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8、開祖の死 1

えぐい場面があります。

嫌いな方は、プラウザバックをしてください。


 5月25日、笠原浄光宮殿の教主寝室の間に関係者一同集合していた。

笠原浄光国開国の人、浄光教主がベットに虫の息で横たわっていたのだ。傍らで脈をとっていた侍従医が、


「ご臨終です。教主様、ただ今崩御(ほうぎょ)されました」と、告げた。


「きゃー!」と侍女たちから、叫び声が上がった。悲鳴とも歓声ともつかぬ叫びだった。


侍女たちは、押し並べて『悲しみのあまり、はしたない声を上げ申し訳ありませんでした』と、言っている。

歓声を上げたと見る向きもある。と、いうのは、侍女たちは半病死人の浄光の添い寝を強要されていたのだ。何処まで妄執(もうしゅう)に囚われているのか、教主は、もう、狂っていると思っていたらしい。



浄光は半分死んでいるのに、妄執止むことなく裸の女の添い寝を強要していた。断ると拷問にかけられ惨い死を与えられる。

それは、一機に殺さずじわじわとヘビの生殺し状態に置かれるものだ。生爪を一枚一枚剝()がしたり、飼っているマムシに全身を噛ませたり、全裸にして逆さ釣りにしてむち打ち、水車に縛りつけ水責め、全裸にして三角木馬に乗せ両足に重りの股裂き、殆どの者が、身体中の穴という穴から体液を吹き出し、『ぎゃー!』と獣のような絶叫を上げる。途中から『殺してくれ』と懇願するも聞き入れられず、最後は発狂するという。

地獄のような拷問室は防音が施されているが、近くを通ると悲鳴、絶叫が漏れ聞こえるという。床の血だまりは近くを流れる小川に排出され、時々、川面が真っ赤に染まる。その時はヘビやキツネ、タヌキや得体の知れない獣、カラス、ハゲタカなどが集まってくるという。



 侍女たちが寝床に入る時、もあ~と湿気を含んだ何ともいえない生温かいもの凄い臭気が襲い、吐き気を催す。

身体中がむくんでいて、身体の押したところからはじわ~と白い臭い膿がでて、べたべたと張り付くようになる。目はすでに見えなく、排泄は垂れ流し状。臭く汚い手で裸の女の乳や腹、股間などをまさぐり続ける。どんなにおぞましくとも、逃げることは許されない。泣き叫び、悲鳴を上げ、嘔吐する女、失神する女も続出した。

何という妄執だろうか、浄光は膿、吐瀉物、汚物にまみれて(うごめ)いていた。

侍女たちの歓声は、周りの者は良く理解できていた。


 

 誰一人として、涙を流している者は無かった。

晩節(ばんせつ)を汚す』という言葉があるが、浄光のそれは、あまりにも酷いと皆から思われた。

枕頭には光如、その母、木村参謀長。浄如、その母、小島参謀長。そして満如、宇佐美軍事顧問がいた。

皆が、教主の死を悲しむというより、今後の自分の行く末を思案する風だった。



 『笠原浄光死す』の報は、その日の内に女御国に届いた。

直ちに、作戦会議が招集され破魔娘、塗手、阿郷、佐伯など主だった者が駆け付けた。


「いい知らせです。笠原浄光が死にました」


破魔娘が、開口一番伝令の報告を披歴した。


「おう~」


「まあ~」


「やった~」


部屋に歓声が飛び交った。


「これで、浄光国との戦闘は小康状態となるだろうな」


「そうでしょうね。跡目争いで、女御国と戦争してる場合じゃないでしょう」


「浄光がくたばったんだ。いい気味だ」


「晩節を汚すというが、煩悩まみれ、妄執まみれの酷いものだったそうですよ」


「秘密にされていたらしい。けれど、そういうものはどうしても、漏れ出てくるらしい。とても、教主とは思えないほど、酷いものだったらしい」


「おそらく、独裁が長く続き過ぎたせいだろう。誰も意見を言う者がいない。周りはイエスマンばかり。自分の欲望の暴走を止める人も、制度も無くなってしまったんだろう。御者の居ない暴走車だよ」


塗手は自分の顔をつるりと撫でた。


「悪の3大気質というものがある。一つは精神病質、二つ目は権謀術質、三つ目は自己陶酔症だ。その3大気質が最後にきて全部出て来たのかな」


「最後はともかく、あれだけの強国を作ったのだから、それなりの人望があったはずなのにどうなったのでしょうね~」


「今後、どうなるのでしょう。私たちは、どうするべきなのでしょう」


「当分は国境地帯の補強だな。要所要所に砦が必要だろう。堀も必要だな。ここと、ここと、ここ」

塗手は黒板の地図の要所に丸を付けた。


「問題は光如、浄如がどう動くかだな。一応、光如が後継者らしいが、光如は人望がない。浄如はある。このバランスの悪さは争乱の種のなるな。光如が評判通り我執が強い人間なら、父、浄光のように血脈の近い人間から粛清するだろうな。浄如は一番目の対象者だ。浄如はどうかな。唯々諾々とさせるかな。浄如の情報が極端に少ない。と、いうことは、よっぽどのバカかよほどの用心深さかだ。ワシは用心深さだと思っている。うん」


「光如と浄如ですか。光如なら分かり易いといえば、分かり易い。浄如の場合、不気味ですね。全然、分からない。満如はどうなのですか」


「満如は浄如よりと見られいる。が、はっきりしてるわけじゃない」


「う~ん。もう少し経過を見ないと分からないということですね」


長期独裁者は、晩節を汚す者が目立ちますね。

ヒトラーはアウシュビッツでホロコーストをおこすし、スターリンは猜疑心が強く臆病で、少しの疑惑でもすぐ処刑してしまうし、一説では、それだけでも一千万人以上殺したとか。

我々は、今現在もその弊を目の当たりにしていますしね。

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