マリアンヌの妊娠
怪我をしてこの島に運ばれてきた彼女はマリアンヌと名乗った。どう言う理由でこんな離島にやって来たかは院長様しか知らない。彼女の傷は思ったより浅かったのと、彼女に体力があったので、二週間ほどで立って歩けるようになった。
マリアンヌは言葉使いは平民だが、貴族並みの待遇を要求する。この修道院の待遇があり得ないといつも怒っている。食事が質素だ、着るものがみんな一緒なんてありえない、水で洗面なんて冷たい、風呂に入れないなんて汚い。掃除なんてしたくない、神様なんていないのに祈りたくない。
エマ達は私の時で懲りたらしくて、虐めも意地悪もしなかった。というよりエマ達よりマリアンヌの言いたい放題の方が強力だったのだ。
そのマリアンヌが真っ青な顔をして、嘔吐している。仕事をしたくないための仮病じゃない?と周りのみんなが言っていた。確かに祈祷場でのお勤めが嫌で腹痛だとさぼったこともあるけれど、これは真実辛そうだ。それを見ていたエレナが院長様に何か言いに行った。
院長様がマリアンヌと二人になって何か話していた。そのあと院長様からマリアンヌが妊娠している事、マリアンヌが産むと言ってる事がみんなに伝えられた。
ここには常駐の医者はいない。どうするのかと思ったら、エレナが出産経験があるのでエレナが面倒を見ることになった。
エレナは本当にどんな過去があるんだろう。
悪阻が治るまでマリアンヌは外での洗濯掃除はできないので、繕い物をするように言われたが、縫い物をした事がないと言い出した。
言葉使いは平民なのに繕い物をした事がない。でも刺繍ならちょっとはできるよと言う。刺繍は貴族令嬢の嗜みだ。本当にどう言う人かわからない。
私もここに来るまで繕い物一つした事なかったが、エレナに習い、今は一通りできるようになったのでマリアンヌに一から教えた。
二人きりになる時間が多くなったので、自分のことをぼつぼつ話すようになった。
「へー ミラって貴族の生まれなんだ。あたし貴族嫌いなんだよねー」
「もう平民だから生まれなんて関係ないわ」
「ミラ 初恋の相手どんな人」
「……」
「じゃあ私の相手はどんな人か聞きたい?」
「………」
「プラチナブロンドに碧眼で、すっごい美形なんだよねー背も高いし身体も鍛えているから逞しいの。一度でいいから抱いて欲しかったなー」
「……マリアンヌそう言う話はここではやめてね」
後ろの扉から入ってきたエレナが嗜める。
「えーだって修道院でも愛や恋ってあってもいいじゃない。相手はいないから想像だし」
「マリアンヌ!やめなさい。ミラが困ってます」
私はひたすら俯いていた。聞かされたマリアンヌの初恋はまるで王太子殿下みたいだ。
私もあの方に一度でいいからエスコートされて、踊ってみたかった。
マリアンヌは初恋の相手の話はしたが、お腹の子の父親には触れない。ここには辛い思いをした女が集まるのだな。




