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勇者召喚、おまけ付き ~チートはメガネで私がおまけ~  作者: 渡琉兎


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第28話:神原岳人 4

 回避は不可能と判断し咄嗟に剣を盾とするが、岳人は加速を乗せた拳を振り下ろしている。

 全ての威力を受け流すことは不可能だろう――そう思っていた。


「どっせええええええええぇぇいっ!!」

「ガゼルさん!」


 岳人の動きを先読みしたガゼルが、二人の間に飛び込み大剣を振り抜く。

 大剣と拳がぶつかり合い、周囲には耳をつんざくような甲高い音が響き渡る。


『ジャマダアアアアァァッ!』

「てめぇの方こそ、邪魔なんだよおおおおっ!」


 激しいぶつかり合いが何度も続き、お互いの武器と肉体が疲弊していく。


「イーライ!」

「はい! 団長!」


 岳人がガゼルに集中している間、イーライとダルトが背後から加勢に向かう。


『グルアアアアアアアアァァアアァァッ!!』


 しかし、ガゼルと打ち合いながら咆哮をあげると、岳人の背後に二匹の漆黒の魔獣が突如として姿を現した。


「うおっ!」

「なんだ、貴様らはっ!」


 突然のことに不意を突かれ、二人とも劣勢のまま戦闘を開始する。

 その間も岳人はガゼルと打ち合いを続けているのだが、ついに限界が訪れた。


 ――バキッ!


 分厚く頑丈に作られていたはずのガゼルの大剣に、ひびが入ったのだ。


「ちいっ!」

『シネシネシネシネシネエエエエエエエエェェエエェェッ!!』


 さらに加速する岳人の両拳による乱打に、ガゼルの表情が曇る。

 その瞬間、彼女の声がガゼルの耳に届いた。


「――聖女の守り!」


 夏希の声が届いた瞬間、ガゼルは自然と笑みを浮かべていた。


『シネシネシネシネ――アァン?』


 拳に感じていた大剣の感触が、別の堅いものを殴りつける感触に変化した。

 それが、夏希が発動した聖女の守りであることに岳人が気づくと、彼の抱いていた怒りが再び夏希へと向く。


『ナアアアアツウウウウキイイイイイイイイィィッ!!』

「こっちを無視するんじゃねぇぞ!」


 岳人の意識がガゼルから夏希へ移った一瞬の隙を見逃さず、ガゼルは渾身の力を込めた横薙ぎを脇腹へと叩き込む。

 鈍い音が響き渡るのと同時に、岳人の体が一直線に吹き飛ぶと、大木を薙ぎ倒しながら視界の外へと飛んでいく。

 代償としてひびの入っていた大剣が砕けてしまい、ガゼルは折れた大剣を見つめながら小さく息を吐き出した。


「……今まで、ありがとな」

「ガ、ガゼルさん!」


 そこへ駆けつけた夏希が心配そうに彼を見つめる。


「助かったぜ、夏希のお嬢さん」

「いいえ、そんな。私の方こそ、助けていただきありがとうございます」


 お互いに笑みを交わし、ガゼルが夏希の頭を優しく撫でる。

 その姿を微笑ましく見つめていた明日香は、視線をイーライとダルトの方へ向けた。

 二人はすでに体勢を立て直しており、すぐにでも漆黒の魔獣を倒してしまうだろう。

 とりあえずの山場は超えたとホッとしつつも、明日香は岳人を元に戻す方法はないのかと思考を働かせる。

 冬華と凜音の時には右の胸にある何かを砕くことで人間に戻すことができた。

 しかし、岳人の場合はいくらメガネを通して見つめたところで似たような情報が現れることが終ぞなかったのだ。


「……どうして? 岳人君を元に戻すことはできないの?」


 そんな疑問を抱きながら視線を岳人が吹き飛ばされた方へ向けた――その時である。


「……えっ?」


 視線の先には間違いなく岳人がいるはずだ。それは薙ぎ倒された大木が物語っている。

 しかし、メガネには岳人の情報が表示されない。それどころか生物の情報すら見当たらないのだ。

 まさかという思いで首を左右に振っていくが、それでも岳人の存在を確認できない。

 直後――背後からゾッとする声が聞こえてきた。


『――オマエガゲンキョウダナ?』

「……えっ?」


 その声に弾かれたように振り返ると、2メートルほど離れた距離に彼は立っていた。

 怒気を纏ったその視線に明日香は動けなくなり、声も出せなくなる。

 彼女の足元には気を失ったままの冬華と凜音も倒れているが、どうしたらいいのか全くわからなくなっていた。


「――アスカ!」


 直後、背後からイーライの声が聞こえてきたが、このタイミングを見計らっていたのか岳人はニヤリと下卑た笑みを浮かべた。そして――


『コオオオロオオオスウウウウゥゥウウゥゥッ!!』

「いやああああああああぁぁっ!!」


 イーライもダルトもガゼルも、夏希の魔法も間に合わない状況で、岳人が明日香へ襲い掛かった。

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