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薄明の魔法使い #0 竜骸迷宮と黒燿の剣士  作者: 式見 汀花
Ⅲ 手を取り合って

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第105話 新たな仲間(あるいは好敵手) #2

「今は、とても体調がいいでしょう?」


 訊かれて、シャルロッテは頷いた。


「はい。こんなこと、生まれて初めて、というくらいです」


「でしょうね。それは……シャルロッテちゃんの心が、とても強くなったからね」


「……心が?」


「ええ。シャーロットちゃんとの話し合いを経て、あなたはひとつの決断をした。これが大きかったのよ。あなたの身体は、強く心を持っていれば――前へ向かう意思を持っていれば、今みたいに、健康でいられるの」


「……そうだったんですか……」


 シャルロッテは呆然と、母の言葉を呑み込んでいた。


 母は次に、シャーロットへ言った。


「あなたの決断が、こうしてシャルロッテちゃんを一時的にでも治すことに繋がったのよ。立派だったわ」


「……ありがとうございます。でも、あの……一時的に、なんですか?」


 シャーロットは、当然そこを質問する。


 母は笑みから柔らかいものを少しだけ隠して、答えた。


「ええ。ずっとは続かないわ」


「そんな……」


「ただ、ずっと悪いまま、ということもないでしょう。それはあなたたちが黒燿の剣士を倒した、その後に求めるべきものだから、今お話をするつもりはないけれどね」


 母はこうなると、なにも言おうとはしない。


 それは仄めかしだとかそういうことではなく、本当に話す意味がないから黙っている、ということだ。おそらくは、先のことを考えすぎて黒燿の剣士に対する集中を保てなくなることを、防ごうというのだろう。


 ただ、シャーロットは黙っていられず、聞き返した。


「シャルロッテは、治せるんですか? シャルロッテの身体には、やっぱり異常があって……それは、治せるんですか?」


「そうねぇ……」


 母は曖昧に答えると、じっとシャーロットの瞳を見つめた。


 深緑色の視線に射貫かれ、しかしシャーロットは、少しも引かずにそれを見返している。


 すごい胆力だと思った。母の無言の圧力は、ものすごいものなのに。


 やがて母は、いつの間にか消していた笑顔を元に戻して、頷いた。


「治せるわ。その時が来れば、説明をしてあげましょう」


「その時、っていうのは……」


「黒燿の剣士を倒した後よ。今は、それに集中なさい。ね? それができなければ、どんな説明も無意味ですから」


「……分かりました」


 シャーロットは、ようやく引き下がった。前のめりになっていて姿勢も直して、椅子に座り直す。


 ラークが明るく、話をまとめた。


「ともかく、黒燿の剣士を倒さないと話が進まないのは確かだろう。自由に探索ができないんだからね。そしてぼくらは、そのためにここに集まっている。古書を読めるシャルロッテ王女に、魔法の得意なシャーロットが加わってくれた。ここから勢いに乗って、反撃開始といこうじゃないか。まずは、魔法消去の加護をどうやって破るのか、それを見つけないといけないんだったな」


 おかげで、全員そちらに意識が向いたようだ。シャルロッテもラークの話につられてか、こちらへ質問をしてきた。


「あの、エルスウェンさんが、ここでの作業のリーダーなんですよね?」


「えっ? ええと……そうですね。そうなってます。いつの間にか」


 腑に落ちないものを感じつつ頷くと、シャルロッテは笑顔で言った。


「あの。私はどのようなことを手伝えばいいでしょうか? なんでもおっしゃってください。古語の読解も、読む速度も、結構自信があるんです」


 眩しい笑顔だった。胸がどきりとした。


 なにしろ、一幅の絵画から飛び出してきたような、絶世の美少女なのだ、シャルロッテ王女は。フラウムやラティア、カレン、アガサだって綺麗だ。シャーロットは双子だと信じられるほどそっくりだ。だが、彼女の綺麗さは、誰とも違う。人を疑うことを知らなそうな笑顔、所作、眼差し、そのすべてが、輝いて見える。


 容姿そのものだけでなく、シャルロッテの身に纏う気品というか、オーラというか、そういうものまでが心をそわそわさせてくるような感じだった。


「え、ええと……。どうしようかな……」


 困って考えていると、カレンがフラウムを肘で突いているのが見えた。


「あーら。大ライバルの登場じゃない? エルスくんが女の子に微笑みかけられただけでしどろもどろになるところなんて、見たことある? あんた。場末の魔法使いの小娘と、王女さまとじゃ、戦う前から勝負ありよねぇ」


「ぐぬぬぬ……! 私は、く、訓練所から一緒だし! 全然平気だし!」


「汗かいてなに言ってんのよ。なんか、あんたみたいなのを的確に表現した言葉があったわよねぇ……。なんだったっけ」


 と、カレンはぽんと手を打った。


「思い出したわ。『負けヒロイン』よ」


「ババアァァー! 本日二度目のライン越えだぜぇー! 誰が負けヒロインじゃコラァ!」


 キレたフラウムは、カレンと取っ組み合いを始める。その隣に座っているラティアは、王女たちの視界に入らないよう、ふたりを背中で隠していた。


「すぐに収まるので、無視していてください」


「は、はぁ……」


 困惑しながら、シャルロッテもシャーロットも頷いている。


 が、すぐにシャルロッテは笑顔で言った。


「でも……その、探索者さんって、もっとこう……荒々しくて、恐い方ばかりだと思っていました。フラウムちゃんやカレンさんのように、なんというか……面白い方も多いんですね」


 それはそれで、なにか誤解のような気がしたが。


 大体合ってはいるため、エルスウェンは突っ込まないことにした。



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