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第16話:好感度の謎 3

本日三回目の更新です。

 翌日の朝、明日香は建物の裏手にある井戸水で顔を洗いながら、ジジとどのように接すればいいのかを考えていた。

 ジジから許しを得ているとはいえ、自分が今まで通り話をする事ができるか心配だったのだ。


「……わ、私から声を掛けないとダメだよね。ジジさんには良くしてもらっているし――」

「おはようございます、アスカさん」

「ふあぁっ!?」


 独り言を呟いている背中にジジから声を掛けられた明日香は変な声をあげながら飛び上がる。


「あぁぁ、すみません。驚かせてしまいましたね」

「あの! いえ、だだだ、大丈夫です! ちょっと考え事をしていただけなので!」

「そうですか?」

「は、はい! そうです!」


 苦笑いを浮かべながら返事をする明日香の事をジジはしばらく心配そうに見つめていたのだが、すぐに笑みを浮かべて一つ頷いた。


「であれば構わないのです。朝食を食べたら、今日から調合について教えていきますね」

「……え? ちょ、調合ですか!」

「ほほほ。ようやく笑顔になりましたね」

「あっ! ……す、すみません」


 今までは通いだった事もあり時間の掛からない品出しや接客の仕事を教えられてきた明日香だったが、住み込みになった事で時間を作る事ができると判断された。

 仕事に不満があったわけではないが、早く調合を習いたいと内心で思っていた明日香にとっては寝耳に水の嬉しい話だったのだ。


「構いませんよ。昨日も言った通り、儂は気にしておりませんのでな」

「あ……その、本当にありがとうございます」

「いえいえ。では、戻って朝食をいただきましょうか」

「はい!」


 一人で井戸にやって来た明日香だったが、帰りはジジと共に戻っていった。


 朝食の席で明日香は、いつでもいいので休みを貰えないかとジジに相談していた。


「お休みですか?」

「はい。住み込みになっていきなりで申し訳ないのですが、昨日の事でまずはアル様やリヒト様に相談したいと思いまして」


 これだけの言葉を聞いて、ジジは明日香が言わんとしている事をすぐに理解した。


「……なるほど、かしこまりました。でしたら、明後日はいかがでしょうか?」

「え? ……い、いいんですか? そんなに早く」

「えぇ。本当は明日と言いたのですが、今日お伝えする調合について覚えているか確認をしたいと思いましてね。申し訳ありませんが、明後日で良ければお休みにできますよ?」

「あ、ありがとうございます!」


 ジジの厚意に明日香は何度も頭を下げた。


「ほほほ。では、食事を終わらせて調合を教えていきましょうかね」

「はい! よろしくお願いします!」


 残っていた料理を一気に口に放り込んだ明日香は時折むせながらも食べ終わると、食器を台所へと持っていく。


「洗い物は後から儂がしますよ」

「これくらいやらせてください! 私にできる事があれば、やらせてほしいんです!」


 振り返りながら笑顔でそう口にした明日香だったが、いざ洗い物をと思ったところでその動きをピタリと止めてしまう。


「……どうされましたか?」

「あー……その、水とか洗剤って、どこにあるんですか?」

「……ほほ、ほほほ。では、お手伝いをしていただくために、一度教えてあげましょうかね」

「本当にすみません! ありがとうございます!」


 日本の頃のように蛇口をひねれば水が簡単に出るわけではない。

 台所にはすでに井戸水を張った桶が三つ置かれており、一つ目の桶に汚れた食器を入れて大まかに洗い流していき、二つ目の桶で念入りに擦り洗いをして、三つ目の桶には食器を浸けずに水を注いで最後のすすぎを行っていく。

 日本のように食器用洗剤があるわけではなく、あくまでも水だけで洗い物を済ませていた。


「うーん……なんだか、きれいになっているか分かりませんね」

「まあ、古くなれば買い換えますからね。アスカさんの故郷では違うのですかな?」

「あー、えっと……まあ、そうですね。きれい好きな故郷でしたから」

「そうでしたか。まあ、そこはおいおいで慣れていくしかないでしょうね」

「あ、あはは。そうですねー」


 いっそ全てを伝える事ができればどれだけ楽かと思い始めた明日香は、自分が異世界で暮らしていくための苦労を徐々にだが理解し始めていた。


 洗い物を終えた二人は場所を移動し、明日香が足を踏み入れた事のない一階の最も奥にある調合部屋へ通される。

 そこには商品棚に置かれている完成したポーションとは違い、大量の素材が整頓されて棚に並べられていた。


「……しゅ、しゅごい匂いでしゅね」

「ほほほ。慣れれば問題ありませんよ。アスカさんはまず、これらの匂いに慣れるところからになりそうですね」


 鼻をつまみながらの明日香とは違い、ジジは変わらぬ微笑みのまま慣れだと口にする。

 ならば慣れてやろうと心に決めた明日香は指を離して涙目になりながら鼻呼吸を繰り返した。


「……うぅぅ……はああぁぁぁぁ……だ、だいひょうぶでひゅ!」

「無理はなさらないようになぁ」

「……ふぁい」


 情けない返事を聞きながら、ジジは大きな寸動鍋の前で立ち止まった。


「これはにゃんですか?」

「昨日のうちに調合を済ませていたポーションです」

「これがポーションでふか? ……薄い青色だから、身体損傷を回復させる下級ポーション?」

「ほほほ。大正解ですよ、アスカさん」


 ポーションを見極める時だけは言葉が詰まる事もなく、ジジの言葉に小さくガッツポーズを見せた明日香。


「いったん、この下級ポーションを瓶に移し替えてから、調合を教えましょう」

「私にも手伝えそうな作業ですか?」

「こちらの柄杓には内側に目盛りが入っているので、その分量で瓶に移し替えてください」

「それならできそうだな……お手伝いします!」


 いつの間にか匂いに慣れた明日香は、ジジに見守られながらポーションを移し替えていく。

 作業自体は流れ作業なのだが、初めてという事もありしっかりと目盛りに合わせて確実にこなしていく。そんな明日香の姿をジジが小さく頷きながら見守っている。

 時間を忘れて作業に没頭していた明日香は、ついに寸動鍋の底が見えるところまできた。


「……これで、最後…………よし、終わったああああぁぁ!」


 最後のポーションを瓶に注いで栓をすると、完成品を並べている木箱に入れる。

 明日香は周囲の邪魔にならないよう小さく、それでも力強く伸びをした。

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