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第41話:それぞれの日常へ 5

 一悶着はあったものの、明日香たちは無事にダブルデートにこぎつけた。

 とはいえ、夏希の告白はすでに冒険者たちの間で大きく広がっており、街の中を歩いていると冒険者仲間にガゼルが声を掛けられる始末になってしまっている。

 このままでは落ち着いてデートができないと判断した明日香が向かった先は――


「「「……どうしてカフカの森?」」」


 そう、何故かいつもと変わらない場所へ、いつもと変わらないメンバーで足を運んだのだ。


「だって、私たちだよ? 本当は街の中をぶらぶらも考えたけどあの状況じゃ難しいし、だったらいつも通りの方が楽しめるかなって思ったのよ!」

「……そうですね、私もそう思います、明日香さん!」


 そして、夏希も明日香の案に乗っかったことでイーライとガゼルは顔を見合わせると、お互いに苦笑を浮かべて一つ頷いた。


「まあ、アスカとナツキだからな」

「まったく。本当に、活発なお嬢さん方だこと」

「ちゃんとお弁当も持ってきているんだからね!」

「おいおい、それを早く言えよ!」

「わ、私も作ったんです!」

「おぉっ! そりゃあ楽しみだなあっ! ……あー、ごほんっ!」


 すでに恋仲になったガゼルが夏希の手作りだと聞いて声をあげ、そして恥ずかしさに顔を逸らす。

 その様子に嬉しさ半分、恥ずかしさ半分の夏希が小さく笑みを浮かべる。


「よ、よーし! それじゃあまずは腹を空かせないとな! というわけでイーライ、ちょっと付き合え!」

「んなあっ! ちょっと、ガゼルさん! 今日は休みで魔獣狩りは必要ない――」

「いいから来い! ……い、今の俺には、お前が必要なんだよ!」

「……どういうことですか?」

「つべこべ言わずに来るんだよ!」


 有無を言わせない態度でイーライの腕を掴むと、ガゼルは大股でさっさと明日香たちの下を離れていった。


「……うふふ。恥ずかしいみたいね」

「そんなガゼルさんも……はぅぅ、かわいいです!」

「……か、かわいい、かな?」

「はい!」


 人にはそれぞれ趣味趣向があるかと納得し、明日香は話題を変えた。


「それにしても、本当によかったね」

「これも全部、明日香さんのおかげです。本当にありがとうございました」


 まさか気持ちを伝えていないとは思っていなかったが、それでも上手くいったのだから明日香は大きく安堵している。

 ただ、上手くいったのが自分のおかげだとはまったく思っていない。


「私は何もしていないわ。これは全部、夏希ちゃんが頑張ったからだよ」

「でも、私だけじゃあ勇気を出せずに言い出せなかったと思います。明日香さんが告白するきっかけを作ってくれたから、気持ちを伝えることができたんです!」

「そうかもしれない。でも、勇気を出したのも、自分の気持ちをしっかりとガゼルさんに伝えたのも、全部夏希ちゃんじゃない」


 そう口にした明日香は、夏希に対してニコリと微笑んだ。


「これから、楽しくなりそうだね!」

「はい!」


 明日香と夏希はこのあとも楽しい女子トークを繰り広げたのだった。


 ――一方、ガゼルとイーライはわざわざ遠くにいた魔獣をとりあえず狩ると、解体しながら相談会が始まっていた。

 内容は、女性とどうやって付き合えばいいか、である。


「俺はよう、マジで何十年も女性と付き合ってこなかったんだ」

「……はい」

「冒険者相手ならガサツでも問題はないだろう?」

「……はい」

「だけど、ナツキのお嬢さんは違うだろう。冒険者の女たちと同じ扱いをしたら、絶対に嫌われちまう」

「……そうですかねぇ?」

「絶対そうだって! ……はぁ。どうすりゃいいんだよ」


 背も高く逞しい体のガゼルが、今だけは背中を丸めて小さく見えてしまう。

 そんなSランク冒険者の姿に、イーライはなんとか自信を取り戻してほしいと口を開いた。


「……変に飾らなくてもいいんじゃないですか?」

「いや、ダメだろう! だって、俺だぞ? 親と子ほどに歳の離れたおじさんだぞ!」

「でも、そんなガゼルさんを、ナツキは好きになったんですよね? だったら、変に飾る方がマイナスになるんじゃないですか?」

「それは! ……あー、そうなのか?」

「いや、わかりませんけど」

「どっちなんだよ! お前、イケメンだからわかるだろう!」

「俺だって騎士一筋だったんですから、わかりませんよ!」


 女性陣の和やかな雰囲気とは違い、男性陣は相談の解決ができず頭を抱えている。いや、頭を抱えているのはガゼルだけなのだが。


「俺は今まで通りに接してあげるのが一番だと思いますけどね」

「で、でもよぅ」

「ナツキのことを信じるなら、絶対にその方がいいです」

「……そうか?」


 夏希の名前を出した途端に反論しなくなったガゼルを見て、イーライは内心で『素直すぎるだろう』と若干呆れていた。

 とはいえ、話がいい方向へ進みそうだと判断するとまったく顔に出すことなくニコリと笑った。


「絶対にそうです。だから、いつも通りのガゼルさんでいきましょう」

「……そ、そうだな。あぁ、助かったよ」

「それじゃあ戻りますよ」

「お、おうっ!」


 こうして男性陣の相談会は終了した。

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