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薄明の魔法使い #0 竜骸迷宮と黒燿の剣士  作者: 式見 汀花
Ⅲ 手を取り合って

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第101話 想定外の出会い #2

「転換点?」


「ああ。私はそもそも、疑問に感じていたのだ。今のままで上を目指せるのかとな」


 事情は分からないが、ラティアが迷宮の踏破に並々ならぬ執念を持っている、というのは、それこそ昨日分かったことだ。


 そういった執念に併せて、リーダーという立場上、常になにが正しいのかを考え続けているのだろう。


 彼女は続けた。


「おそらく、四人というパーティでは少ないんだ。人数が。もっと大きな単位で、できることに幅を持たせないと……この先を戦っていくことは厳しいのではないかと思うんだ」


「それは、そうかもしれないけど……」


 エルスウェンは懐疑的だった。結局のところ、魔法の定員数がネックとなる。


 が、それは見透かして、ラティアは言ってきた。


「たとえば、ふたつのパーティが協力して同時に潜る、という方法だ。それか、ベルハルトのパーティにラークがついていったようにすれば、擬似的に四人以上のパーティを構成することができるだろう?」


「それは……そうかもしれないね」


 頷きながら、ラティアの言ったことを頭で検討してみる。


 できるのかもしれない、と思ったが、やはり見過ごせない問題点も多かった。


「でも……ふたつのパーティが同時に行動すると、八人になるでしょ? それはさすがに、迷宮を進むのには多すぎると思う。八人が集まった通路内で魔物と接敵したら、混乱のほうが大きいよ。魔法の狙いも難しくなるし」


「うむ……。では、別働隊、というふうに、完全に分けて行動するのはどうだ? 要所で合流しつつ進むという感じだが」


「それもどうだろう。他のパーティを助けるのをマイルズがよく思わなかったみたいに、探索の速度自体が落ちてしまうんじゃないかな」


「別々に行動をして、たまに合流をするとしても……パーティ同士の連絡手段もありませんし、エルス君の言う通りではないかと……」


「うむ……。そうだな。言う通りだ」


 それはラティアもすでに考えたことなのだろう。残念そうに頷いている。


 エルスウェンは、ちらりと窓の外を見た。


「でも、ラティアの言うことも分かるよ。ジェイに、ラークっていうふたりが仲間になってくれた。ふたりを留守番にするんじゃなくて、そのまま前衛、後衛に入ってくれたら……ものすごく心強いからね。六人パーティか。できればいいんだけど」


「……私たちのパーティは、バドルさんが亡くなって……。ロイドさんたちのパーティも、ザングさんが亡くなって……。ふたつのパーティを合わせれば、六人のパーティを作れる……ということになりますしね」


 アガサの言葉に、エルスウェンはラティアと一緒に頷いた。


 前衛にファルク、ベルハルト、ロイド。


 後衛にキャリス、カレン、アガサ。


 この配置はなかなかバランスが良いように思えた。迷宮踏破と財宝の収集の、どちらにも睨みを利かせたパーティになっている。


「六人での転移に挑戦してみればいいでしょう?」


 と、声が飛んできた。母だ。


 笑顔の彼女に、エルスウェンは訊いた。


「可能なんですか? 六人での転移や帰還が」


「不可能なわけがないでしょう? 人数を増やすだけなんですからね」


 それはあなたにとってでしょう、と言いかけて、飲み込んだ。


 母はぐるりと家を見回して言った。


「この家だって、私が故郷からそのまま魔法で持ちだしたものなんだから。たった六人での転移くらい、できるようにならなければね、エルス」


「こ、この家を? 転移?」


 母の言ったことがにわかに信じられず、同じように家を見回す。この屋敷を、故郷から丸ごと転移させてきた……?


 まさか、そんなことができるとは信じられなかったが。この母に魔法でできないことがあるとも思えない。


 困惑しているこちらに、変わらない調子で母は言ってくる。


「必要は発明の母だと言うでしょう。魔法とは、イメージに沿って、自分の意のままの奇跡を起こすもの。魔法とは、世界というキャンバスに、魔力という顔料を用いて、思念という筆で思うままの絵を描くことよ。可能性というものを自分でゼロにしてしまった瞬間、その魔法はもう、絶対に成功しない」


 言ってから、母は虚空に手を捧げた。それから、森人語でなにごとかを囁いた。


 すると、手の先の空間に、どこからともなく色とりどりの光の粒が集まってくる。それは不規則に並んだかと思うと、エルスウェンの似顔絵になっていた。


 それを手を振って消すと、母は微笑んだ。


「技を磨き続けなさい、エルス。あなたには、こうしてとても良い仲間が集まってくれているでしょう。人を惹きつけることは、魔法であろうと不可能なあなたの唯一無二の才能なのよ。そのみんなの期待を裏切らないように、頑張りなさいな」


「……はい」


 人を惹きつけると言われても、なんの自覚もなかったが。頷いておく。


 それから母は、ラティアに目を向ける。


「ラティアちゃんの言う通り、黒燿の剣士の一件は、あなたたち……だけでなく、迷宮探索を大きく変えていくでしょう。それだけでなく、この王国、この世界に、これから大きな動きがやってくる」


 そこまで言ってから、母は目を見開いた。


「新しいお客さんね。これも、そのひとつかしら?」


「え? お客さん?」


 エルスウェンが聞き返すと、母はそっと髪をかき上げて椅子に座り直した。


「ええ。ラティアちゃん。お出迎えに行ってくれるかしら。きっと、すぐそこまで来ているでしょうから。南の方ね。ここへお連れしてくださる?」


「はい、かしこまりました」


 ラティアは一礼すると、広間を一直線に突っ切り、家を出て行った。


 それを見送ると、フラウムたちが訊いてきた。


「来客って誰です? お母さま」



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