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1. 女神降臨

全部で8話くらいの軽い読み物予定。

よろしくお願いします。


「そなたの願いは聞き届けられました」


 そう言われてもハリーは反応できなかった。


 だってまさか、誰がこの状況を信じるだろうか。


 ハリーとジョアンナは互いに抱き合いながら、ぽかんと呆けていた。

 目の前には淡く光る女神がいた。そう、女神だ。





 王太子の結婚式が盛大に行われ、国中がなんとなく浮かれていた夜。


 王宮に務める、とある夫婦もまた、浮かれていた。

 通常の業務に加えて結婚式にまつわる仕事に瞬殺されていた日々が今日、終わりを告げたからである。

 つらい日々だった。

 しがない文官のハリーはお人好しで断れない性格のため、あれよあれよと言う間に仕事を押し付けられて、気がつけば残業ざんまい。


 回数を数えるのをやめた衣装合わせ、顔色伺いでどんどん増える招待客の手配、通常公務とのスケジューリング、伝統が口癖の教会とか、王と仲の悪い大司教とか、吐きそうだった。国の女神信仰とかどうでもいいし、婚礼前の儀式どうこうよりパワーバランスに配慮した席次の方が重要だった。

 パズルじゃねーんだぞ聖堂の長椅子に座るだけだ、もう誰が隣でも前後でも立場が上とか本来はない仲良くしろ、とは声を大にして言えないので。

 もう胃が痛くてしょうがない。


 おまけに今時の式がしたい花畑気味の王太子と、教会に口を出され過ぎて完全にマリッジブルーの花嫁は噛み合わず予定をかき回され、泣きながら奔走した。予定詰まってんだからいちいち寝込まないで、喧嘩しないで行動して、と何度心の中で言ったかわからない。


 国民に向けて大々的に日取りを公布したのに、間に合わないかと誰もが恐怖した。教会と王家の板挟みで、式に関わった文官達は見事に痩せた。というかやつれた。ハリーとて例外ではない。仕事帰りに式場となる王城内の聖堂へ毎日通って、絶対失敗しませんようにっ!と祈る続ける日々。

 だから式が予定通り無事に終わって本当に嬉しかったし、誰もが号泣した。


 ハリーも城下の家に帰ってから妻を抱きしめ喜び合い、寝室でとっておきのお酒を開け祝杯をあげた。

 そして喜びのままにベッドへ行って「ずっと頑張ってきたから、今夜はご褒美がほしい」とハリーが妻のジョアンナに乞うのも仕方なかった。この場合のご褒美とは下ネタ的なご褒美である。

 今から頑張れば王太子の子供と同級生も夢じゃない、なんて笑いあって。

 部屋の灯りを消してはしゃぐ夫婦の空気をぶっ飛ばしたのは、突如として部屋に吹き荒れた暴風だった。


 冒頭に戻る。


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