煩悶
早足にコンテナハウスへ戻って、土足のままなかに上がり、作業机の上に携帯を放り投げる。
たまらず頭を掻きむしると、余計にイライラがかき回された気がした。
ガレージから刈払機を取り出し、肩にかついで今日もカシスの圃場へ。
携帯はコンテナハウスのなかにそのまま放置しておくことにした。自己否定も、嘲笑も、同調圧力も、説教も、何もかも、もうたくさんだ。
折よくそれまで降りそぼっていた雨は勢いを弱め、遠くの雲間からカーテンのような光が降り注いでいる。
雨水をたっぷりと吸い込むことによって復活の兆しを見せ始めた草種やら、笹の残党やらを、草刈刃で力任せに薙ぎ払っていく。
近頃はアルバイトのシフトを入れすぎていたせいで全然畑に来れていなかったから、旺盛な雑草どもは、あちこちのエリアを侵食せんばかりの生い茂りようだ。
勢い余って、刃の切っ先を大切なカシスにぶつけてしまう。切り落とされた数本の若木を口惜しく見つめた後、僕は引き続きハンドルをぶん回しまくった。
やっても、やっても、一向に終わりが見えてこない。だんだん蒸し暑くなってきた。レインコートの内側で体が火照り、嫌な汗が吹き出してくる。
草刈り、剪定、株元の草取り。やるべき作業を猪突猛進の勢いで片付け終わえた頃、時刻は十七時を少しだけ過ぎていた。
冬を先取りした風が肌に冷たい。
日中、あんなにも色濃かった春の匂いは、いつの間にやらどこかへ消え失せていた。
僕は寒風をものともせず、最後のカシスの株の前に膝をついた。
ズボンの膝小僧に泥が染み込んで、ひたすらに不愉快だ。
根本にはびこった名前も知らぬ雑草をあらかた引き抜き、立ち上がって首と肩を回す。




