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神は好きに生きるそうです。  作者: 空の宙
3章 雪と氷のお城で遊ぶそうです。
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57 氷のように分厚い壁の中で

 


 剣を振る者、魔法の訓練をする者、新しく取得したスキルを試す者、などなど。

 様々な人がいる冒険者ギルド横の訓練場。

 そこに、私とユウキは足を踏み入れ、奥の方、特別訓練場へと向かう。

 レグは元の大太刀となり、ユウキに背負われている。

 この状態で人間の姿をイメージした時、シュールなのはこいつ方じゃない……?

 ちなみに、アヴィーは私の右肩でだれんとだれている。

 猫だなぁ。


「おい、あれユキじゃねえか」


「また来たのか……? さっきも散々にやったじゃねえか……」


「ユキの奴の二十人抜きに無理矢理参加させられた奴らはまだ寝てるってのにな」


「殆どがCランクBランクだってのに、哀れなもんだぜ……」


 遠巻きに私達を見る冒険者から、そんな風な声が聞こえた。

 こいつそんなことしてたのか。

 相手にされたやつ、可哀想に。

 こいつの事だから、笑顔で相手をパンチしたあと全回復しておき、お礼を述べて次に挑んだんだろうなあ。

 回復魔法も得意って言うんだから、大抵のやつは心折れるだろう。

 ああ……あそこに死んだ目をした奴が……。


『哀れな被害者ですね』


 まあ多分、あのユウキと闘える機会なんて中々ないだろうしやるか! 的なノリでやったんでしょ。

 なーむー。


 先程のユウキの要望を、私は仕方ないので受け入れてやった。

 だって、ねえ。

 やるっすよね? ね? ね? みたいな顔で見られたら、すげー逃げにくいのよ。

 じりじりと顔を近付けてくるし。

 不覚にも意外と撫子美人な顔だと思ってしまった。

 男女問わず、こいつに壁ドンされたらときめくだろうなぁ。

 まあ私は一途な乙女なのでときめかないけど。

 てか鼻息荒い美少女とか嫌。


 ユウキが歩いていると、必然的に野次馬の目線は後ろを歩く私に移る。


「後ろに連れてる女の子、誰だ?」


「最近ノクトとかルーリアちゃんなんかといる駆け出しだろ? ルーリアちゃんと仲がいいんだと」


「実力は、まあ駆け出しだし、誰も知るわけねーか。そろそろ一ヶ月くらいらしいけど、まだ辞めてない当たり、根性はありそうだよな」


「でも、あのちっこい嬢ちゃん連れて、ユキは一体何しに来たんだ?」


 単純明快、私という幼女の体に鞭打ちに来たのです。

 およよのよー。


「レイレイ、今なんか失礼なこと考えなかったっすかー?」


「気の所為だよ気の所為」


 あっぶね。

 こいつ地味に勘が鋭いんだよな。

 この勘の良さが、戦闘においては十分に発揮されるってんだから、厄介極まりない。

 不意打ちとかがほぼほぼ決まらないんだもんなー。

 まあ、バフスキル〈予知〉を持ってて、未来の可能性が常時見えるようになっているってのもあるかもしれないけど。

 でもやっぱり、野生の勘が働いてる所が大きいんだろうなぁ。


『まさに獣』


 ……それを言っちゃあいかんのだぜ。


 私達は、訓練場の一番奥へと辿り着く。

 そこには石の柵があり、それより向こうには天井は無く、今日の綺麗な青空の見える、半径十メートルほどの円形の石のフィールドがあった。


 ここは特別闘技場。

 決闘とか単純な対決に使われる場所で、壁や柵にはかなり丈夫な衝撃吸収の結界が張ってある。

 勿論、中の衝撃を漏らさないためのものだ。

 ちなみに、その結界の壁は、普通の物理的な壁のように、ちゃんと触れることが出来る。

 つまり、吹っ飛ばされれば、壁にドカンである。


『ドカンて』


 いや、なんか効果音的にはそうかなぁと。


 当然ながら、結界維持装置が壊れたり、その結界の許容範囲を超えた衝撃を受けることさえなければ、結界の壁は壊れない。

 周りへの被害を心配する必要がないのだ。


 ちなみに、いい結界を使っているので、一回の使用につき一人二千リルを払わなければならない。

 地味にとられる。

 でも、頼めば自分たちの立てたルールに基ずいた審判をしてもらうことも出来るし、街の外のように魔物や野次馬に邪魔されることも無い。

 正真正銘、本気の決闘が出来るってこった。


 あまり使われることが無く寂しいためか、向かってくる私達の、というか、ユキの姿を見て、受付嬢の顔が明るくなった。


「まあ! ようこそいらっしゃいました! 冒険者ギルドの特別闘技場をご利用されますか?」


「はいっす。あーしと、この子で。あ、料金は自分が全負担するっすー」


「この子、って……」


 受付嬢の顔が、ギリギリ受付の淵に顔を出せている私に向く。

 ちゃんと見えるように背伸びしてやると、受付嬢の顔に動揺が浮かぶ。


「えっ……と、聞き間違いでしょうか? どなたがお相手ですか?」


「だから、この子っす。こちらのレイレイ……じゃないか。……今の名前ってなんすか?」


 ユウキが小声で聞いてくる。

 そういや、言ってなかったね。


「レイチェル・フェルリィ。まあ、そこまで違いはないし、今まで通りの呼び方でいいよ。てか、そうやって呼び間違えとかがないように、この名前にしたわけだし」


「ふーう、親切心あふれる普通の可愛いネームっすね。じゃあ、これからもレイレイで」


「はいはい」


 なんと呼ばれようがいいわ。

 気にしたら負け。


「てなわけで、こちらのレイチェルって子と闘技場を使いに来たっす」


「……本気ですか?」


「まじまじの大マジっす。あーしに二言はないっすよー」


「……えっと、レイチェルさん、間違いではございませんか?」


「全くもって本当に残念ながら間違いではありません。今からこいつと殴り合うんで」


「レイレイが殴るって宣言してくれた! いやっふー!」


「うっさいわ馬鹿」


「あうっ」


 イラッとしたのでスネ蹴りした。

 まあダメージは大してないんだろう。

 ユウキのそんな興奮が聞こえたのか、周りに野次馬が集まってくる。


「おい、あそこにユキがいるってことは、今から態々闘技場でやるってことじゃねえか?」


「マジでか? さっきまでこっちの方で、ほぼ全員一撃で終わらせてたってのにか?」


「もしかして、凄いもん見れるんじゃねえ?」


 周りのざわめきから、ユキの有名度が伺える。

 ここを使うってことは、それだけの力を使うということ。

 誰も こいつの本気を見たことがないのだ。

 そりゃあ気にもなるだろう。


「なになに〜? これなんの騒ぎ〜?」


「何が始まるってんだー?」


 騒ぎに聞き耳立ててやって来たのは置いてきぼりにしていたルーリア達であった。

 野次馬の中から顔を出して、騒ぎの中心を覗こうとする。

 それに野次馬の一人が反応する。


「おお、ルーリアちゃんにノクト。どうやら、あのユキが闘技場使っての対決をするらしいぜ」


「えっ、そうなの〜?」


「一体誰とやるんだ?」


「そういや、誰だ?」


 ユキの相手は誰だ誰だと、あっちゃこっちゃでざわめく。

 私のことは見えていないんでしょーか。

 うん、見えてないよね。

 物理的な意味ではなく常識的な意味で。


『ちっちゃいマスター』


 物理じゃないってゆーとろーに!?


「にゃうーん」


 アヴィーまで肉球でほっぺたぷにぷにしてくんな気持ちいいね!?


『(カタカタ)』


 ……なんか、ユウキが受付の人をどうにか納得させてお金払って準備してもらってるけど、その背中にいる大太刀がカタカタ言っとる。

 こいつ武器の形状だと声がユウキにしか聞こえねーから分かんねー。


『……天誅』


『(カタカタッ)』


 え、何、なんで天誅?


『別に気にしなくていいですよ』


 Sってば、アヴィーとも話せてレグとも話せるとか。

 何、サブキャラ連絡網でもあるの?


『サブキャラ連絡網』


「にゃああ……」


『(カタカタカタ)』


 だから約二名何言ってるか分かんないわ。


「って、あれ? ユキさんの隣にいるの、レイちゃんじゃない?」


「……本当ですね。話しの方は終わったんですかね?」


「まさかレイチェルちゃんが対戦相手とか、ないよなー」


「いや、そっすけど?」


 ノクトの声に反応して、ユウキが後ろへ振り返って当たり前じゃないかと言う顔で、その言葉を肯定した。

 しばしの沈黙。

 その沈黙は果たして、驚愕か、困惑か、理解不能か。


「「「えええええ!?」」」


 かくして皆、同じ反応を示す。

 うん知ってた。

 常識的に考えてアホゴリラと美幼女が戦うとかないよね。

 まあこのゴリラも美人ではあるけども。


『違う、そうじゃない』


 ツッコミありがとよ。


 ルーリアが即座に私に近づいて来た。


「レ、レイちゃん!? 本当なの!?」


 こいつ私の正体知ってるくせになんでそこまで心配するんだ?

 あ、違うわ。

 これ興奮と期待の目だわ。

 バッチし信頼されてたねごめんなさい。


「残念ながら本当だよ」


「凄い! じゃあレイちゃんの本気が見れるってことだね!」


 一切心配ナッシングですね。

 もしかして、私が勝つとでも思ってる?

 私はルーリアに顔を近付け、小声で告げる。


「……あのねえルーリア、今の私じゃこいつに勝つなんて無理だから」


「えっ? いつも手加減してるのは、力を隠すためじゃないの?」


「それだけじゃないよ。私がもしこの肉体で全力なんて出せば、多分死ぬ」


「えっ……」


 ルーリアが理解不能という顔をする。

 いや、普通に考えて無理でしょ。


「だって私は本来神で、この肉体は作り物の人間の体だよ? 一応丈夫ではあるけど、それでもし神の時レベルに全力なんて出したら、人間の体なんて悲鳴上げて壊れちゃうって」


「……それぐらいに違うんだ」


「当たり前でしょ。……でもまあ、それは神としての本気を出した場合の話」


「えっ?」


 私は顔を離して、ニヤッと自信を持った笑みを浮かべる。


「このゴリラに勝てる気はしないけど、この肉体で出せる範囲の全力でやれば、そこそこいい闘いは提供出来るはずだよ」


「か、かっこいい〜」


「まあそうしないと、興奮したこいつに殺されるし」


「わぁ〜……」


「今レイレイが本気と申したかー! ガチでやってくれるんすね! くれるんすね!」


「ぎゃーす! 抱き上げるなー!」


 のぉぉおお!

 抱き上げられてクルクルされたら酔う!

 脳みそ酔う!

 ぐるぐるぐるぐる……。


「ってやかましいわ!」


「ふぶっ」


 ユウキの腹に肘鉄を食らわして地面に着地する。

 闘技場の結界装置を稼働させに行っていた受付嬢が、受付に帰ってくる。


「お待たせしました! いつでも出来ますよ! ……本当に、お二人の対戦でよろしいんですね?」


「その通りっす」


「問題ないです」


「なんだか心配ですが、お二人共納得しているなら、よろしいでしょう。ギルド側による審判は必要ですか?」


 ユウキが私の方を見る。

 私は首を振った。

 多分、判定が難しくなると思う。

 それに、こいつとしても私達の間で上手いこと勝敗決めた方がいいだろう。

 大抵あまりにも戦いが激化した時には、死亡者が出る前に受付嬢が止めるが、まあ大丈夫でしょ。

 ……こいつが興奮で理性を無くしたりしない限り。


「いらないっす。自分達で決めるっすよ」


「分かりました。ではお二人共、こちらへどうぞ」


 受付横の柵の扉が開き、入場出来るようになる。

 私はそこそこの広さの闘技場をぐるっと見渡しながら入って行く。

 円の半分程は石の柵で仕切られた野次馬共が立ち見できる観戦場で、もう半分は五メートル程の壁である。

 上はポッカリと空いているが、雨の日は雨が入らないように、屋根用の結界が張られるという便利仕様。


 ちなみに仕組みとしては、結界に触れた水分を蒸発させる、的な感じである。

 下から水分が来た場合はどうなるか?

 下からは無反応で、すり抜けていきます。

 あくまで上からくる水分のみである。

 そして今日はお日様がそこそこの眩しさです。


 石の円状の床は程よく硬いが、このゴリラが殴ったらヒビが入るだろう。

 魔法の組み込まれた石なので、後で直すのは差ほど難しくはないが、修理費は被害面積に比例して払わなきゃいけない。

 まあ、こいつは無駄に金持ってるし、そこら辺一切気にせず斬りかかりに来るんだろうなぁ。

 あーやだやだ。


 ユウキは入って向かい側の壁の近くで、大太刀のレグを背中から引き抜き、地面にガキンっと突き立てた。

 私も肩に乗ったアヴィーを、その近くに置いた。


「お留守番っす。何せ、レグは今回使えないっすからね。ハンデでもあるし、どちらかってーと呪いの方の意味で」


「まあ、こいつからの攻撃、私は全部無効化するからねぇ。しょうがない。それに、もし当たったとしても、私簡単に死ぬし」


『(カタカタカタッ)』


 大太刀が笑うように震えた。


「だまらっしゃい」


 ユウキが蹴る。

 そこそこ強めに。

 大太刀はその場でピタリと黙って動かなくなった。

 何言ってるか分からなくてもなんとなく分かる不思議。


 私はアヴィーの隣に、サイドバックも置いた。

 普段は気にならないけど、こいつとの戦闘じゃ流石に気が散ると思う。

 というか、間違ってユウキにバッグ切られたりしたら大惨事。

 というわけで、置いておくに限る。

 向こうとか組織の奴らに渡すのも面倒だし。


「アヴィーも、私のバッグ守りながら大人しくここで待ってて」


「にゃー」


「流れ弾くらい、自分で防いでよね。あ、なんならそいつの刀身の影に隠れてたら?」


「にゃーん」


 カリカリカリカリ。


『(カタカタカタカタッ!)』


「あーもー、デビにゃんってば、あんまりあーしの相棒をいじめないで欲しいっす」


「にゃうん」


「まあなんか変なことしようとしてたら、容赦なく引っ掻いていいっすけど」


「にゃー」


『(カタッ)』


 何やってんだこいつら。

 謎の茶番である。

 ちょっとだけこの武器悪魔が哀れに思えて……は別に来ないね、うん。


「ところで、デビにゃんってなに」


「デビルにゃんこでデビにゃんっす」


「適当だなぁ……」


 そのまま私とユウキが向かい合って立つと、闘技場全体に魔力が走る。

 そして、壁や石の柵に沿うようにして結界が張られる。

 この結界に、高さの上限はほぼない。

 普段は十メートルほどだが、もしプレイヤーが高く跳んだ場合は、結界が即座に上へと伸びていく。

 まあこの結界のおかげで、外に衝撃はいかないし、部外者も入ってこない。


「んじゃ、さっき向こうで決めたルールをもう一度確認するっすか?」


「はいはい。あ、でもちょっと待って。……防音の結界よろしく」


 私がそう指示を出した瞬間、不可視の防音の結界が、闘技場内の衝撃吸収の結界の内側に貼られる。

 仕事が早いようで。


「ありがと。んでまあ、お前達も、自分で自分の身は守ってよね。そこまで気を使うとか無理だから」


「(ご忠告、ありがとうございます)」


 そう〈念話〉が届き、後ろにあった僅かな気配が離れる。

 すると突然、私の脳内に四人以外の、ユウキの発動した〈念話〉が届いた。


「(あーしらもこれじゃ駄目なんすか?)」


「(いや、〈念話〉だと、盗聴される可能性もあるじゃん。組織の信頼出来る装置を使った方がいい。ギルドの所有してる結界を勝手にいじるわけにもいかないし。あと、お互い無言で向かい合ったままってのも怖いじゃん)」


「(なるほど。じゃあこの防音の結界は内部の声が外に漏れない感じっすか?)」


「(どちらかというと、聴いた言葉をきちんと認識することが出来ないって言った方が正しいかも。あと、外から私達を見た時、口元に謎のぼやかしが入る)」


「(謎のぼやかし。まあ、一応理解したっす)」


 ユウキが苦笑いしながら理解してくれたので、私は本題を普通に喋ることにした。


「まず、一つ目のルール、というかお前のハンデ。お前は魔法やアクティブスキルを一切使ってはいけない。純粋なステータスや、バフスキルの効果のみで闘うこと。ちなみに私はなんでもよし。今の私の全力でやってやんよ」


「了解っすよー。ズルはしないっす!」


「まあズルしようとしても無理にするため、うちのとあるチートでお前のスキル封じさせてもらうけどね」


「さっすが神様。裏チートっすね?」


 勿論裏チートという名のSである。

 S、今すぐこいつのアクティブスキルを、一時的に使用不可に。


『了解しました。……完了です』


 うむ。

 これで、うっかり使っちゃうこともないでしょ。

 うっかりで突然アクティブスキル使われたら本気で死ぬ気しかしないからね。

 そんな事故死やだ。


「二つ目、武器は互いに同じ武器。それも、お前のスキルで作成した鉄の剣のみ」


「これっすね」


 ユウキがヒュンっと剣を投げて寄越してくる。

 私は狼狽えもせず、回転した剣の柄をキャッチする。

 うん、丁度いい長さと重さの鉄の剣。

 一応耐久力はそこそこあるんだろうなぁ。

 勿論、ユウキも同じ剣だ。

 でもまあ、こいつ色んな武器を扱うことに慣れてるから、さっき作ったようなものでも問題ないのだろう。


「別に剣が完全に壊れたとしても、殴るだの蹴るだの出来るし、武器の破損は勝敗にはいれないと」


「その方が最後まで楽しめるっすよね!」


「頼むからガチの物理で殺さないでね?」


「そこはほら、さっきレイレイが裏チートで打ってきたあの謎攻撃で止めてくれっす!」


「自分で自分を止められる自信ないんかい!」


 まあいいや。

 どうせ本気で闘い始めたこいつは、本当に手加減とか下手になるからな。

 S、もしヤバそうだったら、こいつを止めてね。


『ラジャー』


 二つ目のルールもこれでよし。


「そして三つ目、勝敗について。これはどっちかが気を完全に失うか、降参したら負けってことで」


「決闘は勝者を決めて終わるのではなく、敗者が決まって終わるものーってね!」


「誰が上手いこと言えと……。……ま、こんなところかな」


 最後に不安なのは、外野についてだけど……。


「よーし! 久々に本格的な決闘だ! さあ賭けた賭けた!」


「おいおーい、どう考えても駆け出しの方が不利だろー」


「こんなん勝敗になるのかねえ?」


「まあ、駆け出しに期待を込めて、ちょっと入れてみても面白そうじゃねえ?」


「俺は見るだけでいーいや」


 うん、見事にアホどもがアホなこと始めやがった。

 楽しそうだね。

 うん、楽しそう、なんだよなぁ。

 見えなくしちゃうのは、なんだか勿体ないし、可哀想な気がする。


 ……あーあ、本当に、そろそろ無理して隠すとか、やめてもいいのかもなー。

 ルーリアの言い方だと、徐々にバレてるものはバレてるらしいし。

 別に知れたところで、私が基本ソロを貫くのは変わりないし。

 まあ、ルーリア達とパーティー組むのは、悪くないけども。


 それにこいつの方が、大抵目に残りやすいからなー。

 私は多分負けるんだろうし、そこまで大きな噂になることも無いでしょ。

 いや待てよ?

 むしろ、よりこいつの方に注目が集まりやすくなるようにすればいいんじゃない?

 そういう魔術をこの場にかければ、そこまで酷いことにはならないんじゃない?

 うん、ルーリアみたいな、私をよく知るやつは騙せないかもしれないけど、野次馬共には効くかもしれない。


 ……魔術構築。

 ……構築完了。

 発動!


「……んっ? 今レイレイ、何かしたっすか?」


「いや何も」


 ふうっ。

 これで私の実力が大きく広まることは無いでしょ。

 どうせしばらく冒険者やれば、自然と有名になっていくのは私だから仕方ないこと。

 それでも、ゆっくりゆっくりやって行きたいのだ。

 その方が楽しいし、力になるからね。


「受付嬢のお姉さん、開始の合図、お願いしてもいいですかー?」


 私は後ろの方の、受付嬢の控えの方に声をかける。

 審判を頼んだ時は、入り口の反対の壁の中央辺りで立っているんだろうけど、今回は審判なしだからね。

 でも、開始の合図だけはやってもらおう。

 私が頼むと、受付嬢はずっとやりたかったのか、とても嬉しそうな顔で開始の合図用の魔道具を用意した。


「かしこまりました! ではお二人共、準備はよろしいですか?」


「いつでもおっけーっす!」


「問題ないよ」


「では、五つ数えたら開始です! ごー!」


 私とユウキが、互いに剣を構える。


「よーん!」


 野次馬共のざわめきが、収まり始める。


「さーん!」


 向こうから知ってる奴らの小さな声援が、聞こえた気がした。


「にー!」


 私とユウキの集中力が、一気に高まり、周りの全てを思考から切り離す。


「いーち!」


 果たしてそれは、スキルか、本物か、極度の集中による思考の加速が、その場の時を停止させたように見えた。

 目の前にあるのは、ただ一つ。

 今から全力でぶちのめしてやる相手だけだ。


「始めっ!」


 そして、都市ビギネル冒険者ギルド特別闘技場に、いつぶりか、闘いの爆風が轟いた。







 ********



『今回は休憩』



S『戦いの火蓋が切って落とされましたー!』

アヴィ『なになになになに』

S『あ、ちなみに次回は当機達の回だそうです』

レグ『マジかよ』

S『サブキャラ組の特に活躍もない話をどうぞお楽しみに』

アヴィ『うわあ一体この子はだあれ』

レグ『ぶっ壊れたんだろ多分』





S「どうでもよくはありませんが、ちょっとした朗報。これが投稿される数日前にレビューを頂きました」

レイ「マジか。ついに私の素晴らしさに人間達の理解が追いつk『天誅』びゃああ!?」

S『そうやって調子乗るとすぐ堕ちるのがパターンです。やめましょう』

レイ「めっちゃ冷静だね!?ごめんね!?」


レビューに感想、読者様には感謝感激雨あられです。

これからも精進しますよ!

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