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Dialogue Engage-ダイアローグエンゲージ-   作者: ZoRa
序章〜旅立つ前の立ち上がり〜
3/49

友と雪道、共に行く道

少年A「…あのヤロー…帰って来やがった」


麓の村にトウキとシンは帰ってきた。

しかし彼等を目にする村の人々は嫌悪するような視線を浴びせていた


シン「なぁ、いつもあんな感じなのか?」


トウキ「え?うん。でも今日は背中に背負った剣もあるから…

きっといつもの3割増しって感じかな?」


少年C「おい、さっきはよくもやってくれたなよそ者!」


少年Cはシンの前に立ち塞がった

よく見ると先ほどの少年達は皆顔に怪我をしていた


シン「やあ!やあ!さっきの…あれ、その様子だとまだ懲りてないみたいだね?」


少年D「ふざけんな!

いきなり殴ってきやがったのはそっちだろ?!野蛮なソトのニンゲンめ!」


そうだそうだと言わんばかりに周りの大人達も農具や刃物を手に持って警戒している


シン「君たちのやっていることがあんまりにも酷いもんだからつい…ね。ゴメンよ。

そういえばお詫びにあげた塗り薬は塗ったかい?

アレならすぐ痛みも引くと思うんだが…?」


少年B「お前みたいな野蛮なソト族が持ってくる毒なんて誰が好き好んで塗るもんか!」


シン「ったく話にならないな。まぁいいや。それよりも見ろよ、コレ。

彼…トウキは約束通り雪山から剣を持ってきたぞ?

君たちも彼と友達になるっていう約束も果たすべきじゃないかな?」


少年D「バカか!殴られる前にも言ったが俺達はただ、『持って来られたら考えてやってもいい』って言っただけだ!

考えたけど、やっぱ嫌だね!こんなソトから来たヤツと誰が友達になんてなるもんか!」


老人「なに…?剣じゃと…?お前!雪山の人斬り剣を村に持ってきたのか!?」


男性「コイツ!きっとソレで俺たちを斬り殺すつもりだ!」


女性「ヒィィ!あんな大きい包丁で?!やっぱりソトからきたニンゲンは野蛮だわ!」


老婆「ワシャ、コヤツが来てからずっといつかはこうなると思っておったんじゃわい!いい加減ワシらの村から出て行けィ!」


一同「よそ者は出て行け!出て行け!」


トウキとシンに石が投げつけられる


シン「いい加減にしろよ…お前らっ…?!?」


シンが反撃しようとした瞬間、トウキがシンを庇うように前に立った

そんな様子もお構い無しにトウキに石が投げ続けられる


シン「トウキ、なんで…?!」


トウキ「シン、いいんだよ。剣を持って来てもこうなるような気はしてた…から。それに僕、体だけは…丈夫、だからさ…ッ!」


額から血が流れ始める


大剣「おいおいボウズ、やっちまおうぜ?お前が俺を構えてさえくれれば

俺はアイツらの臓物を1人残らず腹から引き千切って食い散らかせるぜ?」


トウキ「ダメ…だっ。そんなこと…しちゃ…いけない」


大剣「ケッ…せっかく暴れられると思ったのにこれじゃ気殺しもいいところだぜ…」


シン「もういい!トウキ、どけっ!コイツら、一発痛い目みさせないと収まらない!どけ!どけってば!どけえええええ!」


その時、背後にそびえる雪山から物凄い勢いで雪が雪崩を起こして村に近づいて来た


轟音と共に地響きが周囲を包み込む


老人「山の怒りだ…」


老婆「山の神さんが剣を返せと言っておる…」


男性A「よそ者が…俺たちの村に来たばっかりに…」


男性B「やっぱりよそ者と関わったから祟りが起こったんだ…」


シン「違う!アレはただの雪崩だ!雪が溶けて雪崩を起こしているだけだ!」


女性「今まで吹雪なんて止まなかったのに、アンタが来てからおかしくなったんじゃない!!」


シン「!?」


男性C「そうだ!やっぱりソトから来たヤツらの仕業だ!」


男性B「嫌だ…嫌だ!俺は…俺はまだ死にたくないィィィ!!」


村の人々は声高らかに死にたくない、死にたくないとわがままに叫び泣き喚く。

彼等の影は次第に黒く揺れ始め、影から怪しげな黒い異形の者が沼から這い出るように姿を見せ始める


シン「屍異奴…。」


屍異奴(シイド)…人間の欲や生命に対する執着に反応する魔の存在。

黒い泥を被った人のような姿こそしてはいるが、奴らに感情や意思はなくただただ貪欲な思いに寄せられる存在。


影より湧き出た屍異奴達は一斉に雪崩れに向かって飛んでいった


屍異奴「イヤダ…イヤダ…ソトのニんゲん、イヤダイヤダ死ニたく…ナい…」


雪崩に巻き込まれていくように見えたが、

次第に雪は黒く染まり、周りの雪も吸収しながら塊と化していく…。徐々に巨大な黒い雪だるまのような姿へ変貌していった

屍異奴=スノウマンの誕生である


スノウマン「イヤダ…イヤダッ!」


村の建物を雪が固まった堅牢な腕で叩き潰す。村人達は恐れ慄き、四方八方へ逃げ惑う


トウキ「これは一体…」


シン「コレが屍異奴ってヤツさ。ヤツらにもいくつかの種類があってさ、このタイプは仮にだけどドロニンギョウって呼んでいる。

ヤツらは長い間、人間の思いをエサとして吸い続けるんだ。やがてヒトの影から姿を現して自身のカタチも変えて動くタイプだが…。

こんなに集団で一気に合体するのは初めて見たな…」


トウキ「あんなの、どうしろっていうんだよ…」


シン「倒すしかないさ。皮肉なことにヤツらは自身のエサとしていた村のヤツらを認識できていない。

むしろヤツらの思いが混ざりすぎて屍異奴自体も動きや形が安定していない。

それに屍異奴は俺の手で根絶やしにしてやる…!」


トウキ「でも、あんな大きいの、踏まれたらぺちゃんこに…」


シン「トウキ、俺…わたしはコイツらに負けない為に旅をしながら色んな場所で鍛え、戦ってきたんだ。

全ては奴らを根絶やしにする力をつける為に。だから今は見ていて欲しい。

わたしの…戦いを!」


そう言うとシンは背負っていた石の剣を手に持った


トウキ「それ、ただの石じゃないか!それじゃあ相手は斬れないよ!」


シン「まぁ見ててって。…初動(しょどう)帯電(たいでん)!」


掛け声と共にシンから電気が迸り、石の剣はその電気を纏うように輝き始めた。


シン「行くぞ…電切(でんきり)!」


スノウマンの振り下ろされる腕をシンの電気を纏った剣が受け止めた。そしてそのまま腕を斬り落とす。


シン「まだまだァァァァ!」


そのまま片足を斬り裂く。

バランスを崩したスノウマンは建物を潰しながら自身も地に伏せる


シン「うおおおおおおおお!」


背に乗り剣を突き刺したシンはそのままスノウマンの頭頂部まで一気に駆け上がる。

頭頂部に到達するとスノウマンは真っ二つに両断された。


シン「まだだ!帯流電(たいりゅうでん)!」


剣が纏った電気がスノウマンの身体に流れ始める。

あたり一面がまるで朝日を浴びたかように眩くなると逃げ回る村人達はそれを見て冷静さを取り戻し始める。


やがて雪でできたスノウマンの体は溶け、屍異奴は沈黙するのであった

屍異奴は土くれのようになっていき、崩れ去っていく。灰のように風に乗り散って行く様をシンはどこか虚しい表情で見つめていた


トウキ「シン…?大丈夫?」


シン「ああ…大丈夫さ。トウキもケガはないかい?」


シンは差し出されたトウキの手をとったその瞬間、2人の脳裏にビジョンが映し出された

それは遠い昔、8つの首を持つ蛇が戦っている瞬間であった。


シン「なんだコレは…?!」


トウキ「…オロチ?」


シン「オロチだって?!?それって数ある伝承の中でも最も古いおとぎ話に出て来るっていう八ツ(やつくび)のオロチのことか?!」


トウキ「うん…今、この剣が、そう言った気がしたんだ…。ねぇオロチって何なんだい?…ねぇ…ねぇ!」


1つ目の首が斬り落としたのと同時にそのビジョンも途切れてしまった。


トウキ「…今のって…?」


シン「何かの記憶、のようだったね。でも…なぜ2人で同じ光景を見たんだろう…?」


トウキ「…わからない。でも、今はそれよりも…」


戦いの跡を見つめる村人達。その鋭い視線は先ほどよりも強くなっていた。


シン「…トウキ、行こう」


トウキ「で、でも、村の建物を一緒に直さないと…」


シン「無駄だよ。見てみな…あの目を。アレは俺たちに向けられた殺意さ。

この村はとっくに屍異奴によって食い尽くされていたんだ。ここまで酷いのは正直初めて見たけど、

ヤツらはヒトの思いを喰う化け物。喰い尽くされたら残った人間はいわば食べ残し。おそらくヤツらを生み出すきっかけとなった“よそ者を排除したい”という思いを持ち続けることでしか自分を保てなくなってしまっている。」


トウキ「そんな…どうにか助ける方法はないの?!」


シン「俺たちがここを去れば彼らの心も平静を取り戻せると思うよ。

でないと第2第3の屍異奴を生み出し続けて彼等もいつかは身を滅ぼしてしまうだろうね。」


トウキ「…僕がここを離れれば、彼等は助かるんだね?」


シン「おそらくな。ここに居続けるよりはその確率は高い。」


トウキ「わかった。少しでもみんなが助かるのなら…僕はこの村を出ていくよ。

だけど、ちょっとだけ…時間が欲しい。

…いいかな?」


シン「ん?」



トウキの住む村は滅多に人が入って来られるような地ではない。だがトウキは立て看板を作ってそれを村の入り口から離れた獣道に突き刺した。

[この先 生き止まり]と記して


シン「生き止まり…か。なかなか皮肉めいた事を書きやがる。」


トウキ「…シン。1つお願いがあるんだ」


シン「ん?」


トウキ「僕をシンの旅に連れて行ってほしい。雪山で君に会ってから僕は村だけが居場所じゃないって思えたんだ。

僕、世界をもっと見てみたい!

それにこの村の人達みたいに屍異奴に苦しめられている人が他にもいるのなら…助けたい。その為にも、強くなりたいんだ!」


シン「…そっか!よし!だったらついてこい!実は俺も雪山登ってる時からそうするつもりだったし!」


トウキ「え?じゃあシンが雪山で言ってたここにしかないものって…剣じゃなくて…僕?」


シン「…そう。…って何言わせんだ!ほら、さっさと行くよ!置いてくぞ!」


トウキ「あ!待って!」


トウキとシン、こうして2人は共に旅をすることとなった。進んだ道には2人だけの足跡が残されていくのであった…

お読み頂きありがとうございました。


もしも

・面白い

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皆さんに見て頂けること自体が嬉しいことですし、これからも貴重なお時間を共に過ごせるよう頑張って書いていければと思いますので応援よろしくお願いします_(:3 」∠)_

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