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第44話:それぞれの日常へ 8

 ――その日の夜、ジジの道具屋にはイーライとガゼルも集まり簡単なお祝いを始めた。

 もちろん、夏希とガゼルが付き合いを始めたお祝いであり、皆が祝福してくれている。

 夏希はとても嬉しそうなのだが、慣れていないのかガゼルはお祝いが始まると終始恥ずかしそうな表情を浮かべていた。


「ほほほ。お祝いの席です、もっと嬉しそうな顔をした方が良いですよ」

「えっ? あ、あぁ、はい。……その、こういう席はなかなかないもので、慣れないですね」

「そうですかな? まあ、冒険者をしていればそうかもしれませんなぁ」

「ジジさんは冒険者の方にお知り合いが?」

「こういう商売ですからなぁ。客として訪れる者が大半ですが、中には世間話をするような相手もいましたよ」


 ジジの言葉が過去形だったこともあり、ガゼルはそれ以上話を続けることができなかった。

 彼が気を遣ったのがわかったのか、ジジは笑みを浮かべながら自ら続きを話し始めた。


「覚悟はしているのですよ。冒険者は騎士よりも危険が多く、命を落とすことも多いのだと。じゃが、だからといって関わりを持たないのも間違いだと思うのです」

「……そう言っていただけると、冒険者の一人としてはありがたいです」

「えぇ。ですから、話し掛けてくれる方に関しては、可能な限り儂も相手をしておるのです。……ですが、戻ってきた者はそう多くはない」


 小さく息を吐き出しながら、ジジはお茶に口をつける。

 ガゼルは木のコップを握りながら、そのコップをじーっと見つめていた。


「……ガゼルさんは、ナツキさんを一人にしないでくださいね」

「それは……すみません、約束はできません」

「でしょうなぁ」

「ですが、今まで以上に安全に配慮して行動することは約束します。俺もナツキのお嬢さんを一人にするつもりは毛頭ありませんから」


 コップを見つめていた視線をジジに向けて、ガゼルは力強い言葉ではっきりと口にした。

 その様子を見たジジは柔和な笑みを浮かべ、大きく頷いた。


「えぇ、えぇ。よろしくお願いいたします、ガゼルさん」

「はい」


 二人は小さくコップを打ち鳴らし、その後は世間話に花を咲かせたのだった。


 別のテーブルでは明日香、夏希、イーライが二人の様子を眺めており、コップを打ち鳴らしたところで小さく微笑んでいた。


「ジジさんとガゼルさん、上手く打ち解けられたみたいだね」

「はい! ……あぁ、本当によかったです」

「あの二人なら問題ないだろう」


 大きく息を吐き出した夏希とは違い、イーライは当然だと言わんばかりに何度も頷いていた。


「あら、イーライはどうしてそう思ったの?」

「ジジさんの性格は俺の方が知っていると思っている。人を見る目は確かだから、最初にナツキとの付き合いを許した時点でガゼルさんを認めていたんだろう」

「それじゃあ、ガゼルさんの方はどうなの?」

「ガゼルさんはSランク冒険者だからな。そもそも、Sランク冒険者になるには人となりもしっかりと冒険者ギルドに判断されてなるものだからな。素行の悪い者がなれるようなものじゃないんだ」


 Sランク冒険者になるために必要なことに人となりも入っていることを知らなかった明日香と夏希は、イーライの説明を受けて『へぇー』と呟きながら頷いていた。


「だからガゼルさんなら問題ないって思ったのね」

「あぁ。とはいえ、結局のところはお互いの気持ちが一番じゃないのか?」

「……えっ? わ、私たちですか!」


 イーライが話し終わると視線を夏希に向けたことで、彼女はやや慌てて声をあげた。


「当然だろう。ナツキはジジさんに認められなかったら、ガゼルさんを諦めるつもりだったのか?」

「諦めませんよ! 絶対に説得して、お付き合いを始めます!」

「それでもダメなら?」

「ガゼルさんについていきます!」

「だそうですよー、ガゼルさーん!」

「ふえあっ!? あ、明日香さん!!」


 明日香の声にさらに慌てた夏希だったが、彼女が視線をガゼルに向けると彼は顔を真っ赤にしてこちらを向いていた。


「き、聞こえていたんですか!?」

「……す、すまん」

「もう! 明日香さんもイーライさんも、酷いですよ!」

「いいじゃないのよ! 二人が本気で想い合っている、それが全てだよ!」

「そうだな」

「あ、明日香さんとイーライさんはどうなんですか! 愛し合っているんですよね!」


 意趣返しをしてやろうと夏希が二人に話を振ると、明日香とイーライはお互いに目が合うと、微笑みながら口を開いた。


「「もちろん!」」

「うっ! な、なんて眩しいんですか!」

「ん? 眩しいのか?」

「ほほほ。これは、二人のこともしっかりとお祝いしないといけませんなぁ」


 明日香とイーライ、夏希とガゼル。

 二組が愛し合っているこの状況を、ジジは満面の笑みを浮かべながら見つめていたのだった。

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