苦役
どんどん小刻みになっていく車輪の回転を太ももで感じながら、僕はリュックのチャックを開けた。
労働の汗が染み付いた糞ったれなバイト服やら、カビ臭いタオルやら、散乱した頭痛薬やら、その他諸々を掻き分けて底まで手を突っ込み、メモ帳とボールペン、さらに読みかけの薄汚れた文庫本も取り出す。
穴あきジーンズのダメージ部をなんとなく指先で弄び、シバシバする疲れ目を擦って車窓越しの街を眺める。
日が昇り始める時刻までヘトヘトになって棚卸作業をしていたドラッグストアが、視界を静かに横切っていった。
あばよ、線路沿いの小さなドラッグストア。多分もう二度と訪れることはないだろう。
今日の夜は、石川町のでかいホームセンターだったっけな。それとも、七重浜にある小さな100均ショップだったか。
思い出せないけれど、まあ、どこであろうと、もらえる雀の涙みたいなバイト代は一緒さ。
さっきよりもさらに小刻みになっていく車輪の振動が、僕のちっぽけな背骨を小さく震わせている。
人生の道筋とは、どんな最終シーンに繋がっているのか分からない、暗中の線路みたいなものなのかもしれない。なんとなくそんなことを思った。
僕の迷いを乗せて走り出した運命の車両は、一体どこへ向かっているのだろう。
迷いはもみ消すものじゃなくて、振り切るもの。旅でそのことを学んだ僕は、気を持ち直すため、メモ帳の真っ白なページと相対した。
すると、朝方にしては珍しく、スマホの通知音が鳴った。
中学時代のクラスメイトからメッセンジャーアプリにメッセージが届いている。弾みで開くと、そこには「よう」との一言が。
自らの筋肉質な体つきを誇示したマッチョなアイコン画像と、ぶっきらぼうな「よう」が、いかにもそいつらしかった。




