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神は好きに生きるそうです。  作者: 空の宙
3章 雪と氷のお城で遊ぶそうです。
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76 氷の道を駆け抜けよう

令和だよ!

あーるじゅうはちだよ!

レイ「えっち年が何言ってんだ」

一番の被害者は「和」ちゃんだよ。

レイ「せやね」


新しい元号に乾杯。

令和になってもよろしくお願いします。

 


「それじゃ、またねーっすよー」


「ばいばーい」


「二人共、無事に帰って来てね〜」


「換金したやつは後で分けっこな!」


「最上階まで頑張ってくれ」


「……話、楽しみにしてる」


 ノクトが石に触れ、三人が集まる。

 私とユウキが見守り手を振る中、四人は消えていった。

 地上に戻ったのだ。


 ボス部屋を攻略してから、私達は素材を回収して、それぞれのマジックポーチにしまい込んだ。

 が、道中結構倒して来たからか思った以上に量があり、そろそろユウキ以外のポーチは埋まってきていた。

 ユウキのも、正直埋まりそうらしい。

 食材とか武器とか調理道具とか服とか、色々入り過ぎてるから。

 というわけで、ルーリア達はそろそろ疲労が溜まって来たのもあり、先に素材を持って帰ってもらうことにしたのだ。

 私とユウキは、まだ全然ピンピンしてるので、このまま上に進んでしまおうと言うことになった。


 まあ、寒いからね、体温奪われていつも以上に疲れるよね。

 私もそろそろ防寒のための魔術をずっと組んでるの辛くなってきた。

 それに、このままじゃ不完全燃焼だ。

 疲れたといえば疲れたが、暴れ足りないのである。

 というわけで、ユウキと一緒に、実力を隠すことなく暴れ回ろうと決めたのだ。


「えっへへー。レイレイとデートだぁー」


「ダンジョンだしメインは戦闘だけどね」


「それでもいいんすよー。これで、お互い自重することなく行けるっすからねー」


「あーはいはい。頑張れ。私は程よくやるよ」


「むぅー、レイレイも燃えてくれっすー」


「お前との戦闘で一度痛い目見たんだ。二度もやるかい」


「えー、盛り上がって行こうっすよー」


 ねーねーねーねー、と私が準備する後ろでやかましいユウキ。

 もう下手に本気出して痛い目見るのは勘弁。

 この体の寿命がどんどん縮む。

 折角私が乗ってやったのに、データあんまり取らせてやれないのは申し訳ない。

 なので今日は程よく自重します!


『フラグ〜フラーグ〜』


 焼き芋みたいに言わないで!?





 前方から迫る、尾長で立派な体躯を持つ青い鳥。


「ピッ……ギャ!?」


「邪魔。死ね」


 その喉元を一瞬で切り裂き、踏み出した一歩を静かに着ける私。

 ユウキのほうには、ボス部屋で見たのより強そうな氷と鋼のゴーレムが迫っていた。


「グルォオオ!」


「てい」


「グギャッ!?」


 ゴーレムの核を、間の抜けた声と共に一突きで吹き飛ばすユウキ。

 そしてドシャッと地面に崩れる、ゴーレムと怪鳥。

 ほんの少しだけ攻撃の掠った手を回復し、私はさっさと剥ぎ取りにかかる。

 そんな私の横顔を、ゴーレムを解体するユウキが眺めながらため息をつく。


「レイレイ、自重とか嘘じゃないっすか。さっきからほぼ二・三発攻撃当てて終わらせてるっすよ」


「鏡見なよ。ブーメランだよ」


 ある程度の魔物の弱点は見れば分かっちゃうし、仕方ない。

 これでも自重して、ちゃんと力を調節してやってるんだよ?


「ほんっと、デタラメな奴らだなー」


「にゃー」


 後ろからのんびりマイペースに歩いてくるレグと、その片腕に包まれたアヴィー。

 今は私達以外いないので、レグも人型にさせて荷物持ちにしているのだ。

 そんなレグの頭の上から、突然何かが迫ってくる。


「ふんっ!」


 落ちてきた氷柱を、難なく殴って弾くレグ。

 砕けた氷柱の破片を蹴って、レグはため息をついた。


「なーんか、さっきから明らかに狙われてる気がするんだが。罠じゃねえよなあ、これ」


「多分ねー。どう見ても、的確に私達を狙ってるよ」


 そう言って、私も暗闇から飛んできた氷柱を避けた。

 ルーリア達と分かれてから、妙に氷柱に狙われている。

 トラップではなく、私達そのものに反応して、特定して行っている、誰かの意思を持った攻撃。


「でも、殺意や悪意は感じないっすよね。なんか、試してるっていうか、遊んでるっていうか」


「要は高みの見物してるってことだろ? だー! 俺様そういうのムカつく! 見つけたらぶん殴ってやる!」


 うがー! と吠えるレグ。

 直接殴れないってだけでイライラすんなや。


「……ん? いやちょっと待て。このダンジョンってお前が作ったんだよな?」


「そうだよ?」


「じゃあ犯人お前じゃねーか!」


「む、失礼な。そんなつまらないことするわけ無いでしょうに。今回私はトラップの設置はしてないよ。大まかな構築しか関わってない。だからこのトラップのことも知らないよ」


「は? じゃあ誰が作ったんだよ?」


「さて、誰だろうねー」


 答えてやる義理も無いので、私はレグを背にとっとと進む。

 だが後ろから、レグが一人話す声が聞こえた。


「……あ? ああー……。んだよおめーかよ。やっぱムカつくからいつか殺す」


「レグ? 誰と話してん?」


「なんでもねー。とっとと行こうぜ」


 ぶっきらぼうに言ってとっとと進み始めるレグ。

 荷物持ちが先陣切るなし。

 てか誰と喋ってたん?


『脳内会議じゃないですかね』


 思いっきり口から出てたけどそれは。


『そこはほら、馬鹿ですから』


 成程、馬鹿だからか。

 そろそろ馬鹿に失礼なんじゃないかな。


 小走りに進みながら、魔物を倒し、時折氷の槍が飛び出る感圧式のトラップを避けて、宝箱をササッと開けて、私達は順調に進んでいた。

 主に私が魔法担当、ユウキが私のうち漏らした奴の物理攻撃担当、レグが荷物持ちといった具合だ。


「今って何層目っしたっけ?」


「第16層目かな。地図的には……どうだろ、半分も埋まってないと階段が何処にあるか予測出来ないや」


「ふーん、まあでも、その内見つかるっしょ。変な所に設置されてないかぎ……」


 ふと、言葉を止めたユウキが足も止める。

 そしてその目を、一点に留めた。

 私とレグも足を止め、アヴィーも揃ってその壁を見つめた。


「なんかある?」


「……あーしの勘と〈気配察知〉が、この向こうから何かあるって言ってるんすよ。この壁、ただの壁じゃなさそうっす」


 手に魔力を纏わせたユウキが、その壁に触れる。

 するとその壁に、扉のような何かが浮き上がる。


「えーっと、古代の魔法式の文字使った、謎解きっすか?」


 ユウキの言う通り、現れた扉に書かれていたのは、古代の魔法式を使った謎解きである。

 が、その謎解きの内容は……。


「どう見てもクロスワードなんすけど」


「せやね」


 パネルの細さと形状的にクロスワードであった。


「なんでこの世界にクロスワードがあるんすか!」


「なんでと言われましても」


 ええやん別に。

 楽しいじゃん。


 私が肩を竦めるのを見て、ユウキは諦めて扉の問題に向き合った。


「えーっと? それぞれ問題を解いていって、最終的にこの真ん中の横一列に出てきた答えを扉に向かって言う……って感じっすかね?」


「そーだね」


 私は後ろから覗き込む。

 一応、私もこの問題を知らないが、ほうほうほほほのほーう?

 中々凝ったものを出したじゃん。


『変態フェミニストとマッドロリさんに手伝ってもらい、色々頑張ってみました』


 まあ、うん、なんというか。

 この世界の人間でも解けるやつほぼ居ないんじゃないの?


「レイレーイ!」


 だってさあ、ほら。


「この問題難易度が鬼なんすけど!」


「んなどこぞの達人みたく言わないでよ」


 こいつが即座に私に泣きついてくるくらいには、酷すぎるでしょ。

 なんで魔法じゃなくて、魔術(・・)の術式についての問題が乗せられてるのさ。


【縦1:水を氷に変化させる際の主軸の魔術式】


【横1:特定の音を増幅させる際の強化術式】


 以降エトセトラエトセトラ……。


「別に……私達神族にとっちゃ楽勝問題なんだが」


「あーし人間! 人間基準で考えて!」


 えー、んな事言われてもー。

 人間基準で難しいのは分かるよー?

 当たり前のように使ってる魔法の大先輩というか、元々のものである魔術の、構築する式のうちの一つを抜き出して答えろって言われてるんだから、うん、まあ、難しいね。


「なんだ? どんな問題なんだ?」


「にゃー?」


 ある意味神の一種で魔術が多少使えるレグが背伸びして覗き込み、アヴィーがその頭の上でまじまじと見る。


「…………うわー」


「にゃ……」


 そして二人もユウキ同様にドン引きした。

 なんでや、お前ら多少は分かるでしょうに。


「いやー、クソ女神。例え基礎の基礎だとしても、こんな系統別の問題色々ばらまかれて全部解けるやつそうそういねーと思うぞ?」


「私、自分が器用貧乏寄りの万能型だって自覚してるから、それは分からなくはない」


「ナチュラルに自負するんじゃねえ。そりゃあ俺様も多少は分かるぜ? この辺の物質の形状を変えるとかそういうのは。自分がいつも使ってるからな」


「え? どゆこと?」


 ユウキが自らの相棒の発言に首を傾げる。

 あれ、伝えてなかったん?


「言ってなかったっけか? 俺様のこの『身体を武具に変形させる能力』は、一応能力ではあるが、そもそも能力って魔術の一種なんだぜ?」


「!?」


 本気で面食らった顔をするユウキ。

 だが正直私も内心驚いている。

 こいつが、こいつが人様にものを教えているだと!?


『マスターも馬鹿にし過ぎでは』


 いや、うん、こいつに説明する能力があるとは知らんかった。

 というか、自分のこと自分でちゃんと把握出来てるってことに驚き。

 ほとんどの能力者は自分の能力をただの能力としてだけで受け止めてるから。

 まさか自分自身でちゃんと把握出来てるとは。

 こいつ、できるっ……!? 


「能力ってのは魔術の術式を構築する過程を全部すっ飛ばせる便利なもんさ。でもすっ飛ばせるってだけで、やってないわけじゃない。落ち着いて自分の能力の発動される瞬間を見れば、その式ぐらい見れる。俺様の能力で言えば、一部に物質の形状を変える術式が組み込まれている。だから俺様は、能力を使わなくても、その術式を使うことくらいはできるんだぜ」


 悪ガキの顔に似合わないくらいに、妙に真面目な顔で話すレグ。

 誰だろう、こいつは。


「誰だお前! さてはあたしの相棒じゃないな!」


 どうやら飼い主も動揺しているようだ。

 扱いがひでぇ。

 ユウキのその態度に、額に青筋をうかべるレグ。


「ちょっとものを教えてやったらそれかよ! ふんだ! もう俺様が問題分かってても絶対教えてやんねーもんね!」


「あっちょごめんなさい調子乗りましたすみません教えてくださいレグ様」


 レグに拗ねられて一瞬で手のひら返しの土下座をするユウキ。

 どっちが主人か分からねえ。


「やーだよ! 一人で悩んでやがれ! 隣でお前の悩み顔を笑ってやるさ!」


「おーねーがーいー! 後で美味しいお菓子作ってやるからー!」


「断る! お菓子なんかで俺様はつられないぞ!」


「そんなぁ〜」


 完全にそっぽ向いてぷりぷり怒るレグ。

 ユウキはそちらが完全に釣れないと諦め、私の方に目を向けた。


「レ、レイレーイ」


「やだよ。私がやったらつまんないじゃん。今チラッと見た限り、普通にいけちゃいそうだし」


「いやいやいや。マジで無理だって。あたしがこんな問題解けるはずないっしょ!?」


「やってみなきゃわかんないじゃん」


「見てもぜんっぜんわかんないんすけど!?」


 私とレグの両方に見捨てられ、涙目になるユウキ。

 あくまでこの扉をスルーするって選択肢はないんだなぁ……。

 しょうがない、書き方だけは教えてやるか。


「とりあえず、ここにはペンも何も無い。だからパネルには魔力で文字を書くんだよ」


「それくらいなら、やったことあるっすけど……。そもそもあーしの知識の中に魔術のものなんて無いんすよ? 大体、魔法もほぼ独学だし……」


 完全にやる気を無くしているユウキ。

 私はそんなユウキの肩にポンと手を置き、その耳元に小声で告げた。


「自分の脳で考えるな。自分の内側、自分の魂を使って考えろ。そうすれば、その問題はお前でも解ける」


 私が顔を離すと、目を丸くしているユウキ。


「……本当っすか?」


「うん。私の名にかけて、保証するよ。大丈夫、()()()()()()()()()()()()()()()()()


 私は笑って勇気づけてやる。

 その言葉にユウキは一瞬項垂れると、すぐ顔を上げた。


「……分かったっす。自分に出来るか分かんねーっすけど、レイレイの言葉を信じてやってみるっす」


 少しだけやる気に漲らせた顔で、強気な笑みを浮かべるユウキ。


「うんうん、やってみなって。大丈夫、お前が出来なくなったら私が速攻で解いてあげるよ」


「ナチュラルに心折る宣言ありがとっすよ! やってやらぁ!」


 早速私達に背を向け、パネルと向き合うユウキ。

 しばらく問題文を眺めていると、目をつぶっているのか項垂れ、静かに思考を加速させる。

 そんなユウキを眺め後ろで待機する中、レグが話しかけてきた。


「なあ、本当にあいつに解けんのかよ。あいつ力は人間離れしてっけど、それでも人間だぜ?」


「大丈夫大丈夫。私が出来るって保証したんだ。あいつなら出来るよ」


「ふーん……? ま、別になんでもいいが、とりあえずこの扉性格悪すぎだろ」


「ん? なんで?」


「いやなんでって……」


 周辺を見渡し、呆れ顔になるレグ。


「こんな道中で、中々に骨の折れる問題を解いて、ここで足を止める。しかも扉はほぼ感知出来ないほどの魔力で隠されて見えやしない。魔物が現れるかもしれないし、トラップが思考してる途中で降ってきたっておかしくねー。普通やろうとは思わないだろ」


「やっだなー、多少危険な空間の中で問題を解くって、中々にスリルで良くない?」


「うーわ……」


 思いっきりドン引きされたよ。

 なんじゃいなんじゃい。

 いいじゃんけ。


「と言っても、私こんな扉設置した覚えないんだよねー」


「はい?」


「だから、私はこれに関与してないのさ。だから、問題を解いたとして、その先に何があるか分かったもんじゃないよね」


「おいいいいい!? それ危なくね!? いいのかおい!?」


 途端にあたふたするレグ。

 んもー、らしくないなぁ。

 私はレグの頭を小突いて落ち着かせる。


「落ち着きなよ。解いて扉が開いた瞬間爆発するとか、流石にそこまで性格の悪いものは無い…………とは言いきれないけど、無いと思うよ」


「やめろ!? そこは言い切れよ!? 今すぐ逃げたくなってきたぞおい!?」


「しー。静かにしなよ。あいつが考えてる」


 私達が後ろで騒ぐ中、ユウキは黙々と考え続ける。

 幻覚か魔力の揺らぎか、その頭部と腰の辺りに何かが見える気がするが、ハッキリとしない。

 そしてふと指を上げたと思えば、その指先に微量な魔力を込め、パネルに術式の文字を書き始める。

 その後も、手を止めては思考し、動かしては答えを書き、次々に問題を解いていく。

 ほら、やっぱ行けるじゃん。


「大丈夫。何かあったとしても、私がどうにかしてあげるよ」


「だ、大丈夫なんだろうな……?」


 情けないくらいにビクビクするレグ。

 今までどんなトラップに引っかかったのやら……。

 いや、もしかしたら今までユウキが突っ込んでトラップに引っかかりに行くのに巻き込まれたりしてたんだろうか……。

 うん、哀れ。


「大丈夫大丈夫。まあお前のことを守ってやるとは言ってないけど」


「うーわやっぱ俺様逃げていい?」


「ダメでーす」


 ニッコリと馬鹿悪魔の首根っこを掴んでホールド。


「ちくしょー!」


「にゃーぁー……」


 やれやれとレグの頭の上で首を振るアヴィー。

 逃がしはせんぞー、道連れじゃー!


『酷く盛り上がってますねぇ……。流石に当機もそこまで鬼畜じゃない、とは言いきれませんが意地悪じゃないですよ』


 不安しかない発言。

 一体誰の影響でそうなったんだい君は。


『鏡みてくださいな』


 氷の壁に私の顔が!

 見るなー、見るなー!


 そうしてわーぎゃーと騒いだり、黙々と装備の確認をして、時間が経過すること数十分。


「……あ、ぃ……し……?」


 突然、掠れ掠れに何かを呟くユウキ。

 すると、その言葉に反応してパネルが眩しく光り輝いた。


「わっ!?」


「眩しっ!」


 咄嗟に目を塞ぐ私達。

 しばらくすると光が収まり、先程まで扉があった場所はポッカリと扉の形に穴が空いていた。

 そして、その穴の向こうには、異空間に繋がっているであろう次元の通路があった。


「おー、やったじゃん!」


 私は呆然と経つユウキの横に立ち、その背中を叩いてやる。


「マジか! あの問題全部解けたのかよ!」


「にゃんにゃー」


 レグもアヴィーを乗せてやって来て、ユウキの後ろから穴の向こうを眺めた。

 すると、ユウキは頭を抑えて蹲る。


「っぐうぅあぁぁ……」


「ちょ、大丈夫?」


 私は蹲ったユウキの背中を〈ヒール〉をかけつつ優しくさすってやった。

 多分、回復魔法じゃどうにもならない方だろうけど。

 ユウキは何度か大きく息を吸うと、じきに顔を上げた。


「だ、大丈夫っす……。ちょっと、目眩が、しただけっすから」


「知恵熱出さないでね? といっても、疲れたのは魂の方だろうけど」


「おいおい、大丈夫かよ」


「このくらいなら問題ないでしょ。むしろ程よく魂を使ってやった事で後々の成長に繋がるはずたよ。よくやった、お疲れ様」


 わしゃわしゃとユウキの頭を撫でてやる。


「あざーっす……」


 ユウキは疲れた顔で苦笑いを浮かべ、立ち上がって穴の向こうを眺めた。


「はぁー……ふぅー……。さーてと、これでようやく向こう側に行けるっすね」


「楽しみだねえー。何が出るかなー、何が出るかなー」


「た、頼むからトラップはやめてくれよ……?」


 私達はウキウキとその穴の向こうに足を踏み入れた。


 一瞬の気持ち悪さの後、足が地面に着くと、目の前には複数の段差があった。


「これは、階段?」


 ユウキが顔を上げて口にする。

 穴の向こう側は長い階段で、一番上にぼんやりと明かりが見える。

 どうやらあそこに何かがあるらしい。


「一応、トラップがあるといけないし、慎重に登っていってみよっか」


「そっすね」


 ゆっくり一段ずつ、何も無いか確認するように登っていく。

 だが警戒し過ぎであったのか、特に何も無く、順調に進んでいく。

 そして、その部屋まであと三段、あと二段、一段……。


「わぁ……」


 自然と、ユウキの口から感嘆が零れた。


「なんだ、これ……」


 レグの口からは、困惑の声が。


「これ、は……」


 そして私の口からは、驚愕の声が零れていた。

 それもそのはずである。



 そこにあったのは、一面雪と氷の花畑。

 花びらが、妖精が、粉雪が好き好きに舞う。

 そんな、ここ以外この世のどこにもないであろう、神秘的な空間が広がっていたのだから。







 *****



 ザ……ザザッ……。


『ん?』


 ザー、ザッザザー。


『あ、れ?』


 プツンっ!


『ちょっ!?』


 ッー…………。


『え……。え……?』


 ッー、ッー…………。


『一体、何が……?』


 ……………………。







 *********



『今回は休憩』



ユウキ「頭が痛い……」

レイ「ほれ、よーしよしよしよし」

ユウキ「それなんか子供扱いじゃないっすか……?」

レイ「気にすんな」


ユウキ(っっっあああああああレイレイ癒しいぃぃいい尊いいぃぃいい)


疲れてても平常運転。

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