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続・触れ合い

 「こっち、こっち、ここっす。今日は、大失敗したカシスの苗床づくりを一からやり直そうと思って」


 ひょろ長い枝を伸ばしたカシスの苗木たちは、桜の蕾によく似た膨らみをつけ、今日も大地に規則正しく整列していた。


 本数にして約百五十株前後の我が一個小隊だ。


 スコップを駆使して、大切な根を傷つけてしまわぬよう丁寧に掘り起こし、ぽっかりとした植え穴を三倍くらいのサイズまで拡張する。


 そこへ牛糞堆肥とおが屑をふんだんに投入してよく混ぜ合わせ、苗木を植え直す。


 一連の作業を三人で行っている間、僕はほとんど無意識的に、またもや果樹に対する長ったらしいこだわりを、ふたりに対して延々とぶちあげてしまっていた。


 だけどまあ、こればかりは致し方ない。まだまだ形はなっていないし、始めて一年あまりしか経っていないけれど、カシス栽培は、僕にとって紛れもないライフワークなのだから。


「あのっすね、さっきカシスを栽培し始めた理由について聞かれましたけど、カシスジャムってヨーロッパでは『ジャムの王様』って呼ばれてるんすよ。それで、じいちゃんが残してくれたこの『ボールドウィン』っていう品種が俺的にはダントツで美味くて、だからこの品種とブルーベリーをブレンドさせた『最強のジャム』を創り上げたいんす。けどまあ、そんなことを言ってても、いまだにバイト生活から抜け出せてないんすけど」


「そのジャム、食べてみたいな」と柄子さん。


 どんなアルバイトをしているのか颯くんに聞かれ、僕は半年ほど前に棚卸しの会社を去り、今は個人経営の小さなレンタルビデオ店で働いていることを伝えた。

 

 実際のところ、棚卸しのアルバイトは自分の意思で辞めたのではなく、度重なる人間関係のトラブルが原因でクビにされてしまったのだが。




 

 作業開始から一時間以上が経った頃、颯くんが腹ペコでもう動けないと主張し始めた。時刻を確認すると、いつの間にか正午を過ぎていた。


「実はね、三人分のおにぎりを握ってきたんだ」


 柄子さんは本当によく気の回る人だ。そう感心しつつ、僕はふと、金井さんの畑をアポ無しで訪れた際、手土産のひとつも持参しなかった己の自己中っぷりを顧みた。


(思いやりってものは、心のなかに抱いているだけじゃなんの意味もないんだよな)


 そう独りごちして、粒だった米の旨味をありがたく味わう。


 その間僕は、ぴったりと寄り添い合っておにぎりを頬張る親子の姿を、なんとはなしに眺めていたのだった。

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