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第89話 『名探偵舞翔? ベルガと士騎の因縁』






 舞翔と別れた後、控室へと戻ったソゾンはポケットの中にあるUSBメモリを取り出した。

 

「ベルガめ」


 呟きと共に寄せられた眉間。USBメモリを握り締める手に力がこもる。

 ソゾンは思い出していた、盗み聞いたベルガとベンの会話を。


『あれはまだ試作段階だからね。余り多用すると決勝まで身が持たないが、まぁ気を付ける事だ』


『サイモンはこの大会に文字通り命を懸けてるんでねぇ、勝てるなら死ぬまで使うだろうさ』


『ふ、君も良い性格をしているね』


『だからこそあんたの提案に乗った、違うかい?』


『ふふ、君ほど優秀な選手は中々いないだろうね』


 ベルガの目を盗み、資料とUSBに入っていたデータにはざっと目を通した。

 膨大ぼうだいなデータ量に専門知識も無いソゾンがそこから読み取れた情報は少ない。


 それでも肉体への負荷、出力の調整、そして“適用者”について書かれていることは読み取れた。


 これは“とあるパーツ”についてのデータだ。


 バトルドローンとの共感覚技術きょうかんかくぎじゅつによる爆発的な操作性の向上、機動力、攻撃力の向上。

 しかし向上すればするほど出力は上がり、体への負荷が増大する、諸刃もろはつるぎ


(アフリカチームの躍進やくしんは、これが要因で間違いないだろうな)


 思い起こせば、ロシアでソゾンが舞翔と対戦した後、命令に背いた罰として受けさせられた特別訓練。


 あれもこの“パーツ”を用いたものだったのだろう。


 今までに感じたことの無い感覚と、想像を絶する肉体への反動を思い出し、ソゾンの表情は自然と険しくなる。

 残念ながらソゾンは“適用者”にはなれなかったらしい。


 それどころか、特訓後数日とっくんごすうじつは体が思うように動かなくなるほど、“それ”の影響は甚大じんだいだった。


 だからだろう、ベルガは体に負荷をかけるリスクより現状維持を選んだらしい。その後ソゾンがこの“パーツ”を使わされることは無かった。


「適用者、か」


 ソゾンの表情に影が差す。

 オリジナルのデータが入ったUSBは既にベルガに渡してある。

 今ソゾンが持っているのは咄嗟にコピーをした一部の情報のみが入ったUSBだ。


 それでも、ベルガの計画の証拠くらいにはなる。


 そのUSBを、ソゾンは再びポケットにしまった。


(関係ない、俺は俺の成すべきことを成す。相手がアフリカだろうと……BDFだろうと)




※・※・※・※




 控室へ戻る前に、舞翔は自販機コーナーでブラックコーヒーを購入しベンチに座って熟考じゅっこうしていた。


 思い出していたのは前世で隅々まで何度も何度も読み尽くした『烈風飛電れっぷうひでんバトルドローン』のファンブック。


 その中の監督インタビューにあった“出し切れなかった設定がある”という一文。


「出せなかった設定は主に士騎監督とベルガについてだったよね。二人の因縁、仲違いからBDFを離反したベルガの過去。もしかして、これもそれに関係するんじゃ?」


 舞翔はその時、まるで天命を受けたように気が付いた。


 “バトルドローンの開発で功績こうせきを残した若き天才”のことを。


 そして録画したアフリカチームの試合を見ていた士騎は、本人は誤魔化したつもりだろうが、明らかに何かに気付き動揺していた。


(怪しい、怪しすぎる! ベルガの今までの言動も、士騎監督の言動も、何もかもが怪しい!)


 舞翔は立ちあがり缶の中のコーヒーをいっきに飲み干すと、控室へ向かって駆け出した。


「おや? 舞翔くん、おかえり」


 控室には丁度良く士騎ひとりだった。

 カランと武士の姿は見当たらない。

 ならば丁度良いと、舞翔は大股おおまたで士騎へと詰め寄った。


「監督は何か知っているんですよね!? サイモン、明らかにおかしいです。それにベルガも本当に関わってるみたいで、私見たんです!!」


 すごい剣幕けんまくまくし立てる舞翔に、士騎は明らかに顔面蒼白がんめんそうはくして立ち上がった。

 

「ちょちょちょちょちょっと待って舞翔くん! こっちに来て!」


 士騎は慌てた様子で舞翔の腕を掴むと、少しだけ強引に控室から出て人気の無い場所へと連れて行く。


「で、急にどうしたんだい?」


 周囲に人気が無い事を用心深く確認してから、士騎は目の前で自分を睨んでいる舞翔に、少しだけ溜息を吐きながら問いかけた。


「ベルガは昔BD社に居たんですよね? 過去に監督と何かあったんですか? 監督も何か知っているんですよね!? もしベルガがキリルの時のように何か企んでいるなら私は、サイモンを助けたいです!!」


 耳が思わずキーンと痛くなるほどのマシンガンだった。


 しかし士騎の表情は舞翔が告げた内容を聞くや否や、たちまちに先程までとは違う真剣な表情へと変わる。


 見開かれた目力に、今度は舞翔の方がドキリと緊張してしまうくらいに。


「……何故君がそれを知っているのかは今は置いておこうか」


 直後、いつもよりも低い声で発せられた言葉に、舞翔の肩はびくりと跳ねた。


 士騎の瞳はどこか責めるように舞翔を見つめている。

 恐らく舞翔が単独で危険なことをしようとしたことを見透かされたのだろう。


 だとしても、ここで引くわけにはいかない。


 舞翔は確固たる意志を持って強く士騎を見つめ返した。


「知っていることを教えてください、監督!」

「……きっとこれ以上詮索(せんさく)しては駄目、と言っても君は止まらないんだろうな」


 舞翔の強い眼差しを受け、観念したように士騎は大きな溜息を吐いた。

 それから少しだけ肩を下げ、苦しげな表情で目を逸らす。


「話すよ、でもこれはあくまで僕の憶測だ」





お読みいただきありがとうございます!

新問題発生!?なVSアフリカチーム戦。


舞翔の因縁も絡みます。

彼女の成長をぜひ見届けてあげてください!

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