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Dialogue Engage-ダイアローグエンゲージ-   作者: ZoRa
序章〜旅立つ前の立ち上がり〜
2/49

だんだん、暖。

吹雪の当たらない洞穴を見つけた2人は焚き火を前に暖をとっていた。


シン「…それにしてもあの寒さ、尋常じゃないぞ…。トウキ、お前そんな薄着なのに寒さとか感じないの?!」


トウキ「え…ええ。僕、何故だか体だけは妙に丈夫で…。だから痛みとかあまり感じなくて。」


シン「…」


トウキの服装は肌着のように薄くてボロい布切れを着ているだけであった。さらに腕や足には石を当てられたような痕や切り傷が目立つ。


トウキ「あの…シンさん…シンさんは今までどんなところを旅してきたんですか?」


シン「あー、そんな よそよそしい話し方しないで!ほら、俺のことはシンって呼んで!もっと肩の力抜いて楽に喋ろうぜ!」


トウキ「え…あ、ごめん…なさい…シンさ…シン。これ…でいいかな?」


シン「うん!上出来!で、何だっけ?」


トウキ「…ど、どんなところ…旅…してきたのかな…って。」


シン「ああ、そうだった!旅ね!そうさね…。俺さ、昔話とか伝承とかを調べててさ!ここより南の方から来たんだ!色んなところを見てきたよ〜。大きな虫が出る村や、羽の生えたネズミがわんさか出る街とか!

どれもなかなか見られないものばかりだったなぁ」


トウキ「へぇ…!」


シン「でも、1番調べたいのは黒い影人について。」


トウキ「くろい…かげびと?」


シン「聞いたことくらいあるんじゃないかな?人や動物に同化して怪物に変貌させる屍異奴(しいど)ってやつ。」


トウキ「しいど…。そういえば村の人が言ってた。『また、しいどにくわれた』って。それも自覚は無いけど僕が呼んだって言ってたなぁ」


シン「アホったれだな。屍異奴はその人間の欲とか命への執念に反応して生まれる化け物さ。その人間を取り込んで黒い姿になった奴を俺は『黒い影人』って呼んでいるんだ。奴らを止める…いや、根絶やしにする方法を見つけたくってさ…。」


揺らめく炎を目にしながら語る姿はまるでシンの目すらも燃えているように感じられる程鬼気迫る様子だった


シン「悪い悪い!暗い話題になっちまったな!とにかくだ!俺はそいつらを根絶やしにするための方法が、各地に伝わる伝承や言い伝えに無いかを調べるために旅をしているのさ!」


トウキ「そうなんだ…シン…ありがとう。聞かせてくれて。」


シン「いいってことよ!さ、体もだいぶ暖まったし、そろそろ出発しようか!」


トウキ「うん!」


シン「あ、でもその前に…」


シンはトウキに服と塗り薬を手渡した


シン「痛みってのは感じなきゃいいってもんじゃないんだぜ?傷口からバイキン入ったら大変だし、風邪引いたらあとが辛いんだぞ?」


トウキ「…ありがとう!」


塗り薬を塗り終えたトウキは服に袖を通す。



さっきまで当たっていた焚き火とは違う暖かさがトウキの身を包み込んでいった。

吹雪に打たれてどれほどの時間がたっただろうか…シンは鼻水を垂らしながらトウキと共に雪山を進んでいた


トウキ「シン、大丈夫かい?」


シン「ズビッ…だ、だいじょぶダイジョブ…」


トウキ「シン、もう一度休もう。これ以上は身がもたないよ。」


シン「大丈夫だっ…て…。俺さ、こう見えてタタタ…タフ…だかららら…」


震えるシンを無理矢理担いでトウキは再び見つけた別の洞穴に身を寄せた。


トウキ「…おかしいな…吹雪は避けられているのに外よりも寒い気がする…」


トウキ達が入った洞穴の中は床までもが凍りつき、異様な冷気を発していた。


トウキ「!?…シン?寝ちゃダメだ!」


シンは寒さに凍え、今にも凍死してしまいそうな状態であった。


トウキ「くそッ!火が…つかない。」


トウキの手も悴んでいた。シンの持ってきていた着火魔石も上手く使えない。


トウキ「くっ…こんなところで死んでたまるか…僕は…僕は…シンと…一緒に…」


?「人のニオイか…久々に嗅いだな…このニオイ…ん?」


トウキ「?誰かいる?!おーい!誰かいるなら助けてくれ!」


?「だったらまず俺を先に助けろ!」


着火魔石に火が灯った瞬間、周囲は明るく照らされた。

トウキの目の前には探し求めていた剣であろう自分の身長程ある包丁のような大剣が地に突き刺さっていたのだった


トウキ「僕に喋りかけていたのは…君なのかい?」


大剣「そうだ!俺だ!」


シン「…ああ…暖かい…ん?!こ、これは…?!」


トウキ「シン!良かった!無事だったんだ!心配したんだよ!!」


シン「ああ…すまない。助かったよ。にしてもデカい剣だなぁ…。まさか本当にあるなんて。よかったな!見つかって!」


トウキ「うん!よし!コイツを引き抜いて持っていくぞ…」


トウキが力いっぱい引き抜こうとするが、全く抜けない。


大剣「ほらほら、もっと歯ァ食いしばって引っこ抜けや!」


トウキ「やっ…てるよ!でも…全然抜けない…ふんぬぬぬぬぬ…」


シン「お前、さっきから誰と話してるんだ?」


トウキ「え?聞こえないのかい?この声が?」


シン「(まさか、トウキ、この剣と既に対話を…?)」


トウキ「剣!アンタも歯ァ食いしばってェェ!」


剣「ふんぬぬぬぬぬ…」


トウキと剣「ダァァァァ!」


トウキと剣が息をそろえた瞬間、剣は引き抜かれた


トウキ「…やった…やったあああああ!」


剣を抜いてしばらくすると今まで止むことのなかった吹雪がピタリと止み、雲の切れ間から太陽が光を射し始めた…。


剣「ククク…いつぶりかね…これでまた、心置きなく…ククク…」



吹雪が止み、剣を引き抜くことにも成功したトウキはシンの体力回復のためひと休みした後、山を下っていた


トウキ「ところでさ、聞きたいことがあるんだけど…いいかな?」


シン「ん?なんだ?」


トウキ「シンってさ…女の子、だよね?」


シンは足を止めた。


シン「い、いやだなぁ〜!そ、そんなわけないじゃんか!み、見たろ?さっきの鼻水まみれの顔!あんなの女の子じゃ普通見せないよ?」


トウキ「…ごめん!実はさっき………。」


吹雪の中でトウキはシンを担いで歩いた。その時不覚にも彼…彼女の体に、特に上半身の柔らかい部分に触れてしまっていた


シン「…!?」


近くの木に積もっていた雪が地に落ちた瞬間、シンはトウキに背を向ける。


シン「そ、そうだよ…お…俺…いや、わたしは女…の子だよ。で、でも世間じゃ女ってだけで外を出歩くのは危険だっていうけど、家の中に居たって危険に変わりはないんだよ!?

現にわたしの住んでいた場所はもう…」


そう言うシンの足元の雪は周りよりも早く溶けていく。

さらに小さな電撃がまるで火花のように宙を弾けては消えていた


シン「でも決めたんだ。男にも負けないように強くなれば女だろうが関係ないって!

だから…だから…」


歩いてきた道を戻るように足を進めるシンにトウキは優しく囁いた


トウキ「ずっと…頑張って…きたんだね」


シン「…え?」


トウキ「僕さ、シンみたいに頑張っていこうって思ったことはないからさ、シンのことすごいなぁって思うよ。

今回の剣探しだって、きっと1人じゃ見つけられなかっただろうし、本当は剣なんて無いかもしれないって思ってもいたんだ。

シンがいたからここまで来られたんだよ!

それにさっきくれた服と薬、すごく暖かいんだ…服はちょっと小さいし薬は傷口にすごく滲みたよ。でもなんか…うまく言えないんだけど…すごく暖かい気持ちが溢れてきたんだ…。」


互いの目から一筋の涙が頬を伝う


トウキ「もう…死んじゃったんだけどね。僕をこの村に連れてきてくれて、育ててくれたおじいちゃんが言ってたんだ…。

『優しさはこの世界のどんなものよりも強いんだよ』って。

だからこんな見ず知らずの僕にここまで良くしてくれたシンは強いよ!

それに男だって思い込んでいたのは僕の方だしね…。だからゴメン!

女の子でも男の子でもシンはシンだよ!」


シン「なーんか言ってること、めちゃくちゃだな…。でも、ありがとう。女の子でも男の子でもわたしはわたし…か。ふふふっ。だとしたらなおさら!俺は俺であるべきだな!」


トウキ「え?」


シン「だって優しさはこの世界のどんなものよりも強いんだろ?

だったらわたしは、俺であり続けて、今以上にもっっっと強くならなくっちゃ!」


トウキ「そっちこそ言ってることめちゃくちゃじゃないか…」


シン「ハハハハ!…さ、行こう!吹雪は止んでも、足元の雪は冷たいんだ!

さっさと山、降っちゃおうぜ!」


トウキ「うん!」


肩を組み合いながら雪溶けていく山を再び降り始める2人であった

お読み頂きありがとうございました。


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・面白い

・続きが気になる

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皆さんに見て頂けること自体が嬉しいことですし、これからも貴重なお時間を共に過ごせるよう頑張って書いていければと思いますので応援よろしくお願いします_(:3 」∠)_

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