3 神よ諦めたまえ
前回のあらすじ!
何か知らんがめっちゃ魔法特価したステータスになってた!
どういうことなの!
『いや説明しましたよ。というか、前回ってなんですか』
ノリですわ気にすんな。
というかさ、MPが増えるのはまだ分かるよ?
神の魂は魔力の塊みたいなものだからね。
流石に全部を封印は出来ないだろうと思ってたけど。
それでも九割以上を封印しちゃったこの髪飾りは本当に凄いけど。
『それはあの方にしか出来ない芸当でしょうね。マスターほどの魔力を安全に封じ込めることが出来る人物なんて、この世界にただ一人でしょうし』
ま、私が最高位神の一柱にいるのは名前だけじゃないってこった。
戦闘能力的にはまだまだだけども。
私は前髪の髪飾りに触れる。
これはただの花飾りではない。
私の膨大すぎる魔力を封印するための、私専用の魔道具なのだ。
魂を直接封印しても良かったんだけど、それだと緊急時に危険だとSに断固拒否された。
凄く怒られた。
そしてSはとある場所から、安全に封印するため封印の魔術式を埋め込んだ、特別な魔力水晶を持ってきたのだ。
本来だったら魂に直接の方が勿論効果があるはずなのだが、髪飾りなのに魂に直接刺さっているかのようにきっちり封印されているから驚きである。
こういうの見ちゃうと、私って平凡なのかなって思ってしまう。
『秀才が天才と己の力量を比べないでください』
すんませんした。
で、だ。
話を戻そう。
MPはまあいいんだ。
アクティブスキルの発動なんかでも使うし、魔法砲台にならないようにすればいいだけなんだから。
でもさ、魔法攻撃はもうちょい抑えてくれてもよかったんじゃないの?
これ雑魚なら魔法1、2発で倒せちゃうじゃん。
『いや、そっちの方が本当に難しかったですよ。態々新しい魔術を組み立てなきゃなりませんでしたし。苦労しましたよ』
へえ、お前が。
やったじゃん。
また成長したねえ。
『あっ、りがとうございます』
何故一瞬つっかえたし。
まあいいや。
んで? どんな魔術作ったのさ?
『それは簡単です。発動した瞬間、魔術の、システム内での魔法の式を崩壊しない程度に脆くし、組み込んだ魔力に比例して魔力を流出。結果、魔法の効果を弱めるといった感じです』
……ふむ、つまりは呪いの類を私にかけたわけね。
隠れユニークスキルって感じか。
『そうさせてもらいました。いけませんでしたか?』
いいや、それ位で丁度いいと思うよ。
でないと無駄に強くなっちゃうからね。
『納得していただけたようで何よりです。で、数値の方はその弱効化させた魔法で出せる威力値にしておきました。まあ、ほとんど大まかなものですが』
うんにゃ、勝手に合わせてくれてよかったよ。
でも、封印した状態でも私の魔法ってそんなに強い?
『ある分野がとても得意な人が、適当にやったとしても凡人レベルにしか下がらない、というのと同じですよ。どれだけ封印で押さえ込んでも、無意識に普段のように作ってしまうものでしょう?』
まあ、それはそうかもしれん。
私上手くやることは慣れてるけど、手を抜くことには慣れてないからなぁ。
そこら辺も、人間状態で上達していくとしよう。
『陰ながらツッコミ入れつつ応援してますよ』
おうよ!
やったんぜ!
そんじゃ、〈観察眼〉についての説明もお願いしてよろしいか?
『それもマスターの能力を封印した結果ですね。完全に封印出来ず、システムに影響を及ぼした感じです。こういうのって削除しても上手いこといかないので、放置することしか出来ないんですよね』
つまりお前というか、システム的に「おっ、このスキルこいつにピッタリじゃね。入れとこー」って入れられたってわけね。
くそう、機能を成長させすぎたか。
『まあそこまでチートなものでもないですし、大丈夫じゃないですか?』
君ぃ、システムの核のくせに、情報は命よりも重くなることがあることをまだ分かっていないなぁ?
私はステータスカードで〈観察眼〉の効果を確認する。
《観察眼:視界内に入った存在の情報を全て開示する》
はい、つまりこの世界にあるスキル〈解析〉と〈鑑定〉を統合した、ステータス閲覧系スキルで最上位のものです。
対象の基本ステータスと所持スキルが全部丸見えです。
アホか!
相手の強さとか情報云々色々分かったら冒険に大きく貢献するでしょが!
『いや、マスターは大概の魔物の基本ステータスを知ってるんですから、今更では。この世界のシステムのほぼ全てがマスター発案で作成でしょう』
それは、その、うん……その通りだよ。
『ゲームマスターが弱体化すればチーターじゃない? んなわきゃないでしょう。情報戦では最初から勝ち組なんですから、そんなスキルは誤差の範囲ですよ。記憶を消せば別でしょうが、それはアウトですし。マスター自身もそれはしないと決めたでしょう』
……なんか、すみませんでした。
『わかればよろしい』
Sに説教された。
子供に叱られる親の気分。
いや、まじでその通りなのだけれども。
もっともなことすぎて何も言い返せない。
まあ気を取り直して、ステータスはこれで進めるとしよう。
チート上等!
むしろ開き直ってやんよ!
私はクレープのゴミを近くのゴミ箱に捨て、口元についたクリームを拭った。
よーし!
それじゃあ次のチュートリアル、冒険者登録に進むぞー!
『おー』
待ってやがれ!
そこまで目立たずに、だが細々と強くなってやるさ!
『なんか物凄くマスターに似合わない単語ばかり出てきてますが、ガンバです』
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『以下の用語とその解説が追加されました』
「魔術:システム内魔術:ステータス」
この世界のシステム管理領域内でのみ反映される特殊魔術で、魂に貼り付けた特殊魔術の強さを数値化したもの。
特徴:ゲームのような世界にするための要素の一つ。
どのステータスも、閲覧するためにはアクティブスキル〈解析〉がなければならない。
だがそのスキルが無くても閲覧出来るようにするのがステータスカードである。
ステータスの一つの数値だけでも、膨大な魔術式の情報が組み込まれている。
補足:こんなアホな魔術作る人、中々いませんよね。
「魔術:システム内魔術:ステータス各種詳細」
ステータスの各種詳細は以下の通り。
『名前』
その魂のある肉体に付けられた固有名称。
『種族』
肉体の種族。種族により初期所持スキルは異なる。
『ジョブ』
ステータス値にプラス補正。レベルアップ毎ステータス上昇値にもプラス補正。また、スキル熟練度補正が掛かる特殊スキル。
ジョブを取得していることで、そのジョブ関連スキルは、少ないスキルポイントで取得出来る。その代わり、他のスキルは適性が高くなければ大量のスキルポイントを必要とする。
『Lv』
基本ステータス値のレベル。魔物・魔獣、人間の殺傷、また特殊なアイテムで増加する。増加ごとに基本ステータスが上昇し、スキル熟練度にもプラス補正がかかる。
『HP』
生命力。ゼロになると生命として死亡する。
この数値の増加について、厳密には保有量の増加ではなく、生命活動力消耗緩和の度合いである。生物としての防御力と言い換えることも出来る。
分かりやすく言えば、より高いHPであればある程、攻撃を受けた時に流す血の量や傷の度合いが減ると言った具合である。
システムの防御力とは、また別物だ。
『MP』
総魔力保有量。ゼロになると魔力枯渇状態となり、基本ステータス値が大幅ダウンする。
アクティブスキル使用の際に消費することもある。
『SP』
総体力値。食物を摂取することにより回復。ゼロになるとHPが急激に減少し、最悪死に至る。スキル使用の際に消費するものもある。
こちらの数値は多ければ多いほど、食物などの摂取によって得たエネルギーを、身体が太ることなく、魔力とは別枠で魂に純粋エネルギーとして保管することが出来る、と言った意味合いもある。
つまり体内のエネルギーを消費し切っても、魂から自動的に補充され、動くことが出来るのだ。
『攻撃』
システム管理領域内における、身体全体の平均物理攻撃能力。体の部位によってその攻撃力は変わる。物理攻撃力に直接影響する。
『防御』
システム管理領域内における、身体全体の平均物理防御能力。体の部位によってその防御力は変わる。物理防御力に直接影響する。
『魔法』
システム管理領域内における、肉体の平均魔法攻撃能力。魔法攻撃力・魔法効果に直接影響する。
『抵抗』
システム管理領域内における、肉体の平均魔法抵抗能力。魔法抵抗力に直接影響する。
『敏捷』
システム管理領域内における、肉体の平均移動速度。攻撃速度にも影響する。
『運気』
ランダム型のスキル、命中率や回避率、クリティカルなどに影響する。レベルアップによる上昇が無い、唯一の特殊ステータス。特定条件を満たすと上昇するらしい。
『スキルポイント』
レベルアップ毎に増加。貯めることで、取得可能なスキルをレベル1の状態で簡単に取得することが出来る。
また、基本ステータスに1ポイントで1と振り分けることも可能。スキルレベルを上げる為にも使用出来るが、そのスキルの適正値によって必要数は変動する。
『アクティブスキル』
攻撃動作や防御動作といった、動作や現象として発動出来るスキル。発動時にHP、MP、SPを消費することがある。
『バフスキル』
効果や機能といった、補助として発動出来るスキル。起動、停止の切り替えが可能である。発動にMPなどの消費無し。
『ユニークスキル』
通常では取得出来ないスキル。誕生時より所持している場合と、なんらかの条件を満たした場合に取得。アクティブスキルかバフスキルかは決まっていない。発動時に消費するものもスキルによって違う。なんの消費も無い発動などの特別なものもある。
『称号』
システム内で決められた、特定の条件を満たした際に取得。基本ステータスにプラス補正されるものや、スキルを手に入れるものなどがある。
レイ「ワタシ、カミダカラ、シカタナイ」
S『カタコトで現実逃避始めましたよこの主……』
レイ「まあまだちょっと才ある程度の範疇だから、セウトだセウト!」
S『アウト寄りですかねー……』
まあ仕方ないったら仕方ない。