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薄明の魔法使い #0 竜骸迷宮と黒燿の剣士  作者: 式見 汀花
Ⅲ 手を取り合って

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第113話 団結と協調 #2

「そうなのですね……。勉強になります」


「そして、フラウムとカレンは、共に若くして攻撃魔法の達人ですから。どうしても競り合ってしまうんです。実力も伯仲はくちゅうしているしで。だから、あんな感じの付き合いなんです」


「よく分かりました。フラウムちゃんもカレンさんも、優秀で、同じ系統の魔法使いだからこそ、競い合って、それが関係に表れているんですね」


 感心した顔で頷くシャルロッテに、エルスウェンは笑った。


 彼女は、こちらが笑ったことを不思議に思ったのか、訊いてくる。


「どうしたのですか?」


「いいえ。シャルロッテには、探索者は向いていなさそうだなと思って」


「まあ。どうしてですか?」


「だって。優しすぎると思います。シャルロッテの笑顔を見ていると、なんだかこっちまで笑顔になってしまうような……そういう人だから」


 答えると、シャルロッテの頬にさっと赤みが差した。


「そ、そんなことは……」


 口ごもって、彼女は目を伏せてしまう。


 やっぱり、この人には探索者は無理だろう。身体の問題もあるが、それが治ったとしても、身分の問題を解決したとしても。この人にあの真っ暗な迷宮は似合わない。


 この澄んだ秋空の下の、柔らかな午後の日差し。そういうものが、この王女には似合っている――


 ふと、背筋に寒いものを覚えて、顔を上げた。


 遠くから、フラウムが血涙でも流しそうな顔でこちらを睨んでいる。


 その視線に戦慄していると、後ろで立っているラークが言った。


「フラウム。君が無事にカレンと双調魔法を成功させられたら、エルスが一日なんでも言うことを聞いてあげるってさ」


「なっ、なにー!?」


「お嫁さんポイントも一万点加点だそうだよ」


「おっしゃあ! カレン! 協力しろ!」


「……ホント、あんたくらい行動原理がシンプルってのは、ある意味羨ましいわ」


 明らかに背筋の伸びたフラウムは、真剣な打ち合わせを始めた。


 が、それは置いておいて、エルスウェンはラークを見上げた。


「ラーク、今のは?」


「勘弁しろよ。ああでも言わないと、彼女、こっちに攻撃魔法でも撃ちそうな雰囲気だったじゃないか」


「まあ、別に構わないけど……。いいの? ラークも」


「え? なにがだい?」


「だって。フラウムがやる気を出した上で双調魔法を完成させたら、その的になるのはラークなんだけど、大丈夫なのかって」


「あっ……! くそ、しまったな」


 ラークは金の髪をかき上げて、己の失態を悟ったようだった。


「どうせならこのまま完成しなければいいのにと思わないでもなかったのに、余計なアシストをしてしまったのか、ぼくは」


「遅かれ早かれ、という気がするがな。フラウムたちは優秀な魔法使いなんだろう」


 と、ジェイが呟く。それから、彼もこちらを見てきた。


「エルスは双調魔法とやらの練習はしないのか? 攻撃魔法が使えなくとも、お前とアガサ、キャリスで未識別の呪いとやらを外さねばならないのだろう?」


「ああ、うん」


 頷いて、エルスウェンはフラウムたちをちらりと見た。ふたりは真剣に発声練習を始めたところだ。綺麗にハーモニーを奏でている。


「僕とアガサは、多分やろうと思えばすぐにできる気がするから。シャーロットも、カレン、フラウムのどちらともすぐに合わせられるだろうし」


 そう答えて、言い直す。


「もちろん、すぐ、っていうのは、あのふたりと比べて、って意味ね」


「ああ……そうだな。確かに、あのふたりが成功できれば……後は上手く行きそうな気がしてくるな」


 ジェイは頷いてから、シャルロッテ、シャーロットを見た。


「双子として育てられた王女殿下ふたりなら、簡単にできそうな気がするが」


「それは……」


 シャルロッテが、シャーロットを見る。シャーロットも、シャルロッテを見る。


 シャーロットは微笑んで頷いた。


「そうですね。きっと、すぐにできると思います。ずっと一緒にいて、魔法の授業も一緒に受けていたんですから」


 シャルロッテも頷いて、ふたりは微笑み合っている。この美しく素直な信頼の、ほんの数グラム分でいいからフラウムたちに分けてあげられないか、と思ったが、無理な相談だと諦めた。


 それから、ふと気づいたように、シャルロッテが言った。


「エルスさんと、お母さまも簡単にできるのではないですか?」


「ああ……なるほど」


 そもそも母は、双調魔法など必要としない魔法使いだから、考えもしなかった。


 エルスウェンが、立ったままフラウムたちを観察している母を見やると、母もこちらを見て微笑んできた。


「私が育てたんですもの。できるわよね?」


「ええ、はい。……たぶん」


 一度で成功できなければ、不眠不休の訓練を課されそうだと思った。



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