憤怒
真夏の湿っぽい空気にほだされながら、僕は空を見上げ、しばらくの沈黙を噛み締めた後、決断した。
(やっぱり、今日中に全部やっつけちまうしかねえか)
トラクターの土耕プラウで憎き笹どもを討伐する第一回遠征戦を敢行したのが三日前。
それだけで奴らを根絶することなんてできるわけがないことは、もちろんちゃんと分かっていた。だけどその支配網ときたらこちらの予想を遥かに上回る巨大さで、正直な話、僕は途方に暮れてしまっていたのだ。
草いきれの濃い匂いと、うなじを焦がす灼熱の日光。夏はまだまだ終わりそうにない。
時折、近くのヤブから飛び出てくるアブが、顔の周囲でしつこい羽音を鳴らす。
就農する前まではずるずるとそうしていたように、目の前の面倒くさいタスクやらキツイ仕事やらからことごとくバックレて、家で本やゲームの世界に逃げ込んでいれば、そりゃあ楽には違いない。
だけど、やっぱりそれじゃダメなんだ。僕は変わらなければいけない。生まれ変わるんだ。絶対に変わってやる。
軍手をはめた両手を土にめりこませ、朝鮮人参みたいに硬い笹の根を引きずり出しては、片手ノコギリで挽き切っていく。それから溜まった残骸を一輪車に積んで、圃場の隅の方へ捨てに行く。
汗で痒くなった全身を汚れた軍手のまま引っ掻くものだから、あちこちがどんどん土まみれに。
タオルを頭に巻いて、サウナみたいな残暑のなかで作業していると、視界がみるみる白昼夢の世界へと引きずり込まれていく。
必然、精神の免疫機能が弱体化し、あのテカリ男から受けた数々の心ない言葉をひたすら反芻してしまう。
胸にだんだん蓄積されていく鬱血のような怒りが、蒸し暑さと相まって呼吸を困難にさせる。
たまらなくなって、僕はイヤホンを耳に装着し、スマホをポケットから取り出した。アプリを開いて、階段に座った坊主頭の男ががっくりとうなだれている、印象的なアルバムジャケットをタップする。




