雨降り、なりふり構わず
屍異奴を倒し村の中心部に戻ってきた2人は星都へ向かうための移動手段である獣車を借りるための手続きをしていた。
馬車に似た形で荷物や人を運搬する獣車を引く獣は人のようである。いわゆる獣人、亜人種である
トウキ「人が引いているのか…」
シン「彼ら亜人種は動物の姿から進化した種らしい。同じ言語も話せるし、意思疎通もはかれるからなおさら人に見えるよね…」
受付「申し訳ございません。ただ今ほとんどの獣車が出払っておりまして、使える獣車はあるにはあるんですが…」
シン「ええ、大丈夫ですよ」
受付「なにぶん初めて獣車を引く者でして…目的地の星都までの料金から1割引きさせていただきますので銀貨8枚でならお貸しできますが?」
シン「お、8枚…ふーん…割引いてくれてありがとう!じゃあ…はい銀貨8枚!」
会計を済ませ獣車に向かうとそこには右手に枷をつけられている痩せ細った亜人の少女がいた
少女「あ…お客さん…」
トウキ「え?!君が引くの?!」
少女「は、はい…が、がんばります」
シン「いや、さすがに厳しいだろう…ちょっと受付に話して…」
少女「待って!大丈夫!大丈夫ですから!」
受付へ向かおうとするシンを必死で止めようとする少女は妙に必死だった
必死の訴えに折れたのかシンは獣車に乗り込んだ
しかし獣車は少ししか動かない。少女のか細い体で必死に引こうとするが、明らかに歩いた方が速いくらいだ
雲行きも怪しくなり、雨も降り始めた
少女「うっ…ううう…」
そんな姿を受付係は嫌そうな目で睨み、周囲もクスクスと笑い声が聞こえる
トウキ「…もういいよ!シン、獣車を借りるのはやめよう!この子が可哀想だよ!」
シン「俺たちは客だ。払った銀貨分は働いてもらわないと」
トウキ「そんな!シン!ひどいよ!」
シン「いいからちょっと黙ってろ。」
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村を出てしばらくするとシンは獣車を止めるよう伝えた
少女「お客さん…?」
トウキ「働けって言ったり止めろって言ったり今度はなにさ!?」
シン「2人とも、荷物を持って少し離れてくれ」
少女とトウキを獣車から離れさせるとシンは石の剣を鉛色の雨空に向けて構えた
すると雷が石の剣…シンめがけて落ちてきた
トウキ「落雷?!シン!大丈夫…ってあれ?剣が雷を…吸収した…?」
シン「危ないから目、閉じてなね!…ふん!」
落雷を纏った剣の一振りが獣車を破壊してしまう。周囲には雷光と轟音が響き渡る
トウキ「…?!?」
シン「…さ、行こうか」
呆然とする2人を背にシンは歩き始めるのであった
シン「どうしたぁ!2人とも〜!雨宿りできる場所を探そうよ〜!」
トウキ「シン、ちょっ…ちょっと待って!」
亜人の少女の手を取りシンの元へ走るトウキ。そして腕を掴み何故獣車を破壊したのか問いかける
シン「ん?壊したなんてひどい言われようだなぁ〜!
アレは雷が偶然、たまたま、運悪く!落っこちてお釈迦になっちゃったんじゃないか!」
トウキ「えぇ〜…さすがに無理があるんじゃ…」
シン「なに、どうってことないさ。
それに引くモノがないんじゃ彼女には負担も何も無いだろう?」
トウキ「そりゃあそうだけど…弁償とか…しないとじゃない?」
シン「故意的に破壊したんならそりゃしなきゃだろうけど…
アレは偶然、たまたま、運悪く!雷が落っこちちゃったからねぇ…事故だよ事故!ハッハッハ!」
少女「あ…!あの!ありがとう…ございます…」
シン「…いや、礼には及ばないよ。大変だったね。今まで。」
シンの言葉を聞いた少女はその瞬間までずっと溜め込んでいたのであろう大粒の涙を零しながらシンへ抱きつく
シンもそれを優しく抱き返すのであった
少女の目の下まで伸びた前髪はさらに濡れていくのであった
トウキ「…あのぉ…僕だけ状況に追いつけてないのですが…ご説明頂けますでしょうか…?」
シン「…あの獣車屋は奴隷商の末端だ。彼女の腕についた枷が何よりの証拠さ。そうだね?」
少女はブンブンと首を縦に振った
少女「…みんな、無理矢理連れてこられた。大人はみんな目の前で殺されて、子供だけがここに…。みんな大きいから獣車引けるけど、私、まだ小さいから引く力無くて…」
トウキ「そんな…なんてひどい…」
シン「それに星都までの運賃もぼったくられてたよ。アイツら貴重な俺の銀貨を…」
トウキ「…一応聞くけど、ぼったくられたから獣車壊したんじゃないよね?」
シン「…そ、そんなの当たり前じゃないか!当然この子の為さ!」
トウキ「偶然、たまたま、運悪く…じゃないの?」
シン「う…トウキぃ…お前最近いっちょ前に口が動くようになったじゃねぇかよ!」
シンがトウキに飛びかかり戯れ合うと泣き止んだ少女が口を開く
少女「シンお姉ちゃんってトウキお兄ちゃんのこと好きなんだね!」
シン「?!」
騒がしかった2人は静かになり雨音だけが周囲にこだまする
シン「わ…わわわわたしはべつに…!ていうか俺がお姉ちゃん?!俺は…」
少女「シンお姉ちゃん、女の子なのに男の子みたいだよお?」
トウキ「ハハハ!一本取られたね!さ!雨宿りできる場所を探そう!」
意図的なハプニングはあったものの、一行は雨を凌ぐために歩き始めた。
雨は勢いを増し、雷も多く鳴り続いていた…
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