけで、自然の音は、普段と変わらず、すぐそばで息づいている。


 凛としたコオロギの演説。風にざわめく木々の叫び。上空を戦闘機のようなスピードで滑空するキジバトの羽音。意識を外の音に向けると、夜の世界がいかに賑やかなものなのかに気がつく。


 土も、空も、海も、どんな時だって、人智を超えた正確さで循環していく。そのペースには、寸分どころか万分の狂いもない。

 そこへきて、人間社会のあやふやさ、でたらめさときたら笑ってしまうくらいだ。


 南方、いつもなら函館山のふもとを埋め尽くす街明かりは、依然として真っ暗闇に呑み込まれたまま。そのせいか、夜空の星々がいつも以上に輝いて見える。


 低温サウナさながらの熱気のなか、僕は昨日から数えて十二本目の蝋燭に火を灯した。

 炎の熱い匂いを嗅ぐと、真綿で締めつけられたような喉元の緊張感が、気休め程度でも緩まった気がした。


 一筋の赤い希望にメモ帳とボールペンをあてがい、この膠着状況を俯瞰視点から整理してみる。

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