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神は好きに生きるそうです。  作者: 空の宙
3章 雪と氷のお城で遊ぶそうです。
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52 雪は淡い夢を降らす

宙:基本的に、3章は雪とか氷とかに関係するワードを入れたタイトルにするつもり。

S『さーて、ネタ切れでタイトルが雑になるまであと何話ですかねー?』

宙:死のカウントやめて!?

 


「ゆ、きーーー!!」


 純白の、見渡す限り雪で埋め尽くされた雪原の中、一人の赤い童女が姿を現す。

 そしてそのまま、飛び出した勢いを殺すことなく、ズッシャァアア! と漫画の如くダイブした。

 だが思ったよりも深く積もっていたのか、その子供の体は雪に埋もれて周りから見えなくなってしまう。

 上手いこと嵌ってしまい、その子供は動けなくてモガモガと無様に蠢く。


「もう、何やってるのよ」


 咎め気味に呆れた顔で赤い子供を体を引っ張ったのは、辺りの雪と同じくらい白い少女。

 その白さはまるで、雪景色に溶け込んでいるようにも見える。

 だが同じような白だというのに、彼女の白さの方に自然と目がいきそうな白さである。

 白い少女に拾い上げられた赤い子供は、幼く、にへっと無邪気に笑った。


「だって、ここまでの雪は初めて見たから、楽しくって」


「だからって、埋まる必要はないでしょう?」


「ふわふわのサクサクだから、雲みたいに見えたの!」


「雲も雪も、どうせただの水じゃないの。どちらも乗ったりは出来ないわ」


「むー、そんなの知ってるもーん。言っただけだもーん」


 赤い子供は自分で立つと、白いワンピースについた雪を払い、くちゅん、とくしゃみをした。

 どう見ても寒そうな赤い子供を見て、同じ白いワンピースを着た白い少女は寒がりもせず、何処かから白い大きめのコートを取り出して赤い子供に羽織わせた。


「無理せず普通に服を頼ればいいのに。それか、やっぱり私が発熱の魔術をかけてあげようか?」


 大人しくコートを羽織った赤い子供は、ふるふると首を振った。


「ううん。大丈夫。折角新しい魔術を教えてもらったんだから、頑張って練習しないと」


「そりゃあ寒ければ効果が分かりやすいかもしれないけど、寒くて集中出来ないと逆にやりにくいでしょう? 急がなくても時間なんていっぱいあるんだし」


「むう。早く覚えて、ルルのことあっためてあげたいのに」


 そう言われた白い少女ルル、ルルディーは、一瞬キョトンとし、そして破顔した。

 そのまま赤い子供の手を取り、そっと口付けする。


「レイは傍にいるだけで、陽の光みたいに温かいの。だから私は大丈夫よ」


 赤い子供、レイは、少し不服そうな顔をした。


「ぷぅ。それはそれ、これはこれだもん。レイが頑張りたいから頑張るの」


「ふふ、そうね。偉い偉い」


「えへへー」


 一面純白の景色の中、赤と白がほのぼのと、雪を魔術で溶かして道を作りながら歩く。

 しばらくすると、僅かに顔を出していた太陽が雲に隠れ始める。

 そして辺りに冷たい空気が吹き、二人の体を凍えさせる。


「……なんだか、荒れてきそうね」


「今日は何処で眠るー? また雪のおうち作るー?」


「うーん、あれも楽しいけど、安心して眠れるように、出来ればどこか洞窟がいいわね」


 ルルディーにそう言われて、辺りをキョロキョロと見渡す。

 その目に千里眼となる魔術をかけて見ていると、遠くに岩山の岩肌と、そこに空いた穴を見つけた。


「ルル! あそこ! 洞窟がある!」


「どこどこ? ……本当ね。なら今晩はあそこにしましょうか」


「うん!」


 二人はサクサク、サクサクと、雪を踏みしめて歩く。

 太陽を覆った雲はやがて曇天となり、二人の姿に影を落とす。


 洞窟に着いた二人は、中を確認する。

 少々奥に続いているようだが、何かがいる気配はない。

 程よい広さのある洞窟だ。


「丁度いいわね。じゃあ入口を塞ぎましょう」


「今日はレイがやる!」


 レイがそう言い、洞窟の入口に手をかざす。

 しばらくすると、入口付近の雪がズズズッと少しずつ動き始め、隆起して壁を作り始める。

 しかし、その速度はお世辞にも早いとは言えず、冬風に凍えながら頑張るレイをルルディーは手伝おうかと思ったが、折角レイが頑張っているのだから、と自分は寝床と食事の準備をすることにした。


 ルルディーが布団代わりの少し厚みのある布を敷き、その隣で食事の準備をし始めたころに、レイは雪の壁を完成させた。

 勿論、見えにくいところに空気穴はちゃんと空けてある。

 レイは少しだけ汗の滲んだ額を拭い、ルルディーの所に駆け寄り、隣に座った。


「雪の壁出来た!」


「頑張ったわね。ちゃんと綺麗にできていているわ」


「外には認識阻害の魔術もかけておいたよ。これで安心して眠れるね! ところで、今日のご飯は何?」


「今日はお鍋よ。前の村で貰った、小麦を練ったものもあるわ」


「やったー!」


 レイは子供みたいに、両手を上げて大喜び。

 その姿に微笑を浮かべながら、ルルディーはどこからか食材を取り出す。


「じゃあ、まずは具材を炒めるから、火をつけてくれる?」


「火をつけるのはもう慣れたよ!」


「ふふ、頼もしいわね」


 レイが鍋の下に火をおこし、鍋に熱が入り始める。

 しばらく、二人で共に具材を切り分けたり、煮込んだりして、鍋が完成した。

 木のお椀に盛り付け、二人してふはぁと息を吐いた。


「おいしぃ〜」


「温かくっていいわね」


「ルルディーの料理はなんでも温かくておいしいよ〜。こう、体の中から、熱以外のなにかでもポカポカする感じ」


 片手で胸を抑えて、表現に困って首を傾げるレイ。

 ルルディーは嬉しそうに、くすりと笑う。


「……それはきっと、レイを思って作った、愛情ってものじゃないかしら」


「あいじょう……」


 レイは自分の胸を抑えて、きゅっと握る。

 そして、決意したように顔を上げて、満面の笑みを浮かべる。


「レイも、ルルディーみたいに暖かい料理を作れるようになりたいな。ルルディーのこと大好きだから、きっとルルディーをポカポカに出来るよね」


 そう言って胸を張るレイの頭を、ルルディーは優しく撫でた。

 レイはくすぐったそうにして、その手に頭を擦り寄せる。


「今でも十分温かいから、これ以上ポカポカにされたら困っちゃうわ」


「ふへへ〜。二人で温かくなりすぎちゃって、きっと雪みたいに溶けちゃうね〜」


「あらあら、溶けたら大変よ」


 二人は仲良く料理を食べ終え、ルルディーが食事の道具を自分の所有する異空間に放り込み、一緒の布団に入り込んだ。

 雪の壁の穴から入り込む隙間風が、ぴゅうぴゅうと冷たい音を立てる。

 どうやら吹雪いているようで、洞窟内は冷え込んでいく。


 それに気がついたレイが、早速温かくなるための発熱魔術を自分とルルディーにかける。

 しかし、まだまだ弱いそれは、ほんの少し温かくなるだけで、安心して寝れるほどではない。

 だが、ルルディーはそれだけでも嬉しかったのか、布団の中でレイを優しく抱きしめた。


「ありがとう、レイ。凄く温かいわ」


「んぅー。でも、まだまだ全然、上手く出来ない……」


「それでも、レイのその心だけでも、とてめ温かいから、これでいいのよ」


「……もっと、頑張るもん」


「ふふ、レイはとても頑張り屋さんね」


 二人は互いの温もりを感じながら、目を閉じる。


「……おやすみ、レイ」


「おやすみなさい、ルルディー」


 そうして、雪原の隅の洞窟で、一つの赤と、一つの白は、眠りにつく。

 しんしんと降り積もる雪は、そんな二人の寝息を、静かに飲み込みながら、積もっていく。

 しんしん、しんしん、しんしんと。

 深く、深く、しんしんと────。





 そんな夢を見た、今はひとりぼっちの赤色は、一人現実で目を覚ます。






 *****



「ん……う……」


 ……温かいような、重たいような……。

 なんか、そこに、いる、ような……。


「んぅ……あ……?」


 眠たく重い瞼を上げ、私は視界に映るものを見た。

 なんか、黒い、何かがいる。

 ……黒い、子猫……?


 私はのそりと体を起こし、自分の腹の上にいたものを見た。

 そして、じっくりと自分の目でその正体を看破すると、ようやく誰がいたのか分かった。


「……アヴィー?」


 そう言って私は、腹の上で堂々と寝ていた短足のマンチカンみたいな、黒い子猫の首根っこを掴みあげた。

 すると向こうも目を覚まし、私と目を合わせ、


「……にゃー」


 とても、わざとらしい猫の声を出した。

 それはもう、下手くそモノマネ選手権かと言わんばかりに、酷くわざとらしい猫の鳴き真似を。


「……えっと、お前、何してんの?」


「にゃ、にゃー」


「いや、にゃーじゃなくて。何してんの?」


「にゃー……」


「……うざい堂々巡りするようなら殴るよ?」


「にゃ、にゃー! にゃー!」


 ……殴っていいかなー。

 子猫だとしても中身こいつだし、殴ってもいい気がするの。

 動物愛護団体にはちょっと目を瞑ってもらいたい。

 一応言うが、こいつ猫じゃないし。

 そう思って拳を上げると、アヴィーは私に掴まれたままじたばたとした。

 暴れるぐらいならまともに喋って欲しいんだけど。

 そう思っていると、横から声がした。


『おはようございます、マスター。なんですか? その馬鹿悪魔に天誅でも下しますか?』


 おうやったれ。


『ちなみに、なにをやらかしたんですそれは?』


 いや、なんかまともに喋ってくれないんだけど。

 にゃーしか言わねーのこいつ。


「にゃー、にゃー」


『……ああ、えっと、はあ。貴方、アホですか』


「にゃ、にゃあ。にゃーにゃー、にゃにゃーにゃー」


『いや知りませんよそんなこと。自業自得でしょう』


「にゃー……」


 ……え、なになに?

 二人して私のことハミってんの?

 なんか疎外感あるんだけど、何話してんのお前ら?


『え……あー、あー……。なんて言えばいいんでしょう』


 え、なに、本当に何の話?

 こいつはなんで喋んないの?

 分かるんなら説明プリーズみー。


『えーと、なんというか。まずその猫型馬鹿悪魔は、本体じゃないみたいです』


 ん? 本体じゃない?

 ……あー、ホントだ。

 眠くて気付かなかったけど、本来のアヴィーの魔力の半分も無いね。

 つまり分身体?


『みたいですね。本人はまた、この星の外に行き、色々しに行ってるんでしょう』


 なんだ、もういっちゃんたんだ。

 栄養補給しなくて良かったのかな?


『別に餓死するんならそれでもいいんじゃないですかね。当機的にはどうでもいいです』


「にゃー……」


 Sさん貴女、アヴィーのことひょっとしなくても嫌いだよね。


『まあこんな馬鹿悪魔、嫌いになる以外の選択肢無いですし』


「にゃーう……」


 まあ無理に仲良くしろとは言わないけども。

 んで? こいつが分身体なのと、喋んないのがどう関係してんの?


『なんか、その、今回の一件もありましたし、マスターのことが心配で、分身体を置いていったそうです。ですが、なんの手違いか、〈念話〉を使えるようにしていくのを忘れたとかなんとか。当機が聞こえるのは、その、同じ分身体同士、波長が合う的なあれで……』


 ふーん?

 なんか分かりにくいけど、ようは喋れない猫型アヴィーが、護衛替わりに置かれた、見たいな?


『まあこれだけ弱いと、ぶっちゃけ大して役に立てなそうですけどね』


「にゃーん」


『……ちょっ、なんですか馬鹿悪魔。なに当機のペンダントに近付いて……。ちょ、やめ、やめなさい。爪でペンダントをカリカリしてくるのはやめなさい。やめてください。すっごい不快です。お願いですからやめてください。これはマスターが特別に作ってくれた大事なものなんです。本当にやめてくださいいやマジで本当に』


「にゃー」


『やめなさあああああ』


 ……なにじゃれてんのやら。

 ほらアヴィーも、いくらそれが丈夫だからってSを虐めてやんな。

 私はアヴィーを掴んで、ペンダントから離してやる。


「うにゃー」


『……やっぱり当機この馬鹿悪魔嫌いです。ところで、当機とマスターの〈念話〉仲間に、このアホいれますか? 当機的には要らないんですけど』


「にゃー!」


 まあ、入れてやってもいいんじゃない?


『っち。しょうがないですね。マスターもこう仰ってますし、当機の優しさで特・別・に、入れてあげますよ、可哀想な馬鹿悪魔』


「うにゃー……」


 ねえ、Sさんがすっごいグレてるんだけど。

 こんな子だったかしら……。


『こんな子ですよ。はい、リンク完了です』


「にゃー」


 ん、あれ?

 〈念話〉繋がったはずなのに、こいつの声聞こえないけど?


『本人にこちらのは聞こえるけれど、向こうは向こう自身が意思を発信出来るように設定していないと無理なので、そこは無理です。つまりこいつは一生ただのにゃーにゃー喚くアホ猫です』


 なにそれすっごい哀れ。


「にゃ……」


 まあ、頷くとかは出来るでしょ。

 とりあえず、これからの生活に、お前も着いていくってことでおーけー?


「にゃ!」


 アヴィーは元気よく首を縦にふった。

 パーティーに猫悪魔が増えたよやったね!

 つっても仲間同士が不仲だけどな!

 頼むから変なことはしないでくれよ?







 *****



『……なんで嘘をついたのさ? 本当は、ボクがルルディーの怒りを買って、バツとしてレイとだけ意思疎通が出来ない上に、弱体化した分身体で守るよう強制されただけなのに』


『別に馬鹿悪魔のためじゃないです。マスターのためです』


『レイのため?』


『……マスターがルルディー様の名前を出す度、寂しげな顔をするのは知ってるでしょう。だからですよ』


『なるほど……。レイを悲しませないために徹底して隠す、か。本当に一途だよね。まあボクも君の事言えないけど』


『はぁ……。本当に、貴方って腹立つ存在ですよね』


『あははー、別にそれほどでもー』


『褒めてないです。にしても、これからずっと着いてくるつもりですか?』


『まあ、そう言われたんだから、そうするしかなくない? ルルディーを余計に不機嫌にするよりか、きちんと言うこと聞いて、レイの前で可愛い猫として癒しとしてレイの一番近くに居た方がずっといいでしょ』


『……折角マスターが当機のこと結構見てくれるようになりましたのに』


『聞こえてるよー。君って、実は凄く嫉妬深いよね』


『嫉妬……。嫉妬……?』


『おおーっと、これは自分を理解していない模様だなぁー』


『嫉妬なんて、そんな、人間じゃあるまいし……』


『……嫉妬も、大事な感情の一つだと思うけど? それを学んで、レイのために生かすのも、レイのためになるとは言えないかな?』


『……考えて、おきます。……とりあえず、着替え途中のマスターをじっと見るのはやめてください。気持ち悪いです』


『いや悪魔だから性欲もなければ初めからレイの裸体なんかに興味はないんだけど……。変な偏見はやめてくれるかなぁ……』


『なんとなくその目線が腹立つんですよ。……ちょ、なんですか、また近づいてきて』


『カリカリ』


『あああああだからそれはやめてくださいやめなさいいや本当にやめてください低級の物理攻撃なら無視する魔術がかかっているにしても本当にやめてください』


『……ねえ、このペンダント、よく見ると色々魔術かかってるけど、本当になんなのこれ?』


『物理無効、魔法無効、熱変動無効、その他諸々の魔術が込められた、どこに持って行っても壊れない、安心安全のSさんペンダントですがなにか?』


『相変わらずレイの魔術の使い方は変な方向にいってるなぁ……』


『そう言いながらカリカリするのやめてもらえますか本当にマジでやめてくださいってばあのホントにあああああ』


「(こいつら、意外と仲良いな……?)」


 止めてあげてください。







 ********



『以下の用語とその解説が追加されました』



「人物:悪魔:アヴィーラウラ」

 ルルディーによって猫にされ、今回からレイに着いていく予定の悪魔。

 詳細:ルルディーに呪いをかけられ、Sとのみ言葉での意思疎通が可能で、レイとは首を縦横に振る程度しか意思疎通が許されない。

そんな哀れな分身体にされ、その状態で隣にいろと言われ喜んで隣にいることにしたらしい。

 とりあえずSに嫌われているが、本人は世界中の全てから嫌われたって別にいいと思っているので、特に気にしてない。

 が、レイがとても重宝してる存在みたいだから、Sと仲良く出来なくても程よくちょっかいかけて成長を促してやろうとしてるとかしてないとか。

 補足:こいつのことは嫌いです、以上。



「場所:基地:組織保有秘密基地(都市ビギネル地下)」

 レイが療養のために使っていた組織保有秘密基地。

 詳細:一見隔離空間のようだが、一応都市ビギネルの下水道の横道の方にちゃんとした入口もある。

 が、普通に入ろうとしても、その扉の向こうに部屋があるように見えないし、干渉も出来ない。

 きちんと魔術解除をしてから入場しなければならない。

 基本的に、魔術解除の魔石を持って入場する。

 中にはシャワールームと、寝室(内装、二段ベッドに鏡と棚)が三つに、壁付きキッチンが設置されている。

 奥に組織本部への転移装置のある部屋がある。

 補足:ここだけ別世界というか、地球の普通の洋式の家みたいなんですよね……。



宙:ガチ幼女のレイが、可愛すぎて、尊すぎて…(吐血)

S『あん?なに当機のマスターに変な目向けてるんですか○しますよ?』

宙:ねえ待って怖い。ガチモンペ怖い。

アヴィ「にゃーお……(なにやってんのさ……)」

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