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神は好きに生きるそうです。  作者: 空の宙
2章 ダンジョンは神にとって波乱万丈の地になりそうです。
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46 甘々毒々雷々

【ゲロ甘注意報】

S『アホみたいな注意報が上部に置いてあるんですけど……』

レイ「そういうことなんだよ察しろ」

 


【秘密基地 扉の前にて】


「そういやお前、今回よく来たな。いつもどんな命令がきたって孤児院の教師役に齧り付いて離れねぇのに」


「マスター絡みの命令は断れないだろう。それに、他のやつからも薦められた」


「……成程、幼女マスターか」


「十七歳やら二十歳やらの子供姿だと思っていたが、まさか幼女だったとは……」


「流石にお前が幼女に手を出すようなクズとはおもってねーが、マスターだろうと興奮するのは流石にドン引きだぞ」


「いや、正直そこまで興奮していない。驚きの方が強いな」


「なんでだ?」


「幼女の何がいいかと言われたら、社会的弱者であるからこそ、甲斐甲斐しく世話をして教育して、立派に成長する過程を見ているのが尊く素晴らしいからに決まってるだろう? 外見が幼女でも、中身が既に完璧なマスターだと分かっていれば、自分の対象ではあまり無い。あくまで外見だけだ」


「成程分かりたくなかった。そしてまともにロリコンの説明をされてしまった。まともな脳みそなくせして、まともじゃない性癖ってどういうことだ」


「男装女に言われたくない」


「うっせーな! 俺はかっこいいからいいだろ!?」


「自分で言うか……」







【アレン視点】



 さあ、まずはどうしよう。


「アレン、やっぱり前に選んだその服かっこいいねー。似合ってるよ」


「スーもいつも可愛いのに更に可愛くて俺の目のやり場に困る」


「……うふ、ふふふっ」


 俺の恋人が可愛すぎてなんも考えらんねぇ。

 やばいやばい。

 マジで可愛すぎてとりあえずどこかてかいい匂いだしウレクと相談してああ笑顔可愛いし何をしてあわわわ可愛いに犯されて馬鹿になるってかなってる。


「……兄さん、考えてることが物凄く顔に出てるよ」


「黙れ弟。俺のスーの可愛さのパワーを舐めんな」


「膝から崩れ落ちそう?」


「全身が溶けそう……」


「それは大惨事だよ……」


 スーと同じく私服になったウレクとメルウィーが俺達の傍に寄って来た。

 俺達は今、マスターに休暇を言い渡されて、任務用の服というのもあれなので、組織に戻って、こっちの世界の私服に自室で着替え、お金やらなんやらを持って来た。

 まあ、勿論下には非常時用に色々装備は仕込んであるが。


 そしてとりあえず、マスターに言われたとおり都市ビギネルに出てきたはいいのだが。

 いや、困った。

 スーレアが可愛すぎて困った。

 いや違う、違く無いけど事実だけど違うとりあえず落ち着け俺。

 予定が決まらなくて困っているのだ。


「折角の休暇なんだから、ちゃんと計画的に行動しましょ?」


「なら、女性二人は何処か行きたいところはある?」


「うーん……」


 メルウィーが顎に手を当てる。

 もうメルウィーとウレクに全て任せてしまえばいいんじゃないだろうか。

 正直俺はスーレアの行きたいと思うところなら何処でもいい。


「アレンはどこか行きたいところある?」


 前言撤回、ちゃんと考えよう。

 こんな綺麗な瞳に問いかけられて何処でもいいとかハッキリしない答えを返すのは男じゃねぇ。

 行きたい所、行きたい所……。

 一応マスターが冒険者活動の拠点とすると言ったこの都市のことはリサーチ済みだけど、その中でどこに行きたいかって言われたら、正直分からん。

 んー、俺が行ってみたくて、スー達も楽しんでくれそうな所……。


「服屋、とか?」


「え、兄さんが服屋? いつもスーレアが選ぶ服以外興味無いのに?」


「ちっげーよ!スーとメルウィー用の服だ!その、あの、スーの色んな服を見てみたいと思っ……て……」


 俺は途中で口ごもる。

 物凄く恥ずかしいことを言っていると気がついた。

 何を言ってるんだ俺はァァ!?


「じゃあそうしよう! スーはそれでいいよ!」


 おっと流石俺の女神。

 思いっきり賛成してくれた、それはもう嬉しそうに。

 良かった、変な回答しなくて良かった。

 でもスーなら、優しいから俺が変な回答したとしても程よくフォローをくれたんだろうな。

 ああやばい、また馬鹿になってる。

 くそ、恋は猛毒だ畜生。

 簡単に蚕食されちまう。


「まずはお買い物ってわけね。いいと思うわ。ウレクも何着か選んでくれる?」


「いいよ。メルのセンスに負けないように頑張るよ」


「ふふっ、楽しみにしてる」


 ……何故俺の弟は恋人の前でもこんなにもスマートでいられるんだ。

 育ち方は同じはずなのに何故だ!?

 俺なんていつもキョドっちまうのに!


 いや、今からクールになれ、俺。

 そしてスーの笑顔を見るのだ!


「スーはアレンが選んでくれるものはスー似合ってるって信じてるけど、アレンが一番可愛いと思ったもの選んでね!」


 っっっあぁぁあぅぁあうあ。





 とりあえず都市ビギネルの服屋に着いた。

 そこそこ裕福な層向けの、いい生地や凝ったデザインの服が置いてある服屋だ。

 ……ああ、昔だったらこんな店を目にすることを想像する余裕もなかったのに、その上恋人と一緒に入ることになるなんて、人生何が起こるか分からねえな。

 やばい変な汗出てきた。

 ぶっちゃけ今でも緊張する。

 組織に頼めば普通の服も仕立ててくれるから、こうやって服屋で買うことなんてあんまりない。

 スーと一緒に来るのもこれで数度目だ。

 慣れるのは難しい。


「いらっしゃいませ」


 店に入ると女性の定員が丁寧に挨拶する。

 これくらいの店だと定員もきっちり教育されてるものだ。

 そしてこちらを品定めする目も教育されたものだろう。

 良客かどうかを。


 そして品定めが終わったらしい目は、キラリと獲物を狙う眼光に変わる。

 どうやら、俺達の身なりからそこそこのものだと思われたらしい。

 まあ、組織ではいつも清潔にするように言われているし、今だってちゃんと整えてから来たからな。

 髪もスーとメルウィーのは櫛が綺麗に通りそうで、天使の輪のように輝いている。

 服だって安いもんじゃない。

 分かる奴には分かるんだろう。


 しかもその目には、僅かにマスターを感じさせるからかいの色が見えた。

 俺は知ってるぞ。

 これは俺達をバカップルだのなんだのからかうマスターの目と同じだ!

 なんか恥ずかしくなってきた!


「お客様、本日はどのような服をお求めでしょうか?」


「こちらの二人の普段着を購入しに来たのですが」


 即座にウレクが猫被りスマイルで対応する。


「ほほう、それはお出かけ用ですか?」


 目が怖い!

 いいのを買わせる気満々だろ!

 まあ似合うのだったら買うけどな!


「ええ、愛らしい二人を更に引き立ててくれる服を買いたいんです。ですが、僕ではこのお店の沢山の素敵な服の中からどれを選べばいいか迷ってしまいそうなので、いくつか候補を選んでもらってもいいですか?」


 うおぉぉいぃ!?

 ぬぁぜだ!?

 俺の弟はいつこんなに成長した!?

 こいつはいつから人前でこんな恥ずかしいことを言うようになった!?

 てかさりげなく俺のスーまで褒めてんな!

 俺の台詞だろ!

 まあ可愛いのは当たり前だが!


「お任せ下さい! お客様にピッタリのものをご用意させていただきます!」


 胸を張って宣言する女定員。

 張り切ってくれるなら助かる。

 俺だと脳内でシミュレーションしてそこで固まることがしょっちゅうあるからな。

 我ながら変態だと思う。

 だが可愛い服と可愛い恋人を、即座に脳内で合わせてしまうのは自然なことだと俺は思う。


「ところで、ご予算はどの程度でしょうか……?」


 まあ聞かれるよな。

 金のない客に用はない。

 当たり前だと思う。


 が、俺達はこの世界の影に広く根を張る組織の構成員。

 その給料は表の世界で働くよりずっといい。

 ただし、任務には命をかけなければならないものもあるので、ずっと大変だろうが、慣れてしまえばどうってことない。


「いくらでも。今は丁度懐が暖かいので、気に入れば全て買うつもりですよ」


 まあ着る機会はあんまり無いかもしれないけどな。

 正直、いつ招集されてもいいように、組織の服を着ていることが多いし。

 それでも、だからこそ気に入ったものは見つけた時に買いたい。


「分かりました! では試着室は奥にありますので、男性の方はそちらでお待ちください! 女性の方は一緒に何着か選びましょう!」





 試着室のカーテンが開けられる。


「どう、かな……?」


 どうかなというより俺がどうにかなりそうだ。

 なんてこったい。

 可愛いに可愛いしか重ねられない俺が恨めしくてこういう時だけオルヴィンの息をするように出てくる褒め言葉が羨ましくなるが、とにかく可愛い。

 スーレアとメルウィーが着たのは、胸元にワンポイントのリボンが着いた、いかにも可愛さを重視したワンピースだった。


 やっべーよー。

 マジでやっべーよー。

 脳みそどころか魂が溶かされそう。


 何も言わない俺に不安を覚えたのか、スーが俺に近寄ってきて、その小さめの体躯で上目遣いという最強の攻撃をしてきた。


「アレン、どう……?」


 っっっあぁぁあぅぁあうあ。

 魔力を放ってる訳でもないのにやばい眩しいぃぃぃ。

 お、落ち着け俺、落ち着くんだ俺。

 一言だ! 一言でいい!

 可愛いと言うんだ!


「す、凄く可愛いし、に、似合ってる……ぞ……」


 精一杯の声を絞り出してから目をそらす。

 やばい見てられん。

 目がイカれる。

 可愛さでもうなにも見えなくなりそうだ。


「えへへ、可愛いかぁ。スーも可愛いと思ってたのー。アレンにもそう思ってもらえて良かったー」


 俺からの褒め言葉を受け取ったスーはとても嬉しそうに顔を綻ばせた。

 今死んでもいいかもしれねえ。

 いや、スーや弟やメルウィーを残して、しかもマスターの許可無しに死ぬわけはないが、幸せで死にそうだ。

 やっべーよー、やっべーよー。


「ウレク、この髪型どうかな?お姉さんに変えてもらったんだけど……」


 そう言ってウレクに髪型を見せるメルウィーの髪は、可愛らしいリボンで一部が結ばれていた。


「勝手ながら、服に似合いそうな髪型に変えさせていただきました! あ、我々のお店ではこういった服に似合いそうな髪飾り、小物等も取り扱っておりますので、気に入ったものがあれば言ってください!」


 おっと商売上手め。

 確かにスーの髪型も、いつもただのショートヘアだが、今はリボンの髪留めを付けている。

 成程、可愛いに可愛いを足して可愛いになっていたわけか。

 俺は何を言ってるんだろうか。

 とりあえず可愛いんだよな、うん。


 ウレクはメルウィーの顔に触れて愛おしいものを見るような目をする。


「凄く似合っているよ。メルがこんなにも可愛かったんだって改めて理解させられるくらいに似合ってる」


「ふふっ、ありがとう。じゃあこれは買ってもいいかもしれないわね」


「スー、他にも色々見てみたい!」


「お任せ下さい! まだまだありますよ」


 成程、つまり服の数分俺は死ぬのか。

 服屋って言った俺、超万歳。





 結局、三セット程買ってしまった。

 五着程あったうちから、機能性やら素材の感じをちゃんと選んで三着だ。

 つまり五回死んだ。

 全部可愛すぎて女定員に固く握手をして出てきた。

 向こうも満足そうな笑みを浮かべていた。


 買った商品は一着はそのまま着て、残りはバッグに仕舞ったように見せて、〈空間魔法〉で収納した。

 つまり、今俺の横には愛らしすぎる妖精がいる。

 その妖精はクレープを食べていてご機嫌だ。


「アレン、スーのも食べる?」


「っあ、ああ」


「じゃあ、はい、あーん」


 っっっあぁぁあぅぁあうあ。

 スーがスーの食べかけのクレープを俺に差し出してあわわわわ。

 俺は恐る恐る口を近付けて、スーが食べていたクレープを食べた。

 でも勢い余ってなんでか顎にクリームを付けてしまった。

 は、恥ずかしい……。


 が、そのクリームをスーが柔らかな指でくいっと拭き取って、ペロリと舐めた。


「えへへっ、あまいねー」


 甘い、甘いな、スーが。

 もう通行人の一部から痛い殺気を貰ってしまう。

 悪いな、この幸せの空気は俺専用なんだ。

 テメーらに譲る気はサラサラねえ。


 ウレクとメルウィーも食べ終わったようで、立ち上がって次へ移動する準備をする。


「それで、今日はどこに泊まる? 流石に休暇なのに基地に戻る必要はないと思うけど。ていうか、そのためにマスターも僕らを外に出させたんだろうし」


「そういえばそうね。どうしようかしら」


 確かにそれを決めていなかった。

 安宿は、正直差ほど嫌ではない。

 昔だって別にいい場所では寝ていなかったのだから。

 すると、スーが明るく挙手した。


「あ、ならあの宿屋は?」


「あの宿屋?」


「ほら、マスターが泊まっていた、木漏れ日亭って宿屋。あそこの料理とか、実は気になってたんだ」


 そう言って、ウレクは照れた様な笑みを浮かべる。

 確かに、マスターもあそこを気に入っていたし、俺としても正直気になっていたからいいかもしれない。

 任務中は軽食を食べているだけだ。

 その軽食もそこそこ美味しいし、腹にたまるものだと言っても、いつも美味しそうに食べているマスターを見て、食べたくなってしまうのは仕方ない。


「いいんじゃね? 俺は賛成だ」


「僕も行ってみたいから賛成」


「私もスーちゃんと同じで食べてみたいわ」


「わぁい。やったー」


「それじゃ、あっちの道から近道して行こうか」


 ウレクが先に立ち、四人で『木漏れ日亭』に向かって歩いていく。

 ウレクはメルウィーとしっかり指を絡めて繋ぎ、当たり前のような顔で歩を進めていく。

 俺の方はと言うと、隣を歩くスーの手に近づけたり離したりで、上手いこと掴めない。

 あああああ。

 俺が手を繋いだら絶対変な汗出るんだよぉぉ。

 そんなんでスーの柔らかい手を汚したくなんかねーよちくしょぉぉぉ。

 でもここで繋がないのは男じゃねえ!


 俺は思い切って手を伸ばす。

 すると、俺が触れる前にスーの方からしっかりと手を握られた。

 あれっ?

 スーは握った手を上げて、してやったりと可愛く笑う。


「えへへっ、気付いてたもーん。でもアレンの方から繋いで欲しかったから、つい待ってたの。やっぱりアレンの方から繋いでくれると嬉しいなー」


 そう言って俺の手の方に、すりっ、と頬擦りする。

 っっっあぁぁあぅぁあうあ。

 やばい手が溶けるぅぅ。

 指を絡めたりしたら指が無くなるぅぅ。

 流石俺のスー、何しても可愛すぎる。


 俺がそう内心悶えていると、前を歩くウレクとメルウィーがニヤニヤとこちらを見ていた。

 一部始終を見られて余計に恥ずかしくなった。

 畜生、お前らは平然と幸せそうな顔しやがって!

 俺はいつだってガチガチに緊張するってのに!


 そしてしばらく手を繋いで歩き、人通りも少なくなり、ちょっとした路地裏に入ると、不意にウレクが立ち止まった。

 と思ったら、突然メルウィーにキスをした。

 ンンンンンンン???

 メルウィーから顔を離したウレクは、てへっと笑った。


「本当はさっきまでもずっとしたかったけど、流石に人前じゃ嫌かと思って。驚いた?」


 メルウィーは少し顔を赤らめながら唇に触れると、くすっと笑った。


「ふふっ、私も同じ気持ちだったから、驚いたけれど、嬉しいわ」


 これが俺の弟と、その弟の恋人という最早家族の一員も同然のメルウィーでなかったら、殴るかツッコミを入れていたと思う。

 本当に、俺の弟はいつからこんなに成長したんだ……?

 俺なんか負けた気分なんだけど……。

 でもここでスーに同じようにしたら、この場のノリに流されたみたいで嫌だし……。

 てかまあ、ここでは(・・・・)嫌だし。


「おいおいー、人前が嫌って言うんなら、俺達の前でもやめてほしかったなぁー?」


「ひゅー、見せつけてくれちゃってんねー。ないわー」


「熱愛ですってかー? ははっ、ぶっ殺してーわー」


 突然俺達を囲うように路地裏に現れた、七人程のガラの悪い男達。

 勿論、俺達は全員気が付いていたけどな。

 ウレクは完全に当てつけでやったんだろ。

 ま、したかったからしたってのが九割で、こいつらにはおまけだろうが。

 ゴロツキ共、可哀想に。


「熱々のところわりーけど、残念ながらここは俺達のナワバリなんだわ」


「その彼女が痛い目に合わされたくなかったら、とっとと金目のものおいてっ」


 ゴンッ!


 喋っていた男共が一瞬で黙らされる。

 勿論俺だ。

 汚い言葉を吐かれる前に、こういう奴らは潰すに限る。

 あと、今日の色々なモヤッとした感情やらイライラやらを詰め込んでそこそこ強めに殴ったので、多分たんこぶが出来てるだろうな。

 他のやつらは突然倒れた仲間と、その後ろに突然移動した俺を見て、唖然と突っ立っていた。


「はっ?」


「今、何が起こっ」


 そいつらも、同じように倒れた。

 今度はウレクだ。

 ウレクはやれやれと言った顔で、気絶した男を見下す。


「ないわーはこっちの台詞だよね」


「ホントだよ全く。折角の休暇を邪魔するんじゃねえ」


 残っていた三人ほどは、俺らと男達を交互に見て、何故か逃げずにスー達の方に近付いてきた。


「だったら、先に女の方を人質にづっ!?」


「がっ!?」


「かはっ!」


 スーとメルウィーの手刀が見事に男達に入る。

 まあこんな都市のゴロツキごときがスーとメルウィーの動きが見れるわけないよな。

 それに、スーは時々戦闘訓練で俺に勝つくらいだ。


 はい、全滅完了。

 俺とウレクで通行の邪魔にならないように、そいつらを全員道の端に寄せ、無視して置いていく。

 あとはここらに居る人達が通報とかしてくれるだろ。

 話を聞かれたりするのも面倒だから、とっとと退散するに限る。


「いやー、馬鹿だよねー。まさか諦めて逃げるんじゃなくて、メル達を人質にとろうなんてさ」


「スー、手は大丈夫か?」


「もうっ、スーの手はそんなに弱くないよっ」


「いや、勿論怪我なんてないことは分かってる。単純に汚いゴロツキなんかに手を出して穢れてないかって心配になっただけだ」


「兄さん、心配のしどころが違うと思うよ……?」


「軽くさっきの男達が哀れになってくるわね……」


 いや、普通心配するのはそこだろ。

 眩しく尊く綺麗なスーの手を穢れさせるなんて嫌だ。

 スーでも大丈夫だと思って殴らなかったけど、今思うと恋人としてかっこよく完璧に守ればよかった。

 俺に心配そうな目を向けられたスーは、自分の手を見ると、俺の手をぎゅっと掴んだ。


「じゃあ、アレンの手で消毒ー。これでいいでしょ?」


 っっっあぁぁあぅぁあうあ。

 にぎにぎと笑顔で楽しそうに手を握られて、心臓が爆発しそうになる。

 俺の魂ごと浄化されそうだ。

 やばい死ぬ。

 手から伝わってくるスーの熱で死ぬ。


「さっきは守ってくれてありがとね」


「……あんなの、当たり前、だ」


 照れ隠しで顔を逸らす。

 ありがとうさっきのチンピラども。

 おかげでスーに手をにぎにぎされた。

 まあ、数分後には忘れるだろうが。

 俺の脳内はスー一色だ。

 いや、もちろんウレク達とかマスターとかもあるけど、大部分はスーだ。


 その後スーに手をにぎにぎされたまま、俺達は宿屋に足を進めた。

 都市ビギネルは、夕焼けの茜色に染まっていく。







【一方そのころ……】


「なんだこいつら、ゲロ甘過ぎるんだけど」


「人間の恋愛は面白いのー」


「神はあまり恋愛しないからねぇ。まあ生物的に必要ないと言うべきか、そんなことに構ってる暇がないというか」


「というか、私の組織みんなこんなバカップルばっかりなんだけど」


「それはもう、甘々だね」


「甘くってジワジワ犯されてピリッとするのー!」


「おおっとぉ。恋愛のれの字も知らないピィリィが何かを言っている。私には理解不能だ」


「保護者しっかり。……おっとー、ウレクが大胆にキスをしたー! いいぞー、もっとやれー」


「もはや実況だね」


「恋愛観察ー」


 ちゃっかり全部見てるアホな神達であった。



S『独身、行き遅れを殺しにかかっている……』

レイ「どうぞ末永くお幸せにとしかね、言えないよね」


ダブルデート回は前後編。

次はウレク視点です。

見栄とか愛愛とか弟な話です。

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