乙女ゲームのヒロインは恋愛に興味なくなったので、無かった事にしました
「エリザベス・ミライジュ!貴様と婚約破棄をする!」
ああ、
「な、何故ですか!?」
「貴様が俺の愛するアイリスに犯罪紛いの嫌がらせをした!」
何て不幸なの?
「そ、そんな!わたくしはただ、アンドリュー様の為に!」
「はっ!戯言を!お前に耳を傾ける必要もない!」
絶望した顔。
「・・・・アンドリュー様」
「何だ?俺の愛するアイリス」
ニッコリと微笑んだ。
「もう、愛想を尽くしても良いでしょうか?」
「は?」
絶句した顔。
もうすぐ―――もうすぐで完成する。
「私、もう嫌です。我慢がなりません」
歩く。
終わった―――完成した。これで、もう一度――――
だって、彼女はなにもしてないもの。
私の名前はアイリス・アルバート。
一風変わったプラチナブロンドの紫の瞳をした美しい容姿。
もしかすると“可愛らしい”の間違いかもしれない。
だが、私自身は全く違う。
私には前世の記憶を持つ、光の魔力保持者である。
光の魔力よりも先に、前世の記憶を説明した方がいいだろう。
最初に前世の記憶を思い出したのは、十四歳の時だった。
ます最初に私はどこにでもいる平民で父は小さい頃に他界してしまったが、優しい母と幸せな生活を送っていた。
だが、ある日突然、強い頭痛に襲われ、しばらく寝込んだ。
そしてやっと頭痛がなおったと思えば、少し怪我をして、傷が治る。
当然、そんなのはすぐに噂に広まり、私の家は遠巻きにされる。
そんな日々が続いて私は国の魔法省機関に正式な属性鑑定をしてもらい私は魔法学園の特待生として通うことになった。
あの強い頭痛は属性の覚醒の副作用(?)だったらしい。
その直後、私は隣にいる、自分の婚約者に婚約破棄を申し付けた、アンドリュー・デックス。
この人と初めて対面した際に私はまた強い頭痛に襲われ、完全に思い出した。
私の前世はどこにでもいる女子高生だった。
ただ平凡な普通の生活を送った女子高生。
そんな人生の私にも、人生の楽しみと言う物があった。
それは恋愛ジャンルの乙女ゲーム。
四人の攻略対象と恋を育むどこにでもあるゲーム。
だけど私は亡くなった。
ただ普通に散歩していた私に突然、恐ろしい頭痛が襲い、倒れた。そのまま私は意識が無くなり、そのまま―――――
そして気付けはさっき説明した通りの有り様。
私はその乙女ゲームのヒロインに転生していたのだ。
最初こそ驚いた。そして、ゲーム通りの虐めに合う。
そのままゲーム通りに進み、いまに至る。
そして、婚約破棄を申し付けられた茶色の髪に水色の瞳で、少しだけつり上がった目は悪役らしさを引き上げる。
だけど、性格は全く違う。
私にマナーの注意やアドバイスをしてくれたり、とても親切な性格。それはゲームとは全く違った。
それは、この乙女ゲームの世界のヒロインに転生し体験して分かったこと。
そしていま、やっと完成したのだ。
私はヒロインに転生してやっと気が付いた。
ここは私の場所では無いと。
私は恋愛ゲーム等が好きだから、プレイしていたが、いざ転生してみれば、私の予想を大きく上回る私の一番の推しだったアンドリューはクズorクズの人。
もはやこの恋愛劇に興味はない。
だから私は自分の力を駆使して、逆行の魔法を完成させた。
逆行先は光の魔力が発現する四年前である、十歳。
―――逆行したら何がしたい?
それは決まっている。
「アンドリュー様、今までお世話になりました。私はもう、行きますね」
最後の挨拶、私は目一杯の挨拶をして、去っていった。
―――逆行したら何がしたい?
それは―――――私の幸せな平民生活!
先の方から真っ白な空間が広がる。
私は爽やかな笑みを浮かべて目を瞑る。
***^^^***^^^***
目覚めれば、緑一杯に広がる草原。
私の肩には木で編んだ草が沢山入った薬草。
「私は―――」
自分で逆行魔法を展開した癖に呆然としていた。
私、本当に戻れたのね…………。
これで、やり直しの幸せな平民生活を送る。
私の光魔法は隠そう。
全て隠した私に残るものは、平民と言う肩書きのみ。
私、行こう。
幸せな、平民生活を。
乙女ゲームと言う設定など捨てて、私の幸せ生活を送る。
ここはもう、“乙女ゲーム”と言う世界では無い。
ここはもう、”現実世界”で、私の思う幸せな世界にして、私の幸せな平民生活を、送ろう!