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「特に最近は、なんか生き生きとしてないっていうか、無気力っていうか、うまく言えないけど、大切なものを失っていっている気がするの。ここ数年の間に学校で起きた一連のことは可愛そうだなとは思うけど、世界はもっと大きくって広くって、色んな人や世界があることを知って欲しいんだ。だから、また旅をしながら仕事をしたいなって。颯が小さかった頃によくそうしていたように。今度の札幌の個展、颯も連れて行こうと思ってる。本人次第だけどね」


 この世で最も偉大なクリエイターは、子育てに奮闘している真っ最中の母親だと、今なら素直にそう思う。


 所詮、どれだけ大仰な創作行為も、子供を育てる大変さや意義深さに比べたら、全くもって取るに足らないだろう。





 

 収穫作業が一段落ついた後、僕たちは蜜蜂たちの様子を見るため、圃場の真ん中に設置してある巣箱の方へ移動した。


 防護服と革手袋を身につけ、箱のなかから取り出した巣枠を丹念にチェックしている柄ちゃん。


 格子状に敷き詰められた巣枠を蜂たちが行き来している。先週と比較すると、全体的な個体数は目に見えて減少していた。


 今年も、ブルーベリーの花の受粉を手伝ってくれた頼もしい彼らは、その短い役目を終え、儚い命を自然界に散らそうとしているのだ。


 柄ちゃんが巣箱の蓋をそっと閉めたちょうどその時、近くの農道のスピーカーから正午を知らせるチャイムが聞こえてきた。


「あのさ、今日、もし颯くん暇してるのなら、上の俺の部屋で指スケの練習しててもいいよ。はい、鍵、渡しておく」


 今日も帰宅してが遅くなる旨を伝えた後、僕は疲労困憊の柄ちゃんを家に帰らせたのだった。

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