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薄明の魔法使い #0 竜骸迷宮と黒燿の剣士  作者: 式見 汀花
Ⅲ 手を取り合って

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第116話 団結と協調 #5

 と、フラウムが火柱のあった場所を指さす。


「よーし、じゃあ次は実験だ! ラーク、あそこに立て!」


「断る」


 きっぱりとラークは首を振った。


「絶対に無理だ。結果なんて見るまでもないだろう? あんな魔法を浴びたら、どんな生き物でも消し炭じゃないか!」


「まー、それもそうか。思ったよりハイパワーだったもんなー」


 あっさりとフラウムは引き下がった。両手を頭の後ろで組んで、続ける。


「じゃあ、どーすんの? 結局分かんなくない? 魔法消去を貫通できるかって」


「さっき、母さんが言っていた方法で試せばいいかな、それは。この実験は、確かに双調魔法っていう技術が成立するってことが分かっただけで、儲けものだよ」


「それもそっか」


 と、頷きかけてフラウムはなにかを思い出したようだった。


「あ! そうだ! 成功したら、エルス! なんでも言うこと聞いてくれるんでしょ!」


「あ……あー、うん……。そうだったね」


 しらばっくれる、ラークが勝手に決めたことだからと言い逃れる、転移魔法――などの逃走手段はいくらでも頭を過ぎったが、結局諦めて認める。


 頷くと、フラウムはもじもじしながら言ってきた。


「ええと……あのさ。色々と『なんでも』について考えたんだけどさ」


「うん。なに?」


「うん、あの……いよいよ、黒燿の剣士との決戦が近づいているわけじゃん?」


「うん、そうだね」


「だから、これしかないと思って。……あのさ、ちゃんと生きて戻ろうぜ、エルス」


 その言葉に、ぽかんとする。


 なにも言えないでいると、フラウムが言葉を続けた。


「もちろん、エルスだけじゃなくて、みんなに言いたいことなんだけど。どうなるか分かんないけどさ、ちゃんと……また、こうして生きて戻ってこようって。な?」


 そして、フラウムは笑った。


「『甘味スペシャル』、なんだかんだでまだ奢ってもらってないじゃん! 終わった後のことは、それで十分だからさ、だから……約束しろよな。みんなで、死なないで戻るって」


 エルスウェンは、瞑目した。


 どんなひどいことを要求されるのかと思っていた自分を恥じた。


 反省して、フラウムを見返す。


「分かった。約束だ。みんなで生きて帰って……で、『甘味スペシャル』奢るよ」


「うん! じゃあ、オッケー!」


 フラウムははち切れんばかりの笑顔で頷き返してくれる。


 母も、深く頷いて言った。


「フラウムちゃん、今の……本当に、お嫁さんポイント一万点あげてもいいわ」


「えっ! ホントですかー! でも、私、なんかそんなすごい良いこと言った!?」


 喜びつつ困惑するフラウム。良いことを言った自覚はないらしい。


 カレンがやれやれとかぶりを振る。


「たまーに、ごく稀に本気でいいこと言ったりするのに。まったく分かってないのよね、こいつ」


「な、なんだよー。普通のこと言っただけだろー? みんなで生きて帰ろうって」


 まるで分かっていないフラウムに、全員で笑う。


 シャルロッテも、微笑みながら口を開く。


「だからみなさん、フラウムちゃんのことが大好きなんですね」


「ああ。魔法の腕もそうだが、こういうところがあるから、みんな好いているんだ」


 ラティアも頷いている。フラウムは自分の身体を抱くようにして叫んだ。


「うわー! なんかよく分かんないのに褒められるって気持ち悪いー!」


 その叫びに、また笑う。


 ひとしきり笑った後、日が傾きそうになってきたので、家に戻ることにした。


 帰り道もフラウムは釈然としていなかったが、なんだかんだで、全員の絆が深まり、ラークも死なずに済んだという、とても有意義な時間だった。



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