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第37話 『反則ギリギリ!? 荒野の決闘!』




 DJの合図とともに、四機は一斉に荒野の中へと飛び出した。


 直後、ウィルザイルの羽が地面に突き刺さるように傾く。


「!?」

「さぁ! まずはご挨拶だよ!」


 コントロールミスによる墜落、だったならばどれだけ良かっただろう。


 ウィルザイルの羽は荒野を削り取り、赤い砂岩さがんを舞い上げる。


 そのままロータリーカッターの如く、辺り一帯の大地を削り回り、その岩片がんぺんは何と舞翔たちに襲い掛かった。


「きゃあ!」

「舞翔!」


 カランは舞翔を庇うようにして前方に立った。


春嵐しゅんらんよ、巻き上がれ!」


 と、同時にスプリングスが舞翔たちの目の前で嵐を巻き起こす。その風は赤い砂嵐すなあらしを上空へと巻き上げた。


「へぇ、少しはやるじゃん」

「このステージが有利なのは、お前達だけじゃ無い」

「ははっ! 面白い!」


 ウィルザイルが動く。


 羽で地面や岩山いわやまを削っては、まるで弾丸のように岩片がんぺんを乱れ打つ。


 スプリングスを襲うそれら全てを、巻き起こした風でカランは避け切ってみせた。


「それってどこまで続くかな!?」

「その前に貴様を墜とす!」


 荒野を砂埃すなぼこりが埋め尽くす激しい攻防戦。

 一寸先いっすんさきも見えなくなった視界不良の中、舞翔は微かに聞こえた風の音にハっとした。


 直後、どこからか現れたウェスローグのアタックをゲイラードはすんでで避ける。


「気付かれたか、思ったより動けるな」


 ウェスローグは一瞬の後、またすぐに砂埃の中へと消えて行った。


 気付けばゲイラードの周囲は殆ど何も見えないほどの砂塵さじんに囲まれてしまっている。


 これでは360度、どこから攻められてもおかしくない。


「っゲイラード!」


 舞翔は、まずは砂から逃げるべくゲイラードを直進させた。


「はは! そんなに宛ても無く動くと危ないぞ!」


 ジェシーの小馬鹿にした声が響いた直後、ゲイラードは何かにぶつかりそうになり、ぎりぎりのところで急停止した。


 岩山である。


 見えていればどうということは無い障害物なのに、見えていないことで危なく激突するところだった。


 荒野である所為で低く見えていた岩山だったが、間近にするとまさしくそびえ立っており、かなりの高さがある。


 地面もそうだ、よく見れば高低差や凹凸おうとつが至る所にあり、突然崖のようになっている場所もある。


 舞翔はそれらを飛びこなす程、まだゲイラードに馴染なじめていない。


 思わず顔つきが険しくなった直後。


春嵐しゅんらんよ、巻き上がれ!」


 巨大な竜巻のような風が、辺り一帯の砂塵を全て巻き上げた。


 一瞬にして視界が開ける。


「舞翔、落ち着いて地形を覚えるんだ! 君なら飛べる」


 スプリングスだ。

 いつの間にかゲイラードの隣に寄り添うように飛んでいた。


 隣を見れば、カランが力強く頷いている。


(そうだ、絶対に負ける訳にはいかない。物語としても、エレキストのためにも!)

「ゲイラード! 行くよ!」


 荒野にも風は吹いている。


 ゲイラードはその風に乗って舞い上がった。


「逃げてるだけじゃあ勝てないよ!」

「マリオン! 挟み打つぞ!」

「オッケー!」


 ゲイラードとスプリングスは付かず離れず、二機一緒に荒野を駆け抜ける。

 それを挟み込むように、ウェスローグとウィルザイルが現れた。


 四機は凄まじいスピードで荒野を飛び回る。

 先に動いたのは、アメリカである。


「さぁ! どこまで耐えられるかなぁ!?」


 マリオンの言葉とともに、再び削られた大地の岩片や石礫いしつぶて飛来ひらいする。


 それでもゲイラードは止まらない。


 その意図を正確に読み取っているように、スプリングスも一変の迷いも無くゲイラードに伴走ばんそうする。


「マリオン!」

「!」


 目の前には一際巨大ひときわきょだいなビュートがそびえ立っていた。

 その岩壁をゲイラードはうようにして上昇する。


 しかしウィルザイルの方が早かった。


「追いかけっこは終わりだよ!」


 ウィルザイルが岩壁へ突っ込み、岩山が崩れる。

 最早岩片もはやがんぺんどころではない、巨大な岩がゲイラードとスプリングス目がけて落ちて来る。


「舞翔!」

「大丈夫、避けれる!」


 だがこの程度、ピンチには成り得ない。


 いつも通りの反射神経と操作技術で、舞翔が岩を避けようとした瞬間。


「っ舞翔!」


 カランが叫ぶ。


 その瞬間、無数の石礫が展望台アウトルックタラップに立つ舞翔自身を襲った。


 ウェスローグだ。


 いつの間にか展望台アウトルックタラップ付近へ飛んで来ていたウェスローグが、風上から大地を削り取り、はなったのである。


 目を開けていられない、舞翔は思わず目を閉じた。


 けれども石礫の衝撃ではなく、何かに包み込まれた感覚がして、舞翔は恐る恐る目を開ける。


「っカラン!?」


 舞翔の目の前にはカランの服があった。

 庇うように抱き締められていたのである。


「舞翔! ゲイラードを!」


 耳元で聞こえた叫びにハッとして、舞翔はゲイラードへ視線を投げた。


「おーっと! ゲイラードとスプリングスに岩が直撃だぁ!」


 DJの実況に、会場中から悲鳴と歓声が入り混じった声が上がる。


 事実ゲイラードとスプリングスの上に巨大な岩は直撃した。


 そのまま地面へとなだれ落ち、地響きのような音がスタジアムに反響する。


「っ、ゲイラード!!」


 舞翔の悲痛な叫びが、砂煙の中で掠れて消えた。






書いていて楽しいバトルでした。

この後のバトルもぜひご注目下さい!

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