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目覚める鮫、蜘蛛の糸と蜘蛛の意図

トウキ「シン!待ってて!今助ける!」


シン「頼むよ!この糸、固いし、身動きが取れなくて…」


屍異奴=アラクネの放った糸は粘着性が強く強靭なものであった。人の腕力じゃ切るのもひと苦労するようだ

アラクネ(母)はその糸を放ちトウキとグレイをも捕らえようとしていた


トウキ「くっそう!これじゃ近づけてない!」


トウキは剣で糸を防ぐ


グレイ「…お前、その剣…まさかあの村の…チッ!今日はなんて面倒な日だっ!」


銃を握るグレイの拳が薄ら明るく輝く

まるで炎を灯したかのようだ


グレイ「火の力をを弾の形に変えて圧縮…装填…火の力で一気に…放つッ!!」


引き金を引くと弾が放たれアラクネ(母)の脚を射抜いた


母「ギャアアア!!」


脚から血を流して悶え苦しむ様子にアラクネ(子)が掛け寄る


子「おカァさん!」


グレイ「まとめて無に帰せ。人ならざる者達よ!」


グレイが再び引き金を引く瞬間


子「お父サァァァァン!!」


アラクネ(父)が母と子を糸で絡めとった


父「家族ヲ返シテモラウゾ」


グレイ「…『父親役』か…。面倒な」


父「勝手ニアガリコンデイキナリ何ヲスルンダ!我々ハ静カニ暮ラシタイダケナノニ!」


グレイ「だからって人を喰っていい理由にはならないぜ。そもそもお前ら、人間としてもう生きてねえし」


トウキ「え?でも今目の前に…」


グレイ「いいか?!化け物を生み出した今の奴らに残っているのは生み出されるキッカケとなった思念だけだ!

おそらく奴らを生み出した元の家族はとっくにエサの糸に変えられて食われて今頃腹の中だろうよ!

ヤツらは今、家族『だった』記憶だけを頼りに共存し合ってる別々の化け物にすぎないんだよ!」


父「家族ハ一緒ニ…イナクチャイケナイ…」


母「家族ハ一緒ニ…イナクチャイケナイ…」


子「かゾク…は…一緒ニ…いナクちゃいけナイ!」


3体が共鳴し合うように口を揃えると泥のようになり家をも巻き込みながら1つに融合を始めた


シン「…またドロニンギョウ…?!こんなところにも複数で…クソっこんな糸…うわあああ!?」


アラクネ「オオオオオオ!」


家とも融合を果たしたアラクネは咆哮をあげる

家の壁に磔にされていたシンも巻き込まれてしまいアラクネ背中の一部に取り込まれつつある


トウキ「シン!!…どうしたらいいんだ!?どうしたら助けられるんだ…?!」


剣「俺を使え」


剣を強く握った瞬間トウキの視界は暗くなり、頭の中に声が響く…暗い空間の中で剣がこちらを向きながら話しかけてきた


トウキ「さっきの声…やっぱり君だったんだね。話しかけてきたのは。」


剣「俺を使え。ヤツを斬り裂いてやるしか方法はねぇ」


トウキ「…わかった。やろう!」


目を開き剣を構えたトウキ。握られた剣先は獲物を喰らう鮫のように開く


グレイ「やっぱりあの剣…人斬りの…いや、人喰いの剣か!」


トウキ「うおおおお!」


剣で斬りかかろうとしたその時


剣「ようやくだ!待ってたぜ!お前が俺を求めるこの瞬間を!!」


トウキ「え?!」


トウキの振りかぶった剣は地をえぐるように一回転し、自身を握っているトウキのことはお構いなしにアラクネの腹部目掛けて突進する


トウキ「なんだ?!剣が勝手に!?」


剣は腹部を噛みちぎりながら進んでいく。赤黒い液体がトウキに掛かりながらも気にせず貪り始めた

その勢いに負け、トウキは剣を手放してしまう


トウキ「お、おい!…って…あれ?ち、力が…入らない?!」


突然トウキの体は動けなくなり、地に膝をつけてしまった。

そして頭上からは剣に喰い散らかされ糸から戻った人間の血肉が雨のように降りだす。

アラクネは体を抉られる苦しみに悶えながら脚をバタつかせている。その脚を1本ずつグレイは銃で撃ち抜いていくのであった


トウキ「いったい…どうなってんだ?剣が勝手に…」


グレイ「邪魔だ!何持ってかれてんだ!能無しは下がってろ!」


トウキ「くっ…持ってかれるって何を…?」


グレイ「体ン中の力、アイツに取られたろ!?対話までしてるのに、どうなってんだ?!」


全ての脚を撃たれたアラクネは地に伏せた。

シンを磔にしたままトウキの手放した剣に体を貪られ続けている


トウキ「で、でもシンを!助けなきゃ!」


グレイ「フラフラじゃねえか!照準がズレるから下がってろって!!」


トウキ「うるさい!このくらい…平気だよ!」


グレイ「ちっ…くそっ!」


グレイは舌打ちをしながら構えた銃に力を込める。すると銃は先程以上に熱気を発し始める


グレイ「コレはまだ撃ち慣れてないのに…くっそぅ…あっちぃ…なッ!!赤熱弾光(せきねつだんこう)・レーザーバレット!」


引き金を引くと赤い光弾がまっすぐシンを縛る糸目掛けて一直線に向かっていった


シン「?!糸が焼け溶けていく?!」


グレイ「早く離れろ!一緒に食いちぎられるぞ?!」


トウキ「あ、ありがとう!シン!さあ早く手を!」


トウキはアラクネの体を駆け上がってシンの元へ向かっていた

2人が手を取ろうとした瞬間にアラクネの体を食いちぎった剣が姿を見せた


剣「クアァァァ!」


シン「トウキ!離れるんだ!このままじゃ2人とも…」


トウキ「嫌だ!シンは僕が…守るッ!」


次の瞬間、剣はトウキの腕に噛みつくと、再びトウキの意識は剣と共に暗い空間にいた


トウキ「またここか…」


剣「おいおい、なんで邪魔するんだ?まだまだ食い足りないんだよォ!」


トウキ「君は一体なんなんだ?!」


剣「俺ァ斬鮫(キリサメ)!血肉を貪る飢えた鮫よォ!お前も食ってやる…ん?!」


剣=斬鮫がトウキに襲い掛かろうとした瞬間、暗い空間に冷気が漂い始める


トウキ「なんだこの冷気…あの雪山に…この剣を見つけた洞窟と似た感じがする…」


斬鮫「チッ…またテメェか…俺ン中に勝手に居座りやがって…。

いい加減出ていきやがれェェ!」


斬鮫は激昂するが、動きが鈍くなっていく。

やがて凍りつくように静かに冷たくなっていった


トウキ「こ、今度は一体なんなんだ…?」


?「…なさい。」


トウキ「?」


?「…戻り…な…い…ま…だ…こに…来べ…きじゃ…ない」


どこからか声が聞こえ始めるとトウキの意識は薄れていった…

シン「…トウキ!トウキ!」


目を覚ますとトウキはシンの隣にいた

その横には動かなくなった斬鮫が地に刺さっていた


斬鮫に噛みつかれた腕にはシンの持つ塗り薬が塗られたのかズキズキと鋭く刺すような痛みが残っていた


グレイ「ったく悪運が強いヤツだ。

あの勢いで襲ってきた人斬り剣を片手で止めちまうんだからな」


トウキ「え?いや、斬鮫を止めたのは僕じゃなくて冷たい風が急に…」


グレイ「冷たい風?何を言っているんだ?

それにしても斬鮫…それがこの人斬り剣の名前か」


シン「なぁ、助けてくれた礼ついでに聞きたいんだけど、グレイ、君は何故あの家のことを知っていたんだい?」


グレイ「詳しいことは話せない。強いて言うなら俺はある組織に属していて、そこの伝令に従った…それだけだ」


シン「結構話してくれた気がするけど…まぁいいか!ちなみにトウキの持つ剣のことについてもその組織の情報か?」


グレイ「いや、それについてはここに来る前に寄った村で聞いた情報だ」


シン「トウキのいた村…。」


グレイ「ひどい村だったな。屍異奴に食い尽くされた奴らは互いに殺し合い、ほとんどが自滅していた。」


トウキ「そんな…」


グレイ「村長の家に書物が残っていたからソレをちょっとだけ見たんだが、どうやらあの剣…人斬りの剣と言われていてな…過去にあった大戦で使われていた物らしい。」


トウキ「斬鮫も言ってた。血肉を貪る飢えた鮫だって…。」


グレイ「お前、ソレと対話を果たしていながら何であんなに力を奪われたんだ?」


トウキ「僕自身もよくわからないんだ。というか斬鮫があんなになっちゃった力って一体なんなんだい…?」


グレイ「…詳しくは俺もよく分からない。だが、強いて言うなら例えば俺の銃が放つ弾はまさにその力を弾丸状に圧縮して放っているんだ。

俺たちの持つ精神エネルギー…マナ。

それをヤツは根こそぎ奪ってヤツ自身が動くためのエネルギーとして利用したんだろう」


アラクネ「…いつマデそう話しテいルつもりダ?」


シン「コイツ、まだ生きて…?!」


アラクネ「…生きテなんかナイさ。我々家族ハとっクニ死んデイる。」


トウキ「君たちは、何故そこまで…?」


アラクネ「家族ハ一緒ニ…いなくてはならナイ…。妻モ…病に侵さレタ息子も家モ…私が守ル…

そう思っていタ。私のカゾクは…!」


話を遮るようにグレイはアラクネの眉間に弾丸を放った


トウキ「グレイ?!」


グレイ「…屍異奴の言葉にいちいち耳を貸していては時間の無駄だ。これだけはよく分かることだ。

奴らは人の道を外れた忌むべき存在。さっさと消すのが生きている俺たちヒトにできる唯一のことだ」


トウキ「確かにそうかもしれない。僕だって人を苦しめる屍異奴はいち早く倒すべきだと思っているけど…

今は、ヒトだったじゃないか!思いを語る人の心がまだ残っていたんじゃ…」


グレイ「そうやって耳を傾けている隙を突かれて命を落とした奴を俺は何人も見てきた!

ヤツらはニンゲンの持つ思いから生まれる化け物…。人の皮を被った悪魔に付け入る隙を与えればこちらが殺られるだけだ!

…さて、目的も達せられたし俺はこの村を出る。お前達も早く退散しねぇと自警団にしょっ引かれるぞ?」


アラクネが崩れていく様を見届けたグレイは再び建物の屋根まで飛び、どこかへ消えていった…


トウキ「シン…どう思う?」


シン「難しいね。彼の言っていることもトウキの言っていたことも間違っていないと思う。大事なのは自分がどうしたいかだと思うよ。さ、野次馬も集まってきてるし、早くここから離れよう!」


トウキ「う、うん…」


胸の奥に霧が立ち込めるような気分になりながらもトウキ達もその場を後にするのであった。

お読み頂きありがとうございました。


もしも

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皆さんに見て頂けること自体が嬉しいことですし、これからも貴重なお時間を共に過ごせるよう頑張って書いていければと思いますので応援よろしくお願いします_(:3 」∠)_

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