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神は好きに生きるそうです。  作者: 空の宙
2章 ダンジョンは神にとって波乱万丈の地になりそうです。
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30 神へのお誘い



「よーしレイチェルちゃん、ダンジョン行こうぜ!」


「何がよしなのかさっぱり分からんわスケベ野郎」


「くっ、こんなにも親しい仲になってるはずなのに、どうしてこんなに冷たいんだ!」


「いや、精々二週間の付き合いで何言ってんねん。連日で会ってたわけじゃないから、実際もっと短いし。調子に乗るんじゃない」


「ルーリアちゃーん、レイチェルちゃんが怖いんだけどー」


「うーん、ノクトさんが悪いんじゃないかな〜」


「同感」


「……同感です」


「俺ショック!」


 顔を見るなり、早々にやかましいやつだ。

 悪いやつじゃないんだけど、なんつーか、時折ウザイ。

 でも、ルーリアとリグアルドのことを見守ったり、困ってる冒険者を助けたりと、面倒見が良い奴でもあるから憎めない。


 一階に降りると、ノクト、ルーリア、リグアルド、セルトと、私の中の顔なじみのメンバーがいた。

 いや、セルトは一昨日会ったばかりだけどね。


「やー、昨日ぶり。今日はお手伝い忘れずやって来た?」


「……ちゃんとやってきた。今日は怒られない」


「まあ、また破ったら、今度は殴りじゃなくて、普通にまな板が飛んできそうだねえ」


「……既にやられたことある」


「まじかい。何やってんのお前」


「……今じゃ、きっちり反省してる」


「そうかい。ていうか、しゃべり方というか、オドオドしさが若干戻ってない?人見知りオーラ出てるけど」


「……こういう人いっぱいの所だと、喋るのは苦手だ」


「面倒くさいやつだねー」


「……るっせ」


 やれやれ、これだから人見知りは。

 もうちょい慣れろっての。


「それで、このメンバーで集まっててどうしたの? 偶然揃っただけ?」


「あ、えっとね。今からじゃ流石に急すぎるから、明日この五人でデールのダンジョンを攻略しに行かないかってことになってるんだけど」


「目標は第十層の小ボス攻略だぜ!」


 ノクトがドヤ顔で宣言してきた。

 勝手に巻き込まれてるけど、ふむ、中々良さそうだな。

 それなら日帰りでなんとかなりそうだし。


 ダンジョンというのは、最低でも何十層にも続いたシステム空間である。

 中には魔物は勿論、宝箱やトラップもある。

 階層が増えるにつれて、魔物の強さやトラップの厄介さ、また宝箱のランクもアップする。

 そしてダンジョン全体の魔物のランクに合わせて、ダンジョンランクというのもある。


 ダンジョンランクは五段階で、高難易度から順にS、A、B、C、Dである。

 これは、CランクダンジョンにはCランク冒険者単体で攻略出来るくらいの難易度、ではなく、Cランク冒険者四、五人のパーティーで挑むべきという推奨ランクである。

 CランクダンジョンにCランク冒険者パーティーで挑んだからといって、攻略出来るとは限らない。

 むしろ攻略できない事の方が多い。


 で、私達が行くデールのダンジョンはDランクダンジョン。

 一番下のランクといっても、ダンジョンはダンジョンだ。

 様々な脅威があることには変わりない。

 そんなダンジョンに、Dランク冒険者四人に、実力だけならとうにDランクの私が加わったパーティーに挑む。

 うん、いいんじゃなかろうか。

 むしろ第十層までとか、余裕のよっちゃんなのでは?


「いいよ。私も丁度小ボスに行きたいと思ってたし。このパーティーならバランスいいんじゃない? 防御はリグアルドとかでなんとかできても、重戦士系がいないのが欠点かもしれないけど」


「まあそこはそれぞれの実力でなんとかするってことで! 大丈夫だろ!」


 簡単に大丈夫だろ、とか言われるとフラグにしか聞こえないけど、まあこのメンバーならそう変なことも起きないでしょ、多分。


「じゃあ、明日はいつ、どこ集合?」


「うーん、日帰りしたいなら、朝くらいから行って、門閉まる前に帰ってくればいいんじゃないかな〜?」


「それでいいんじゃないか。帰りは遅くならないようにしよう」


「じゃあ、それぞれ飲み物とか食べ物とか、武器の点検等必要なもの揃えて、明日の光の八刻の鐘がなるころに門の前集合なー」


「……分かりました」


「りょーかい」


「それでいいよ〜」


「問題無い」


「じゃあ今日は明日に備えて準備と休養をしっかりとるように。では早いけど解散!」


 そう言って、その後はみんなバラバラに今日の日課をすませに行った。

 ていうか、このパーティーってリーダー立てるとしたらノクトになるのかな?

 まあ、一番先輩冒険者なわけだし、そうなるか。

 実力もあるし。


 私は冒険者ギルドから出ると、鐘の音が聞こえた。

 その音源地である、都市の中心辺にある白亜の時計塔を見上げる。

 あの時計塔は『神の時計塔』といい、どの街にも必ず一つはあるものだ。

 街を興した時には、必ず『時間神』の神殿に申請して、建てて貰わなければならない。

 建てなくて困るのは街の人間達だ。


 建設費用は無い。

 何故なら、何も無い空間から突然時間神がドカッと時計塔を指定された地に落とすだけだからだ。

 まあ、その建て方考えたの私だけど。

 我ながらアホみたいな建築方法。


 申請費用もない。

 神殿には神官や巫女がいないから。

 いや、いるにはいる。

 しかし素性を隠しているから、人間達はあまり知らないだろうけど、それはその神に仕える妖精達なのだ。

 しかもシステム内のではなく、外の純粋な妖精。

 妖精達も食べ物を食べたりするが、森で取ったり魔力を食べたりしてれば事足りる。

 なので、ただで時計塔を建てて貰えるのだ。


 でまあ、妖精神官達に申請がいくと、それは私に通される。

 なんでかって?

 時間神はすっげー引きこもり寝坊助だからだ!

 妖精達が何度叫ぼうと、防音密室空間に引きこもって聞く耳持たねえわ外の世界拒絶状態でどうしようもねえ。

 でも何故か私の声には反応するようで、私がちょっと寝床を蹴れば起きるのだ。


『いやちょっとじゃなくてかなり本気で蹴ってるでしょう。地平線の彼方まで吹き飛ばす勢いで』


 気の所為気の所為。

 今では蹴られる前に声かければ起きることが多くなったからマシでしょ。


『あれ、そういえばマスターがこちらにいない間、時計塔の申請来たら、誰が起こすのですか?』


 ……あー、考えてなかった。

 滅多に来るもんじゃないし。

 まあ、もしきたら、お前とのこの〈念話〉をあいつにも繋げてよ。

 そしたら叫ぶから。


『夢の中にいるのに突然脳内に向かって叫ばれたらたまったもんじゃないでしょうね……』


 知らん知らん。

 引きこもってるのが悪い。


『……というか、この世界、引きこもりな神が多くないですか? 色んな意味で』


 ……まあ、神はあんまり下界に降りるもんじゃないし、昔の連れどもは、外に興味無いから、引きこもってるだけだし。

 別に、心身ともに健康ならいいんじゃない。

 私が支持する時に動いてくれりゃ自由でいいよ。


『いいんですかねえ……』


 気にするな。


 で、時計塔の時間はシステム管理制だ。

 きっちりバグとかが起きないようにしている。

 一応この大陸結構広大だから、場所ごと僅かにズラしてはいるけど、毎度微調整面倒になるから全部統一したろかと思うこともある。

 私がルールで突っ走っていいと思うんだ。


『既にアクセルとブレーキ派手に踏み違えてるでしょうに……』 


 自重する気は無い。


 この世界の時計は、大体地球と一緒。

 一時間刻みの一から十二の時間で、午前ではなく光の時間、午後ではなく影の時間だ。

 昼に向かって光がどんどん濃くなるから光の時間。

 夜に向かって影がどんどん広くなるから影の時間。

 わかりやすくていいと思う。

 ちなみに、午前午後はきっちり別れてるので、二十四時間で考えたりはしない。

 めんどいし。

 正午は普通に光の十二刻、深夜は影の十二刻だ。


 そんなわけで、明日まで猶予が出来た。

 ので、ちょっぴり用意(といっても非常食程度だけど)した後に、私はダンジョンに向かった。


 理由は簡単。

 幼稚園や小学校の先生は、生徒達を遠足に連れていく時、何をするか。

 答えは大抵、行く場所の先行確認である。

 引率するからにはきっちり安全だったり危険な道を確認しなければならないのだ。


『なぜ教師気分……』


 保護者気分かな。

 まあ面倒を見る訳では無いけれど。

 勝手に死なれるのもなんか腹立つから。


 そんなわけで、今はダンジョンに非常にまずい存在がいる。

 一番いいのは、そもそもダンジョンに行かせないことだろうけど、説明が酷く面倒だ。

 かといって、勝手に行かれて勝手に死なれるとなんかモヤッとする。

 ルーリアに関しては、折角授業料取ってまでみっちり叩き上げてるんだから、ここで死なせたくない。


 なので、パーティー仲間兼用心棒をする。

 目のつくところにいるのが一番安心安全だ。

 というか、私がいるだけで襲われることはないだろうし。

 私のことは最大限警戒してるだろうからなあ。


 で、今から私がしに行くのは、分離しているらしいそいつらを下層まで追い込んで、一つにまとめること。

 標的がバラけていると非常に面倒臭い。

 なので、私が魔力の威圧をかけて嫌がらせしながらどんどん追い込んでやる。

 とことん鬼ごっこしようじゃないか、鬼さんや?


『あれっ、立場が逆転してませんか』


 悪魔を退治する優しい神様が鬼だなんてとんでもなーい。


『ゲーム上はどう見てもマスターが鬼ですよ……』





 てなわけで。 

 さてさて、ダンジョンに到着っと。

 目標は、第二十層くらいにまで追い込んでおく。

 あいつらは第十層と言っているし、今日第三十層まで行くのは面倒くさい。

 で、第二十層にいったら、そのあとはS、任せた。


『はい?』


 いや、だってダンジョンとか完全にお前の支配下じゃん?

 だったら牢獄的な魔術を組み立てて、ボス部屋にでも閉じ込めておけば完璧じゃん。


『それ少しの間二十層ボス部屋が使えなくなるじゃないですか』


 じゃあ別の隔離空間作ろう。

 ちょっと待ってて。


 …………ぶっはぁ。

 こっちの肉体で隔離空間の魔術構築するのだっる。

 とりあえず、出来たからこのペンダント通して転送するね。

 ほい。


『それでもお早いことで……。……はい、確かに受け取りました。ではこれを第二十層のゲートストーンの転送先に増やしておけばいいですね』 


 通行は私限定でね。

 でも今日は闘わないよ。

 今日無理して怪我して、明日行けなくなったら、絶対ルーリアとかに心配されて何してたか問い詰められるし。

 変に探られたくないので、ちょっとの間の監禁放置で。


『……分かりました。では、とっとと二十層まで追い込んでくださいな。そしたら、あとは当機が転移させて監禁もしておきますから。ですが、相手は魔術も喰らう場合もあるんでしょう? なので早めに仕留めてくださいね』


 明日のダンジョン行った数日以内に準備整えて行くさー。


 さてさて、悪魔と神様の威圧鬼ごっこ。

 開始しようかなー?


『物騒ですねぇ……』







 ********



『以下の用語とその解説が追加されました』



「建物:魔術建築:時計塔」

 このシステム管理下大陸の時間を管理する時計。

 詳細:全ての時計塔がきっちりシステムにより管理されている大陸内安心安全の時計塔。

 魔術によって組み立てられており、一応中は歯車らしいが、とても複雑。

 時間神とレイが設計し、設置は時間神がやっている。

 材料は企業秘密。

 補足:あの寝坊助さんを妖精達の誰も起こせないのは本当に面倒ですね。



「人物:神族:???(時間神)」

 時間神としかわからない寝坊助さん。

 詳細:レイ曰く、引きこもりの寝坊助。

 重度の引きこもりで、ほぼ寝ているらしい。

 食事も神ゆえにあまり取らない。

 レイが甘やかして、時折叩き起して魔力補給をさせているらしいが……。

 まあ詳細は後程。

 補足:あの神、マスターの声でだけ起きるってことはそういうことなんでしょうね。



S『えー、始まりましたー。狂気の幼女と悪魔の逆転鬼ごっこー。いえーい』

レイ「そんな幼女は嫌だなあ」

S『鏡見ろください』

レイ「は! 私が映ってる!」

S『でしょうね』


怖や怖や。

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