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充足

 夕方になっても、灼熱の熱波は一向に衰える気配を見せない。暑苦しい外気から一転、玄関のドアを開けてなかに入ると、そこには涼しい極楽空間が広がっていた。


 摘み取ったカシスの入ったバケツを順繰りに持ち上げ、土間にどすん、どすんと置いていく。


 続いて、ブルーベリーが溜まった大きなコンテナボックスを、合計で十個、腰に気をつけながらなんとか運び入れる。


 毎年お世話になっている摘み手さんたちや、ボランティアとして来てくれる人たちが、暑いなか、一粒一粒丁寧に摘んでくれた大切な収穫物だ。


 土間にあぐらをかき、二時間ほどかけて収穫物をパックに詰めていく。その間僕は、振り返ってみると自分でも驚くほど忘我の境地に達していた。





 気がつくと、いつの間にか外は夕暮れ時の空気感に満たされていて、蛙たちの鳴き声が響いていた。


 居間の電気を点け、メモ帳を開いて、今後の出荷の流れを整理する。


(今日摘み取ったブルーベリーは、四十キロ分がルプスフーズ行きで、残りの半分は駅前のホテル。今週末収穫予定の六十キロくらいは全てジャムに加工して、十月中旬にルプスに納品。カシスはこれまで収穫した分をジャムにして、これも同じく十月中旬にルプスへ。明日から追い込みをかけて収穫する分は、とりあえず冷凍にかけてストックしておく)


 壁際に横並びで設置された、大きな業務用冷凍庫四台を全て開け放つ。

 

 右端の冷凍庫の半分目くらいまで収められたハスカップとレッドカラントは、青と赤の果皮が目に鮮やかだ。


 こんな夏盛りの日、収納スペースの縁から漏れ出てくる冷気を、腹全体で受け止める時の気持ち良さときたら格別だ。


 と、そこで、僕はある重大なことに気がついた。今日収穫した分を全て入庫したら、四台目までもがパンパンになってしまうということに。


 収穫作業にのめり込むあまり、概算が大きく外れてしまっていたらしい。


 やれやれ、明日の朝一番でこいつらを取り出してダンボール箱に詰めて、冷凍倉庫業者へ納入しに行かないとな。


 ソファにどっかりと腰をもたれかけると、そのまま体が硬直して動かなくなってしまった。


 僕の心身は、いつものごとく自分自身が認識している以上に疲労困憊しているのかもしれない。

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