無き思い、想い泣き
かつてこの世界を荒らし回った8つの頭を持つ蛇がいた。名をオロチというその怪物はある剣士によって7つの首を斬り落とされた。
斬られた首達は夜空を這うように飛び散り、残った1本の首は剣士を道連れに地の底へ消えていった…。
飛び散った首はやがてそれぞれ地に降りた。
その周辺には特殊なエネルギーが満ち溢れ、
ある砂の地にはオアシスが、ある死んだ森には木々が生え、ある海には魚が溢れかえった。それぞれの地は他とは比べ物にならないほどにみるみると姿を変えていったそうな。
その富を独占しようと多くの国が争い、奪い合い、やがて滅び去っていった。
そんな時代から幾百の暦は流れた現在においてこの出来事はおとぎ話とされ、今や様々な人により語り継がれてきている。
しかし、この極寒の雪山に当時の戦で使われていた剣が今もひっそりと眠っているのだが、それはあまり知られていないのであった…。
『その剣を持ってきたら友達になってやってもいいかもよ!』
険しい雪山を歩く少年、トウキの脳裏にその言葉が杭のように突き刺さる。
亡霊に取り憑かれたかのように少年は惑うことなく足を進めていく。
一方その頃、麓ではトウキと同世代の少年たちが嘲笑していた
少年A「おい、本当に行ったぜアイツ」
少年B「ったくバカだよな〜。あんな約束しちゃってさ〜」
少年C「なぁなぁ…マジで剣持ってきたらどーすんの?」
少年D「バカだなぁ〜!んな剣ホントにあるわけないじゃん!
もし見つけたとしてもここは今までで1度も吹雪が止まったことがない雪山だぜ?
戻って来られるはずもないさ!」
少年C「うっわひっどーい!でも、アイツの必死な顔…ありゃマジで笑えたな!ハハハハ!」
少年A「ほんとほんと!あんなよそ者と誰が友達になるかっての!」
少年B「だよなだよな!…おい、物陰に誰か居るぞ?!」
少年Bが指差す先には石の剣を背負った青年が立っていた
青年「やぁ!やぁ!少年達!人斬り剣がある雪山って…ここかい?」
爽やかな口調と裏腹に彼らを見つめる青年のその目は笑っていなかった。
吹雪は激しさを増していた。
ただひたすら前に進んでいるトウキを追いかける人影があった。先ほどの石の剣を背負った青年である
青年「やぁ!やぁ!君がトウキ君?」
トウキ「…ハイ。僕がトウキです。あなたは?」
青年「俺?俺はシン!ただの旅人さ!」
シンと名乗ったその青年はトウキに近づく
トウキ「旅人…?どうしてこんな雪山に?」
シン「俺さ、ここにしかないものを探しに来たんだよ!」
それを聞いてトウキは目を逸らす
トウキ「(それってもしかして僕が探している剣のこと…?)」
そう思ったトウキはシンから距離を取るように歩き始めた
シン「え、ちょい!ちょっと待って!」
トウキ「あの剣は僕が見つけるんです!じゃないと僕は…」
シン「友達が、出来ない?」
トウキ「?!」
シン「麓の少年達に聞いたよ。剣を持って帰ったらどうこうっていう遊びでしょ?」
トウキ「遊びじゃない!僕にとっては大事なことなんだ!」
トウキは大声で叫ぶ。吹雪の中でもその声はシンに届いていた。
シン「ふーん…そういう声も出せるんだ。だったら自分から友達になりたいって言えばどうなんだい?」
トウキ「…。僕はこの麓の村で育ったんですけど、よそ者なんです。
村には言い伝えがあって、村の外から来た人と親交を深めると不幸が起こるらしいんです。
だから皆は僕を居ないものと思うようにしているんです。
…でも、でも!今日、ようやく友達になってくれるって言ってくれたんだ!
だから剣を見つけて持って帰るんだ!それで…それで…。」
涙を浮かべるトウキの肩をシンは優しく叩いた
シン「…そっか。じゃ、俺も手伝うよ!一緒に剣、探そうぜ!」
トウキ「え?でもシンさんも剣を…」
シン「いいからいいから!それよりも1つ言いたいことがあるんだけど…いいかい?」
トウキ「…はい。」
シン「…寒いからどこかで暖をとりたいんだけど…」
トウキ「……はい?」
唖然とするトウキ。だが視界は先ほどよりも広く感じられるのであった…
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