表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/76

煩悶

 早足にコンテナハウスへ戻って、土足のままなかに上がり、作業机の上に携帯を放り投げる。


 たまらず頭を掻きむしると、余計にイライラがかき回された気がした。


 ガレージから刈払機を取り出し、肩にかついで今日もカシスの圃場へ。


 携帯はコンテナハウスのなかにそのまま放置しておくことにした。自己否定も、嘲笑も、同調圧力も、説教も、何もかも、もうたくさんだ。


 折よくそれまで降りそぼっていた雨は勢いを弱め、遠くの雲間からカーテンのような光が降り注いでいる。


 雨水をたっぷりと吸い込むことによって復活の兆しを見せ始めた草種やら、笹の残党やらを、草刈刃で力任せに薙ぎ払っていく。


 近頃はアルバイトのシフトを入れすぎていたせいで全然畑に来れていなかったから、旺盛な雑草どもは、あちこちのエリアを侵食せんばかりの生い茂りようだ。


 勢い余って、刃の切っ先を大切なカシスにぶつけてしまう。切り落とされた数本の若木を口惜しく見つめた後、僕は引き続きハンドルをぶん回しまくった。


 やっても、やっても、一向に終わりが見えてこない。だんだん蒸し暑くなってきた。レインコートの内側で体が火照り、嫌な汗が吹き出してくる。

 



 草刈り、剪定、株元の草取り。やるべき作業を猪突猛進の勢いで片付け終わえた頃、時刻は十七時を少しだけ過ぎていた。


 冬を先取りした風が肌に冷たい。


 日中、あんなにも色濃かった春の匂いは、いつの間にやらどこかへ消え失せていた。


 僕は寒風をものともせず、最後のカシスの株の前に膝をついた。


 ズボンの膝小僧に泥が染み込んで、ひたすらに不愉快だ。


 根本にはびこった名前も知らぬ雑草をあらかた引き抜き、立ち上がって首と肩を回す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ