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第65話 『ロシア対BDF! 雪の中のバトル』




 バトルは熾烈しれつを極めていた。


 キリルのアイフェリーは、まるで雪を味方にするように真っ白い世界に紛れ、アレクセイのスノーブルマンがそれを助けるように、積雪を巻き上げ吹雪を起こす。


 雪深い針葉樹林でのバトルは圧倒的にロシアチームが有利だ。


 エレキストもスプリングスも吹雪で視界を奪われ、吹き付ける雪に翻弄され、針葉樹林の中を思うように飛べない。


「やっぱりっ、強い」


 舞翔は呟き、チラリと横に立つカランを伺った。


 今回のバトルが思ったよりも苦戦している理由がもうひとつ。


 カランが本調子では無い。


 バトル前は特に変わった様子は見られなかったのに、始まってみたらどうだろう。


 その表情はどこか苦し気に眉が寄せられており、やたらと舞翔のエレキストを守ることに終始しているように見えるのだ。


「カラン! 二手に分かれよう!」

「駄目だ! それでは確実に討たれる」


 カランは舞翔をちらりとも見ず、そう言い切った。


 その間もアイフェリーの舞うような攻撃がエレキストを襲い、ギリギリの所で避ける。

 そこにスノーブルマンが吹雪を起こし、スプリングスが守る様に盾となる。


(違うっ、私だけでも避けられた! カランには、私が囮になっている内にスノーブルマンを墜として欲しいのに!)


 舞翔は思うようにいかない苛立ちを抑えるように拳を握った。


 普段から南アメリカチームのように阿吽の呼吸で連携が取れている訳ではない。


 けれども不思議と、舞翔はいつも自由に飛べていた。


 自分の思い通りに飛んで、気付けばカランがそれに合わせるように動いてくれていた。


(あぁ、そうか)


 そこでハっと舞翔は気付く。


(いつもカランが私が楽しく飛べるように、支えてくれていたんだ)


 そのカランが、どういう訳か今は苦しんでいる。


 過剰に舞翔のエレキストを守ろうとするあまり、思うように飛べていない。

 何故そんなことになってしまっているか舞翔には分からない。


 けれどもいつも自分を気に掛け、支えてくれたカランのその異変に、全く気付いてあげられなかった自分が急に情けなくなった。


「君達の実力はこんなものなの!? 舞翔!」


 キリルの声がする。


「いこうか、キリル」

「分かったよ、アレクセイ!」


 そうだ、バトルの中で調子が良いも悪いも関係ない。


 いつも通りにいかないからと、相手が待ってくれる訳では無い。


 ましてやこれはキリルと舞翔がお互いに望んだ真っ向勝負。


「“こうと輝け雪たちよ”」


 アレクセイが静かに呟く。


 直後アイフェリーの姿が白銀の中に消え、スノーブルマンの吹雪が今までで一番激しく吹き荒れる。


(まずい!)


 咄嗟にこれから来るであろう攻撃を避けようと力み、前のめりになった、その瞬間。


「っつぅ」

「舞翔!」


 足が痛み、バランスを崩した舞翔の体がぐらりと揺れる。

 それにカランは咄嗟に助けようと手を差し伸べ――ようとした。


「カランっ!」


 けれども舞翔は自力で持ちこたえると、カランを強く見つめ、叫んだ。


 踏ん張った足がズキリと痛む。治まっていたはずの痛みが再び熱を持ち始める。


 それでも今は、一人で立たなくてはいけない。

 舞翔は痛みに耐え、無理矢理に笑顔を作って、もう一度叫ぶ。


「勝とう、一緒に!」


 カランの息が止まった。


 舞翔の熱を帯びた眼差しが金色の瞳を射抜き、目を逸らせない。

 その瞳はカランに雄弁に語りかけていた。


 彼女は守られるだけのお姫様などではない。


――そうだ、そんな事は初めて彼女と闘った時から分かっていたではないか。


「あぁ、そうだ」


 伸ばしかけた手はいつの間にか拳を握り締め、それから大きく息を吸い込むと、カランは舞翔から目を逸らし、真っ直ぐにスプリングスへと視線を向けた。


「スプリングス!」


 吹雪の中へとスプリングスが突撃する。


 次の瞬間、微かな逆風と共に吹雪いていた雪がピタリと止まった。


春嵐しゅんらんよ、巻き上がれ!」


 叫び声と共に風がうねりだす。


 次の瞬間、全ての吹雪をかき消してスプリングが出現し、その周りで嵐が渦を巻き始めた。


 舞翔は息を呑む。


 スプリングスは吹雪の風を取り込んで、更なる強風を生み出してしまったのだから――!


「っす、ごい。すごいよ、カラン!」

「舞翔!」


 カランは舞翔を見つめた。


 そのまなじりは優しく下がり、金の瞳は自信に満ちて輝いている。


「俺は君のパートナーだ、この座は誰にも譲らない!」


 その言葉に舞翔の口角が上がる。


「そうだよカランっ、私はあなたとだから、誰よりも早く飛べるんだよっ!」


 吹雪に春の嵐がぶつかる。


 さすがと言うべきか、ロシアチームはスプリングスの起こす豪風ごうふうにも墜ちる事無く耐え抜いていた。


「ふふ、やっぱり強いね、BDFは。でも、そうこなくっちゃ。さぁ! 本気でぶつかろうよ!」


 マスクの舌でキリルの口角がにわかに上がった。


「“白き雪よ、オレを隠して!” アイフェリー!」


 直後スノーブルマンが嵐の中で再び吹雪を舞い起こし、その白い風の中をアイフェリーが駆け抜ける。


 エレキストも遅れをとるまいと力んだ直後。


「っ」


 足の痛みが再び、舞翔を襲った。


 二度目のそれに舞翔は遂に耐え切れずかがみこむ。

 その姿にロシアチームの動きが止まった。


「舞翔っ」


 キリルは瞳を歪め舞翔を見やった。

 その案じるような視線を受けて、舞翔は鋭い視線をキリルに投げ返す。


「手加減なんていらないっ、全力で来てよ!」

「!?」


 舞翔は叫んだ。


 直後エレキストが風に逆らうように急上昇する。


 舞翔は倒れていない。

 痛みに堪えて立ち続けながら、その目はただ一点を見つめている。


 春風と吹雪が交わる場所。


 二つの風が巻き起こす狭間を目がけて、エレキストが真っ直ぐに飛んで行く。


「っそうはさせない!」


 キリルはいち早く舞翔の思惑に気付くと、アイフェリーでエレキストの後を追った。


 その間もスノーブルマンとスプリングスの睨み合いは続く。 


 アイフェリーはその驚異的きょういてきなスピードでエレキストに追いつくと、動きを転換させた。


 アイフェリーの激しい攻撃がエレキストを襲う。


 その全てを避けながら、エレキストは更に吹雪の中を邁進まいしんした。


「くそっ、攻撃が当たらない……!」


 そして遂にエレキストは到達する。


 温かい空気と冷たい空気の境界、疑似的な対流圏界面たいりゅうけんかいめん――激しい風が吹き荒れる、ジェット気流の住処すみかへと。


「さぁ、風を奏でよう! エレキスト!」





後半に、続く!

次はあの人も出てきます(^^)

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