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第9話:異世界での生活 4

本日二回目の更新です。

「おや? イーライじゃないか、久しぶりじゃのう」

「お久しぶりです、ジジさん」


 白く長い髪を後ろで纏めたたれ目の老人は柔和な笑みを浮かべてそう口にした。


「それに、初めてのお嬢さんもいるようじゃ」

「は、初めまして。大和明日香と言います」

「ほほほ。丁寧なお嬢さんじゃ。儂はここの店主でジジと申します」

「ジジさん。今日は中級か上級のポーションを購入したいんですが、在庫はありますか?」


 ポーションと耳にした明日香は、暇潰しに読んでいたネット小説の事を思い出していた。


「中級が五本、上級が一本じゃがあるよ」

「それじゃあ、それ全て貰います」

「いつもありがとね。全部で40万リラだよ」


 イーライが購入をあっさり決めると、彼は四枚の中銀貨をカウンターに置く。

 マグノリア王国では平民の一般的な月収が30万リラだと聞いていた明日香は、ポーションの値段に驚いていた。


「……ポ、ポーションって、こんなに高いんだね」

「そうか? 命が助かる値段だと考えれば安いもんだと思うけどな」

「ほほほ。平民からすると結構な値段になりますが、これは中級や上級だからじゃよ」

「中級や上級って事は、下級ポーションっていうのもあるんですか?」

「あるよ。下級ポーションが1万リラ、中級が5万リラで上級が15万リラじゃ」


 下級ポーションなら切り傷などを癒す事ができ、中級だと傷に加えて体力も回復し、上級ともなれば折れた骨や内臓の損傷なども癒す事ができる。

 特に上級ポーションは調合自体が難しく、イーライはジジの道具屋によく足を運んでいた。


「へぇー……なんだか面白そうですね」

「おや? お嬢さんは調合に興味があるのかい?」

「えっと……実は今、仕事を探していまして、イーライに色々と案内してもらっていたんです」

「そうだったのか。……なら、高い給料は約束できないけど、うちで雇う事ならできるよ?」

「えっ! ほ、本当ですか!」


 まさかの提案に明日香は身を乗り出して驚きの声をあげた。


「ほほほ。イーライが連れてきたお嬢さんだ、信用できる人なのだろう。それに、儂ももう年だからのう、若い人に来てもらえるならありがたいのじゃよ」

「……あの、でしたら、調合についても教えてもらえたりしますか? む、無理ならいいんです! 秘伝とかありそうですし!」


 教えられない事は教えなくてもいいとはっきり口にした明日香だったが、ジジは微笑みながら首を横に振った。


「そんなものはないから気にするでない。調合についてもちゃんと教えてあげられるよ」

「……本当に、いいんですか?」

「もちろんじゃ。それに、ポーションなどの調合品は師弟制度でのう、師匠が認めたという証がなければ作れたとしても販売できないからのう」

「ほほう、国家資格みたいなものが必要なんですね」


 一人でうんうんと頷きながら納得していると、さらにジジが言葉を続ける。


「なんなら、住み込みでも構わないよ。部屋は余っているからのう」


 ジジは冗談のつもりで口にした発言だった。それはそうだろう、相手は年頃の女性なのだ。

 だが、明日香は住み込みという言葉を真に受けて興奮していた。


「住み込みですか! 良いんですか! 本当にお願いしたいです!」

「アスカ! お前、良く知りもしない相手の家に住み込みとか、少しは考えろよ!」

「でもイーライが信用している人なんでしょ? だったら大丈夫でしょ!」

「お! ……お前なぁ。少しは疑う事をしろよなぁ」


 イーライもジジが悪事を働くとは思っていないが、今後の明日香を思っての言葉でもある。

 しかし、明日香にはジジが彼女に抱く好感度が見えていた。


(ジジさんは好感度20で最初のイーライと同じだし、これなら信用しても大丈夫だよね)


 イーライの知らない情報を持っている明日香としては当然の決定だった。


「ほほほ。儂は構わんが、お嬢さんのご両親はどうなんだい?」

「あー……それなんですけど……」


 ジジの事は信用できる。だが、自分は異世界から召喚されたと伝えていいのかは別の話だ。

 明日香は横目でイーライを見るが、彼もどう説明するべきか迷っているようだった。


「……ほほほ。何やら訳ありのようじゃな」

「うぅぅ……ダメ、ですよね?」

「構わんよ」

「そうですよね、構いませんよね。また別のところを……? え、構わん、の?」

「構わんよ。大きな都市に集まる人というのは、訳ありな人間は多いからのう」


 まさかの構わん発言に明日香はしばらく固まっていたが、ゆっくりとイーライへ顔を向ける。

 そのイーライも驚いているのか何度も瞬きを繰り返していた。


「……よ、よろしいのですか、ジジさん?」

「もちろんじゃよ。むしろ、アスカさんもそれでよろしいのですかな?」

「わ、私は構いません! よろしくお願いします!」

「あっ! 少しだけ待ってくださいね、ジジさん! アスカ、ちょっと来い!」

「え? うわあっ!」


 明日香の中ではすでに決定事項だったが、イーライは慌てた様子で明日香の腕を取って店内の隅っこへ移動した。


「ど、どうしたんですか?」

「どうしたも何も、まずは殿下とバーグマン様に確認をするべきだろうが!」

「あー……忘れてた!」


 身振り手振りを加えながら話をする二人の姿をジジは微笑みながら見ている。

 しばらく眺めていると二人が振り返り、苦笑いを浮かべながら同時に口を開いた。


「「また明日伺ってもいいですか!」」

「ほほほ。構わんよ」

「「ありがとうございます!」」


 二人して何度も頭を下げながら店を後にすると、その足で王城へと戻っていったのだった。

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