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薄明の魔法使い #0 竜骸迷宮と黒燿の剣士  作者: 式見 汀花
Ⅲ 手を取り合って

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第92話 再出発 #3

 だが、一番ショックを受けているのは、ラークのようだった。


 彼は、嘆息をすると言った。


「……信じられないな、本当に……きみってやつは……。ぼくと同質の存在なのかと思ったら、ほとんど正反対でもあったのか」


「うん。ある意味、反対なのかもね」


 ラークとは似ていると、エルスウェンも思っていた。が、寿命という点では、決定的に異なっている。


「それで、あんな無茶なことに挑んでいるのか。初めて、きみのことが分からなくなったな。……いや、最初からなにも分かっちゃいなかったのか――くそ」


 ラークは瞑目した。そのままで、言葉を紡いでいく。


「……失って初めて――でないことに感謝しないといけないな」


 呟いて、彼は目を開いた。真っ赤な色の瞳が、こちらを見ている。


「改めて誓おう。ぼくは、きみの力になる。きみの命が、普通の人族よりも短いというなら……その最期までを、ぼくに見届けさせてくれ。エルス、きみが笑顔で、安らかに逝けるように、ぼくはぼくにできること、全てをやろう」


「うん。……ありがとう、ラーク」


「本当は、もっと言ってやりたいことが山ほどあるんだけどな……。言葉ってのは不自由だ。どれほど正確に言いたいことを表現できたとしても……この感情をそのまま伝えるなんて、絶対にできないんだから」


 そうかもしれない。エルスウェンは内心で頷いた。


 だがラークやみんなが、自分をこれ以上ないほど慮ってくれていることは分かる。


 それだけで、十分だった。最高の仲間に囲まれて、自分は十分すぎるほどに報われている。


 だから、戦える。この仲間を誰も失いたくない。そのために、自分の持てるすべての力を捧げたい。


「さあ、のんびりはしてられないんじゃないのか? まだ昼だ。できることはまだまだあるはずだよな。エルスの家へ行こう」


 言うが早いか、ラークはすでに立ち上がっている。


 それに笑って続いたのは、ジェイだった。


「ああ、賛成だ。時は待ってはくれんぞ」


「……ええ。湿っぽいのはやめにして、私たちにできることをね。いつ死ぬのか分かんないのなんて、全員同じでもあるんだから。せいぜい、悔いのないように……戦っていくしかないわ。私たちは、探索者なんだから」


「カレンの言う通りです。……行きましょう」


 カレンとアガサも立ち上がる。フラウムも席を立つ。


「今回は脱線禁止だな! やるぜー! ババア、足引っ張るなよ!」


「いちいちお前はカレンに噛みつくな」


「あてっ」


 ラティアに頭から手刀を落とされたフラウム。それに、みんなで笑う。


 これだけの仲間がいれば、きっとどうにかできる。黒燿の剣士の討伐だけでなく、第九階層への到達――いや、迷宮の踏破だって、夢ではないはずだ。


 そんな楽観的な気持ちになりつつあったエルスウェンだった。


 が――


「あっ……」


「どうした?」


 大事なことに気づいて声を上げたエルスウェンに、ジェイが怪訝な顔をする。


 一瞬、場に緊張が走った。


 エルスウェンは、みんなに言った。


「……フラウムがお店のパンを台無しにしたでしょ? 弁償しておかないと」


「なんだ……そんなことか」


 ラティアが、大きく息をつく。


 全員の反応も、似たようなものだった。


「あと、食料とか。今までよりも人数が多いし、買っていかないとね」


「よーし、じゃあ、今度こそ私の得意料理を――」


「やめなさいっての」


 懲りていないフラウムの口を塞ぐカレン。


 その後、全員でガルドの店を訪ね、質のいいパンを買った。それをお詫びと共にジョージへ届けてから買い出しを済ませて、やっと生家に向けて出発したのだった。



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