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急行

 疲労感と共に目覚めると、眩しい太陽が空のてっぺんまで登っていた。


 寝返りを打てなかったからか、シートに埋めっぱなしだった尻が悲鳴を上げている。


 僕は背骨を浮かせて大きな伸びをすると、夢現のまま、しばらくの間まどろみのなかを泳いだ。


 ふと時刻を確認すると、なんてことだ、もうすぐ正午を回ろうとしているじゃないか。


 早朝の静けさから一転、道の駅構内と駐車場は人の活気に満ち溢れていた。


 全ての窓を全開まで開け、むせ返るような熱気を抱えた車内に新鮮なそよ風を取り入れようと試みる。


 人目も憚らず、ティーシャツの裾を胸元までたくし上げ、汗だくになった胴体を涼ませようとしたが、これといった効果はなかった。


 目をこすりながらスマホを起動し、近隣農家の情報を検索する。


 明日の夕方までには函館に帰らなければならないから、自由に動けるのはせいぜい今日の日没までくらいのものだろう。


 何かないか、何かないか。素早く検索結果画面をスクロールしていくと、めぼしい農園が一箇所だけ見つかった。ここから車で三、四十分程度の小さな町に、ベリー類を無農薬で栽培している生産者がいるらしい。


 早速ホームページに記載されている番号へ電話をかけてみる。しかし、応答はない。


 不発に終わる可能性もなくはないが、他に選択肢もなさそうだ。


 僕はシートを起こしてハンドルを握ると、地平線まで続いているかのような一本道を猛スピードで辿り始めたのだった。

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