表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/145

第35話 『団結! BDFチーム』




「舞翔!」

「! カラン!?」


 ソゾンが去った途端、カランがやって来たことに、舞翔は目をまん丸くして驚いた。

 駆け寄って来たカランは、急にしゃがみ込んだかと思えば、許可も取らずに舞翔の体を強く抱きしめる。


「ちょっと、カラン!?」


 その力の強さに、少しだけ息を詰まらせながら、舞翔は首を傾げた。


 カランは離れるつもりが無いらしく、更に強く抱き締めながら、舞翔の耳に口元を寄せる。


「わざと負けたと言うのは本当なのか?」


 耳元で囁かれた言葉に、舞翔の全身が反射的に強張った。

 それを答えと受け取ると、カランはようやく少しだけ体を離し、至近距離で舞翔を見つめた。


 そんなカランを見ることが出来ず、視線から逃げるように舞翔は顔を俯ける。


 沈黙が降りた。


 けれども先に沈黙を破ったのは、舞翔だった。


 顔を上げ、自分を優しく見つめるカランを、覚悟を決めたようにじっと見返すと、ゆっくりと口を開く。


「結果的に勝てたかどうかは分からない、けれど最後に私は諦めた。本当に、ごめんなさいっ」

「……そうか」


 舞翔の両肩に添えられたカランの手に力が入る。


 舞翔は眉尻を下げると、本当に辛そうな表情で、それでもカランに頭を下げた。


 カランは怒っているだろう、どんな叱責しっせきも受けるべきだと、覚悟してのことである。


「ずっと元気が無かったのは、それが原因だったんだな」


 けれどもカランから発せられた声は、怒りなど微塵も含まない、それどころかまるで子供にでも言い聞かせる様な、とても優しい声色だった。


 驚いて思わず顔を上げた舞翔は、今度はカランの表情に目を瞠る。


 カランは瞳を細め、眉を下げ、とても優しい表情で舞翔を見つめていたのである。


「なあ、舞翔」


 体が少し離れて、気付けばカランの大きな手が舞翔のマメだらけの手を、まるで大切なものを扱うように包み込んでいた。


「あの時君に全てを背負わせてしまったのは、俺の力不足だ」

「っそんなこと、絶対にない!」


 反射的に叫んだ舞翔だったが、まるで蜂蜜のように甘い黄色の瞳に、優しい眼差しで見つめられ、思わず言葉を呑む。


 その瞳から、目が離せない。

 舞翔の心臓が、急に高鳴り出す。


「手、痛かっただろう?」


 だから次の瞬間、カランの視線が手に移ったことに、舞翔は心底ほっとした。


 あの瞳に見つめられ続けたら、体の芯から熱くなり、林檎のように赤くなってしまいそうだったから。


 カランはいつのまにか取り出した包帯で、血の滲んだ舞翔の掌をくるくる巻いて行く。


 その間、どこか穏やかな静寂が二人の間に訪れた。


 舞翔は何となく落ち着かず、目の前にあるカランの顔を改めてじっと見つめる。


 垂れた優しい目元に、長い下睫毛したまつげが美人の印象を与えるのに対し、金色の瞳は、瞳孔どうこうがくっきりと浮かび上がり、獰猛どうもうな肉食獣の雰囲気をかもしている。

 日によく焼けた黄褐色おうかっしょくの肌に、朱色で描かれた額の紋様もんようがよく映えて、柳のように流麗りゅうれいな眉は、長い髪と同じマルベリー色をしている。

 そのマルベリー色の髪からはそこはかとなく良い匂いまで漂って来る。


 性格のインパクトと押しの強さで、今まであまり意識してこなかったが、改めて見るとこんなにも美しい人に、軽率に抱き締められたり手を引かれたりしていたのか、と舞翔は急に恥ずかしくなった。


 ふと、その金色の瞳が再び自分の顔へと向けられる。

 真っ直ぐで強い、どこか熱を帯びた眼差し。

 瞬間、舞翔の心臓は驚くほどに跳ね上がった。


「舞翔、俺達はチームだ。だから次こそ、正々堂々一緒に勝とう!」


 その口から紡がれた言葉に、その力強い眼差しに、舞翔の心は激しく打ち震える。


 視界で光がパチパチと弾けるような感覚。


 それはきっと、嬉しいという感情だった。

 視線を落とせば、血が滲んでいたマメだらけの手に、いつの間にか包帯が巻かれ終えている。


 その手のひらに、不意にカランが唇を落とした。


「へ!?」


 突然の行為に舞翔の顔が真っ赤に爆発した直後。


「そうだぞ、舞翔!」

「たったたたた武士!?」


 舞翔の目の前に、突然さかさまの武士の顔が現れた。

 驚きすぎて舞翔の心拍数は爆上がりである。


 しかしそのお陰で先程のカランの行動がうやむやになり、舞翔は人知れずほっとした。


(びっくりした、王子様ムーブは心臓に悪いよ!)


 そうこうしている内に、武士が隣に座り、舞翔の顔をじっと見つめる。


「俺はお前がバトルドローン大好きなこと知ってる、俺に怪我させたことにずっと責任感じてくれてることも。わざと負けたのだって、お前なりに考えがあったんだろ?」

「!! わざと負けたこと、気付いてたの……?」


 武士は返事はせずに、ただにっこりと微笑んだ。


 どうやら気付いていたらしい。その事に舞翔と、カランもまた驚いたように目を見開く。


 すると直後、舞翔は気が抜けてしまったのか、大きく肩を落としながら思いっきり息を吐いていた。


(武士まで、気付いてたのか。なんだ、そっか)


 さすがは主人公というべきか、天然に見えて意外と察しが良いとおののくべきか。


 どちらにしろ、それでも何も言わずに変わらずそばに居てくれたことが、舞翔にとっては何よりもありがたかった。


「俺はお前を信じてる。だけどさ、俺達はチームだろ! ひとりで悩んだりするなよ。な」


 武士は何てことは無いように、いつも通りに快活に笑った。

 その笑顔に導かれるように、気付けば舞翔の表情にも笑顔が戻って、自然と頬が緩むのを感じる。


「うん、ありがとう」


 気付けば自然と、口から零れていた。

 目を細め微笑んだ舞翔に、武士は満足そうに口角をにっと上げる。


「あ、でも俺の怪我が治ったら絶対一番に俺とバトルしてくれよな! それで今回のことはチャラ!」

「っ、もう。武士だなぁ。でもそれは約束しかねます」

「え!? 何でだ!?」

「何時間も付き合わされそうだから」

「はは、違いないな」

「なんだよ、カランまで~!」


 気付けば三人、いつも通りに笑っていた。


 舞翔の脳裏に貼り付いていたソゾンの言葉は、いつの間にか影も形も無くなっている。

 正しいか間違っていたかで言えば、わざと負ける行為は間違った行為だっただろう。


 どんな理由があろうと、それは変わらない事実なのだ。


 それでも今は、たった一人で苦しまなくて良い。

 手を取って、一緒に悩んでくれる仲間がいる。


 それは前世での舞翔には無かった、きっと欲しくてたまらなかった、温もり。


「二人が私のチームメイトで、本当に良かった」


 舞翔は気付けば、両手を思い切り広げ、二人を抱き寄せていた。

 武士はそれに嬉しそうに笑い、カランは少し照れたように頬を赤く染める。


 その様子を通路から見つめていた影があった。

 ソゾンである。


「……」


 ソゾンは舞翔の様子を見届けるように一瞥いちべつすると、静かに去って行った。




舞翔にとって、二人は大切な仲間です。

そうなれたのかな?と思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ