第26話:神原岳人 2
何が起きたのか理解できず、多くの者が警戒を強める中、明日香は予想外の表示が現れたことに目を見開いてしまう。
「……か、神原、岳人?」
明日香の呟きが誰かに届いたのかはわからない。何故ならそのタイミングで、周囲から多くの悲鳴があがったからだ。
「ぐわああああっ!」
「げはっ!」
「い、いでぇ、いでぇよぉ」
砂煙の中から騎士や冒険者が何かに弾き出されたかのように飛び出してくると、直後には砂煙がドンという音と共に吹き飛んだ。
『イイイイアアアアアアアアァァアアァァッ!!』
咆哮による衝撃波が砂煙を晴らし、それだけでなく再び恐怖心を煽る。
先ほどと違い目の前にいる相手からの咆哮は、耐えられた者にも強い効果を与えた。
「ぬおおおおおおおおぉぉっ!」
「どっせええええええええぇぇいっ!」
そんな中でダルトとガゼルは咆哮が与える恐怖心を弾き返して反撃へ転じた。
二人ともに扱う剣は巨大で重量のある大剣。
二足歩行をしている魔獣の腕目掛けて、それぞれが左右から大剣を振り下ろす。
――ガキンッ!
「こ、こいつは!」
「硬いぞ!」
『イイィィアアアアアアアアァァッ!』
両腕を振り回して二人を弾き返すと、魔獣はまるで周囲を探るかのように首をゆっくりと動かしていく。
しかし、その首がある場所まで来るとピタリと止まり、まるで笑みを刻むかのように裂けた口が開かれていき、隙間から涎のような液体が地面にびちゃっと零れ落ちた。
「……なんだ、こいつは?」
「……あ、明日香さん? あれ、こっちを見ていませんか?」
「……あれ、岳人君だよ」
「……えっ?」
再び明日香の口から岳人の名前が飛び出すと、夏希はまさかという表情で目を見開き、その視線をゆっくりと魔獣へ――岳人へと向けた。
「……が、岳人さん、なんですか?」
『……ゲゲ……キ……キキ……』
「……ほ、本当に岳人さんなんですか? 答えてください!」
『ナアアアアツウウウウキイイイイィィイイィィッ!! コロス、コロス! クラッテヤルゾオオオオォォッ!!』
岳人から放たれた人語を耳にして、この場にいる全員が恐怖を覚えた。先ほどの咆哮とは桁違いの、強烈な恐怖をだ。
ダルトとガゼルですら大剣を握る手に力がこもり、顎を伝い汗が地面へ落ちていく。
「……この漆黒の魔獣が、カミハラ殿だと?」
「おいおい、冗談がきついぜ、アスカのお嬢さんよ?」
ニタニタと笑みを浮かべている岳人の体は漆黒の鱗で覆われており、体長は3メートルを優に超えている。
小型で二足歩行のドラゴンといえばいいのだろうか、お尻の部分から伸びる尻尾は継続して蠢いており、先ほど騎士や冒険者を弾き飛ばしたのもこの尻尾による一撃だった。
「ですが、叫んでいる内容を聞くと、確定じゃないですか?」
二人に続いてイーライも剣を手に前へ出てくる。
「イーライ、二人を守らなくていいのか?」
「その二人の指示です、団長。守りは任せて欲しいとナツキには言われました」
「ナツキのお嬢さんも、成長しているってことだな」
「はい。それに、こいつを二人のところへ行かせるわけにはいきませんからね」
三人の後ろには聖女の守りを使い、守りを固めている明日香と夏希、そして気を失っている冬華と凜音がいる。
この世界を守るために呼び出した勇者たちが守られ、それを襲っているのも勇者だというのは皮肉にしかならないだろう。
それを一番身に染みているダルトは、誰よりも早く前に出て大剣を振り抜いた。
「ガクトオオオオォォッ! 性根を叩き直すつもりが、すでに腐っておったかああああっ!」
アルからも気をつけてみておくように言われていた。そのつもりで一兵士の立場に落ちてからも岳人のことを気に掛けて頻繁に顔を出していた。
しかし、今回はそれが裏目に出てしまった。
岳人が秘めていたこの世界に対する恨みは相当なものだ。その中でもダルトに対する恨みは夏希の次いだものになっている。
故に――目の前にやってきたダルトを見て、岳人は標的を彼に変更した。
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