第103話 想定外の出会い #4
「やあ。なんだか、とんでもないことになっているね」
と、彼女らの後ろから、ジェイとラークが現れる。こんな状況下でもラークは飄々とした姿勢を崩しておらず、今回ばかりはそれを羨ましく思った。
「こんなところで固まっていてもしょうがないだろう? お姫さまたちとテーブルを囲んで、事情を聞こうじゃないか。面白そうだし」
「あ、ああ。そうだね」
ラークに言われて、エルスウェンは慌てて立ち上がった。椅子を並べつつ考える。
――翻訳に使っている大テーブルは、詰めればなんとか全員が席に着けるだろうか? 最悪、ジェイに立っていてもらえばいいだろうか……。
混乱しつつ椅子を並べ終えると、シャルロッテのことを観察していたフラウムがあっ、と声を出した。
「ねえねえ、殿下。シャルロッテ王女殿下」
「はい、なんでしょうか?」
「あのさぁ、こんなことを王族の人に言っていいことなのか、ちょっと分かんないんですけども」
「なんでしょう? なんでも、遠慮なくおっしゃってください」
「大丈夫? いきなり打ち首にしたりしない?」
「しっ、しませんよ。大丈夫ですから。どうかお気など遣わず、フランクに接してください、フラウムさん」
「おっ、そーお?」
「はい。ここは王宮の外ですし、いえ、中でも、私は構わないんですが。誰の目もありませんから、気さくに接していただけたら、嬉しいです」
「話せるじゃーん! 私と同じくらいフトコロ深いね、シャルロッテは!」
「は、はい。ありがとうございます」
なにか、すごい速度で打ち解けていくフラウムだった。相手は王女なのに。
シャルロッテ王女も、フラウムの声かけに不安そうな目をしつつも、丁寧かつ真摯に応対している。すごい人柄だ。
その姿勢にフラウムは満足のようだった。頷くと、次に王女の足元を指さした。
「じゃあさ、言うんだけど。シャルロッテ、鹿のウンコ踏んでるよ」
「えっ!? きゃあ! きゃあ!」
指摘されたシャルロッテ王女は、悲鳴を上げて、片足を上げた。
真っ白な靴が、確かに鹿のウンコに塗れている。
王女殿下は顔を真っ赤にして、必死に謝罪を始めた。
「ご、ごめんなさい! お家の中を汚してしまいました! ど、どうしましょう……!」
泣きそうになっているシャルロッテ王女に、そっとフラウムが肩を貸す。
「大丈夫大丈夫。ここに来るとよくあるんだからさ。ほら、私なんてウンコ取り用のヘラとクシ常備してるし。取り方教えたげるよ」
「す、すみません……。どうか、よろしくお願い致します。あの、床の汚れは……」
「そんなのはエルスが魔法でどうにかするから気にしないでオッケー。あとさぁ、他人行儀なのはやめようぜー。さっきシャルロッテは気さくにって言ってただろー? 私のこともフラウムちゃんでいいんだぜー」
「はっ、はい。フラウムちゃん」
「そーそー。よし、じゃ、レッツゴー!」
言いながら、シャルロッテ王女はフラウムの肩を借りて、けんけんをしながら玄関から外へ消えていく。
それを見送って、カレンが呟いた。
「……あいつの異常なまでのコミュ能力、たまに羨ましくなるわね……」
それには、エルスウェンも頷いた。どんな相手でもすぐに打ち解けて仲良くなってしまうというのは、まさにフラウムの特技だ。人を惹きつけるというのは、彼女のための言葉のような気がする。
ただ、それについていっているシャルロッテ王女も、なかなかのものだと思う。深窓の王女だと思っていたが、とても表情豊かで、少なくともここまでは年相応の女の子なんだなという気もしている。
エルスウェンは、王女にそっくりな、シャーロットと名乗った女性のほうへと目を向けた。彼女は、不安そうに胸元で手を合わせて玄関のほうを見ている。
横顔を見ても、双子にしか見えないほどそっくりだった。外見上の違いを無理にでも探すなら、シャルロッテのほうが、やや線が細いだろうか。
エルスウェンは、その横顔に声をかけた。
「とりあえず、座って待ちましょうか」
シャーロットは頷いた。
「はい。あの、併せて事情も説明させていただきたいのですが。まずは、私とシャルロッテの関係について……」
それには全員が同意して、テーブルについた。




