アンジェラの明日
部屋に陛下と王妃様だけ残して退出する。
私達は王太子殿下の私室に戻った。
「これであの二人の仲が改善するといいのだが」
「お二人は不仲なのですか?」
「不仲とまではいかないけれど、さっきの話にあった妹が生まれた時部屋を分けていて、その時に侍女に襲われたと言うところ。黒幕が解明されてないので母に全て話すわけにはいかなかったんだ。母の生まれ覚えているか」
「隣国の王女様でしたよね」
「そう、隣国の誰かと黒幕が繋がっていて、情報が漏れるといけないので、母には父が母のお産の時に浮気したと伝わっていたのだ。隣国の王家は後宮もあったので、母は仕方ないことと耐えようとしていたが、心情的に距離はあったようだ」
「女性はお産の時、夫に浮気されたりすると許せないでしょうね。嫉妬を表に出すことをよしとされない身分の方は気持ちを中に押し込めるから余計に拗れそうです」
「アンジェは女心を解説するのがうまいな。私も二の舞にならないように気をつけるが、アンジェにもそうやってなんでも言って欲しい」
「アンジェ」
王太子殿下が私を抱き寄せた。
「先ほどの話でエミールは媚薬の被害者だと分かっただろう?彼の元に帰りたいか?」
王太子殿下が私を熱を持って見つめる。綺麗な深い碧眼の中に私が写っている。
「いいえ。エミールが私を女としてどう思っていたか一切聞いたことはありません。愛の言葉一つ言われたこともありません。いつも容姿を褒めるだけ。上辺しか見てくれない人にいつまでも愛情は残りません。私を真っ直ぐ見て必要だと言ってくれる方のもとにいたいです。」
「そうか」
王太子殿下は嬉しそうに抱きしめてくれた。
「じゃあ、遠慮なしに愛をささやくぞ。覚悟しておけ」
******
王宮で教育を受けてさらに半年経った。挙式用のドレスのデザイン、縫製など挙式の用意はどんどん進んでいる。
王太子殿下は宣言通り毎日愛を囁いてくれる。エミールのことをさっさと割り切った私はドライすぎるのだろうけど、お母様に女は恋は上書きするものだと言われた通り、もうエミールのことは過去の思い出でしかない。
エミールはいつも天使だと私のことを言っていたが、私は天使などでなく、汚い欲のある人間だ。上辺の綺麗なところばかり言われても、人間としての実像をわかってもらってなかったのだろう。どちらにせよ、終わった恋だ。
半年前までは、エミールがいつ婚約を申し込んでくれるかばかり考えていた。それが今や私を愛してると大きな声で宣言してくれるエリック様の気持ちが嬉しい。愛に愛を返してくれる人が愛しい。
エミールには王宮に上がってから一切接触はない。私の初恋は脆くも砕け散ったのだろう。一度壊れた想いは二度と元に戻らない。
アンジェラ編はこれで完結です。お読みいただきありがとうございました。




