第33話:神原岳人 9
「みんな逃げて! 魔力暴走だよ!」
「「「「「――!?」」」」」
「せ、聖女の守り!」
岳人と戦っていた五人が大きく飛び退き、そちらに向けて聖女の守りが発動される。
岳人を中心に魔力の暴風が巻き起こり、ボロボロになっていた大木だけではなく、まだ傷一つ付いていなかった大木も一瞬にして粉々になってしまう。
それだけの魔力を内包し、それを放出した岳人がどうなってしまったのかは現時点で誰も把握できていない。
何故なら確かめる余裕など、明日香たちにも全くなかったからだ。
「きゃああああっ!!」
「ア、アスカ!」
明日香の叫び声にイーライが声をあげるが、魔力の暴風を前にして駆け寄ることができない。
ただ暴風が終息するのを待つことしかできなかった。
『……やっぱり、お前かぁ?』
「えっ?」
「明日香さん!」
――ドオオォォン!
しかし、それは明日香たちだけの話であり、岳人自身がそうではなかった。
魔力を放出させた場所から移動し、背後から明日香に攻撃を仕掛けてきたのだ。
夏希が聖女の守りを強化して発動させなんとか防いだものの、そのせいで彼女の魔力が一気に消費されてしまう。
「ど、どうして岳人君がここに?」
『あぁん? これは俺様がやったことだからなぁ。それに巻き込まれるとか、バカな真似はしねぇんだよぉ』
「くうっ!?」
「な、夏希ちゃん!」
苦しそうに片膝をついた夏希を見て、明日香が肩を掴んで名前を呼ぶ。
その姿を見た岳人は口端を吊り上げて下卑た声を漏らす。
『かかかかっ! いいねぇ、苦しそうなその姿、最高じゃねぇかあっ!』
「あ、あなたねえっ!」
『自業自得じゃねぇか! 俺様たちを裏切ったんだから、苦しみながら死ぬべきだろう!』
「ふざけないで! それにあなた、ここには冬華ちゃんや凜音ちゃんもいるのよ!」
『あぁん? 冬華に凜音だぁ?』
今まで気づいていなかったのか、岳人の視線が二人から倒れている冬華と凜音に向いた。
『……あぁん? なんで人間に戻ってんだぁ? 俺と同じで魔獣になったじゃねぇか?』
「私たちが助けたわ」
『……てめぇ、何を勝手してくれてんだよぅ、あぁん? こいつらは俺と同じで、魔獣の力で完璧な存在になる予定だったんだぞこらあっ!』
鋭い拳が聖女の守りにぶつけられる。
「あぁっ!?」
七色に輝く壁が大きく揺らぎ、拳が叩きつけられるたびに夏希から苦悶の声が漏れる。
「や、止めてよ!」
『知るかよ! 俺様を裏切ったこいつが悪い! そして、俺様に逆らったてめぇもなあっ!』
叩きつけられる拳の速度が段々と速くなり、夏希の額には大粒の汗が浮かんでくる。
何もできな明日香は自分が悔しくなり、情けなくなる。
このままでは夏希も自分も危ない。
(どうして、どうして私にはこのメガネしかないの? もっとできることはないの?)
自分にできることはなんなのか、それを考え始めてからすぐに、明日香はある日のイーライとの会話を思い出した。
それは魔法とは何かを彼から学んでいた時のことだ。
自分がどの属性に適性を持つのかはわからないが、とにかくできることをやるしかないと、明日香は両手を岳人へ向けた。
『あぁん? なんのつもりだ?』
「……ブ、ブルーシャボン!」
明日香が初めて見たイーライの魔法。
水属性に適性があったらいいなと思い、彼女は思わずそう口にした。
――ポンッ!
すると、突き出された手のひらの前に青色に染まった丸く大きなシャボン玉が顕現した。
『……ぎゃははははっ! な、なんだよ、その魔法は! 全く意味のない魔法じゃねぇか!』
「う、うるさいわね! 今に見てなさいよ!」
『かかかかっ! そんなことを言ってもいいのか? ほれよっ!』
初めての魔法を顕現させた明日香だったが、ブルーシャボンは岳人に指で弾かれただけで割れてしまう。
それでも諦めることなくブルーシャボンを何度も顕現させてくる明日香に対して、岳人は段々と苛立ちを覚え始めていた。
『……おい、もう諦めやがれ! 面倒くせぇんだよ!』
「嫌よ! 私は諦めないわ! ブルーシャボン!」
『こいつ……マジで面倒くせぇ! 絶対にぶっ殺してやる!』
苛立ちが頂点に達した岳人は、ブルーシャボンを無視して再び聖女の守りに拳を叩きつけ始めた。
「いまだ!」
このタイミングを逃すことなく、明日香は狙い通りの場所にブルーシャボンを顕現させた。
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