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贖罪

 フードを外し、達成感に浸りながら頭のアフリカ布てぬぐいをほどいた時、僕はハッとあることに気がついて青ざめた。


 今日は、三人で近所の公園に行って、颯くんの指スケのセクションづくりを手伝ってあげる約束だったのだ。


 コンテナハウスまで走って戻った僕は、机の上の携帯を手に取った。


 舌打ちを繰り返しつつロックを解除すると、案の定、通知画面に不在着信の文字が列挙されていた。


 今日を一週間以上前から楽しみに待っていた颯くんは、さぞかしがっかりしたに違いない。


 付き合い始めたばかりにもかかわらずこんなヘマをやらかす僕に、柄ちゃんはきっと愛想を尽かすだろう。


 すかさずラインを開いて詫びのメッセージを打ち込み始めると、自分でも驚くほど陳腐な言い訳やお粗末な弁解の言葉が、これでもかと溢れ出てきた。それらを無理やりつなぎ合わせ、体裁を整え、ひと思いに送信する。


 己の小狡さに嫌気が指した。と同時に、僕は左手首がやたらと痛痒いことに気がついた。レインコートの袖をまくって確認してみると、ただれ火傷のような発疹が一面に広がっている。


 これはどう見ても毛虫の仕業だ。刺々しくグロテスクな毛虫の姿を思い浮かべた途端、猛烈な痒みの波が押し寄せてきて、たまらずに爪の先でかきむしった。


 この耐え難い痒みは、どこまでも愚かな僕に与えられたおあつらえ向きの天罰に違いない。


 そう思った時、心を刺す針のような贖罪の念が、あくまでもほんの少しだけ麻痺した気がしたのだった。

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