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神は好きに生きるそうです。  作者: 空の宙
2章 ダンジョンは神にとって波乱万丈の地になりそうです。
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27 神はまた新しい玩具を得たようで



「……それで、ルーリアさんとお前は何してたんだ? なんか、狩りしてるようには見えなかったけど」


「あ〜、えーっと」


 ルーリアが返答に戸惑い、私の方にヘルプを求めるように見る。

 私はやれやれとため息を着いた。


「私がルーリアに魔法について教えて貰ってたんだよ。その訓練の途中の試し打ちでお前を狙った。それだけだよ」


「……ああ、なるほど」


 セルトが納得したように頷く。

 そしてルーリアは、その手があったか!みたいな顔で目がキラキラしてた。

 この子アホの子なのかな?


「……で、さっきのはなんだ?」


「さっきのは純粋な魔力弾だよ。ただ魔力を凝縮して撃つのさ。こうやってっ」


 私が片手でまた魔力弾を木に向かって撃つ。

 すると、セルトがフードの下で驚きに目をぱちくりさせた。


「……なんっだ、今の」


「だから魔力弾。詠唱もいらないし無属性。ただし攻撃力はあんまりないけど、MPもあんまり減らない技だよ」


 私がそう説明すると、セルトから見えない位置で、ルーリアがあれっ? という顔をしていた。

 MPというところで反応していたということは、ルーリアは結構消費してたのかな?

 まあ初めてだし、しょうがないでしょ。

 これから慣れれば問題ない。

 そしてセルトは、私が説明すると、キラキラした目をルーリアに向けた。


「流石ルーリアさんですね! そんな凄いオリジナル技を生み出せるなんて!」


 人見知りオーラが消えて完全に全身からすごいすごいと溢れ出ている。

 まあ凄いのは私だけど、一発で完成まではいかないけど半分ほどは出来たルーリアも凄いだろう。

 一方ルーリアは、私の方に目を向けて、ちょっと居心地悪そうな苦笑いをセルトに向けた。


「ま、まあ凄いことかもしれないけど、その、それを出来るレイちゃんの方も凄いよ〜。ね、レイちゃん?」


 やめい矛先むけんなっての。

 セルトは何故か、そんなルーリアに違和感を感じたのか、疑うような顔をした。

 そして手招きして、私の耳元でひそひそと話す。


「……なあ、なんかルーリアさん変じゃね?」


 こいつ私の時は結構口調砕けるな。

 舐められてんの?

 それとも慣れられたの?


「変って、何が?」


「……前に俺がルーリアさんのこと褒めた時は『ふふっ、ありがと。じゃあこれからもセルト君に凄いって思ってもらえるように、もっともっと頑張るよ』って言って、今みたいに否定する感じじゃなかったんだけどな」


 あいつどんだけ眩しいの。

 私の場にいたら目を塞いでるわ。

 私だったら「とーぜんっ。しかもこれからもどんどん伸びてくんだから」とか言っちゃいそう。


『極端過ぎやしませんか』


 私だもの。

 しゃーなし。


 にしてもこいつ、今のルーリアの態度だけでよくそこまで分かるなー。

 むしろびっくりというか、それだけルーリアのことをずっと見ていたのかと納得するような。


「まあ、ルーリアだって恥ずかしがることはあるんじゃないの?」


「……そうかもしれないが、あんな風に否定するのは初めて見たし……。ていうかさ、本当にお前がルーリアさんに教えて貰ってたのか?」


 ビクッと震えたのは、果たして私の心の内だけか、それとも体にも出てしまったのか。


「……なんか、さっき木の上からちょっと見えてただけだけど、まるでルーリアさんがお前に教わってるように、俺の目には映ったんだが。……本当はどうなんだ?もしお前が教えてたんなら、なんで態々隠すんだよ」


 ダラダラと笑顔で冷や汗が流れてくる。

 こいつ人のことよく見すぎじゃない?

 それともルーリアがいたから?

 ルーリアのことずっと見てた系なの?

 もしそうだとしたら、やっぱりこいつ確実にルーリアにそういう感情抱いてるよね?

 いや違う今はそっちじゃないそうじゃない。


『マスター、落ち着きましょう。軽く息はいて吸いましょう』


 お、おう。

 すー、はー。

 ……うむ、落ち着いた。

 別に、これくらいなら、特に拙い事じゃない、か。


「認めるわけじゃないけど、もしそうだとしたら、変じゃない?」


「……はあ? なんで?」


「いやだって、私の方が大分歳下なのに、ルーリアに教えるなんてさ。しかも駆け出しなのに」


「……なにいってんだ?」


 うわ、すっげえ「はあ?」って顔に書かれてる。

 すごくそんな文字が見える。

 わかりやすいくらい今のこいつの心情が見える。

 意味不って心情めっちゃ見えるよ。


「……教える側とか、実力だとかに、なんで年齢が関係あるんだ? 強いから強い、凄いから凄いんだろ。歳上だから凄い、歳下だから凄くないなんて、誰が決めるんだよ?」


 セルトは、それ以外に考えたことがないというような、純粋な顔で、そう言い放った。

 私は、その言葉に唖然として、ふっと笑ってしまった。


 ……ああ、そうだった。

 馬鹿なのは私だ。

 こいつは、歳なんて関係ないってのを、ずっと証明しようとしてきた立派な子供じゃないか。

 憧れを胸に、自分みたいな子供でもやれるんだって、必死に頑張ってきたやつじゃないか。

 そんなやつに、なんて馬鹿な言い訳を言ったんだ。

 通じる訳ないじゃんか。

 他の奴と同じなわけ、ないじゃんか。


「……っはは。いやほんと、その通りだね。ごめん、馬鹿なこと言った」


「……いや、まあ、客観的というか、一般的にはそうかもしれないけど、俺はそういう考えが嫌いだからさ。昔、そういう風に見られて馬鹿にされたのもあってさ。初めてあった時も、お前に歳下とか言ったけど、からかいつーか、ちょっとの腹立たしさのつもりで、別に見下したわけじゃねーし」


「うんうん、分かった分かった。分かる分かる。そーだね、その通りだよ」


「……何一人で頷いてんだよ、怖い奴だな。で、本当にどっちなんだよ。どっちが先生なんだよ」


 うーん、どーしよっかなー。

 なんていうか、出会って二日目だけど、ちょっぴりこいつが気に入ってしまった。

 だからほんの少し仲間に入れてやってもいいかもしれない、なんて、思ってる自分がいる。


 そんな自分に、神らしくある自分が、笑った気がした。

 その時思ったように、好きにすればいいじゃん、と。


「じゃあさ、本当のこと言って、ちょこっとだけ仲間に入れてやるけど、その代わり深入りしない、あと他の誰にも言わないって約束する?」


「……ん? お、おお? ていうか、それ殆ど肯定してるようなもんじゃ……」


「まだしてませんー。で、どうなの。深入りせずに仲間に入るの?ちなみに、弓使いのお前におすすめの技もあるぞー」


「……それは、ちょっと気になるな……。それに、ルーリアさんと一緒ってこと、か?」


「一緒だぞー。一緒にいる機会が増えるぞー」


「……おいやめろ。そんな目で見るな! そんなニマニマした目で見るな! 下心なんてない……とは言わないけど、その目を向けるな!」


 セルトは顔を真っ赤にしたあと、フードを抑えながら答えを口にした。


「……分かったよ。深入りしねーから、俺をお前とルーリアさんの仲間に入れてくれ……ください」


「取ってつけたような敬語はいいよ気持ち悪い。じゃあおっけ。本当のことを言うよ」


 私は一瞬口を閉じて、適当なの設定を思い浮かべると、続きを口にした。


「私は小さい頃、すごーい魔法使いの弟子だったことがあってね。その人は孤児の私を育てながら、色んなことを教えてくれたの。その時の知識と経験があるから今でも凄いわけ。で、その凄い人の教えを、飲み込み早いルーリアにも教えてあげて、もっと凄くなってもらおうってわけ。そんなわけで、私が先生で、ルーリアが生徒なのです。あ、セルトも仲間入りするならセルトも私の教え子だね。光栄に思たまえ」


 そう口早に、安っぽい絵本みたいな説明をした。

 うむ、我ながら中々の適当感!


『……いや、でも、あながち間違ってないのでは? ていうか、大方間違ってないのでは? 昔あの方に色々なことを教えて貰ったのですから、師弟関係といっても間違ってないような気がしますけど』


 システム内の魔法は私オリジナルなんだから、私が第一人者だもん。

 まあ確かに、意外と間違ってな……。


 ……待って、S、なんでそんなこと分かんのさ?

 色々教えて貰ったなんて、私言ったっけ?


『……い、言ってましたよ。ええ、言ってました。マスター時折思い出を話してくれるじゃないですか。闘い方を教えて貰ったとか、本を読んでもらったとか、旅の話とか』


 そーだっけ?

 まあ、そうか、色々話したかー。

 ……そんな細かく言ったっけ?


『……別に、マスターだって感傷的になることはあるでしょう。ていうか、何度もあるじゃないですか』


 べっ、別に感傷的になんか、なって……ますけども。

 なることはありますけども。


 ……うぅー、もうっ、いいやっ。

 気にしないでおく!

 無視しとくよ無視無視!


 そんなことより今はセルトだ。

 まあSと話してる時は大抵一瞬の思考なんだけどね。

 セルトは私の言った説明を一応飲み込んだような顔をする。


「……なるほど、だからお前、ゴブリン集団の時も、色々と見たことない魔法の使い方してたんだな。納得したわ」


「そういうこと」


「……でも、小さい頃って、今でも十分小さいのにか?」


「十二歳はそこそこ立派な年齢ですー。ていうか、早速さっき言ったこと忘れた?」


「……そういうことか。分かった。聞かないでおく。冒険者には色んなやついるしな」


「うんうん、物分りのいい子だねー」


「……なんか、不色魔と腹立ってくるな」


「気のせいだよ、気のせい」


 話がついたことで、私とセルトが後ろを振り返ると、ルーリアが腰に手を当ててムスッとしていた。

 むくれっ面も愛らしくて腹立つなおい。


「む〜、さっきから二人とも仲良くって羨ましくなっちゃうじゃん。私も仲間に入れてよ〜」


 拗ねてる、とても拗ねていらっしゃる。

 あれか、貴重な友達が、自分の知り合いとだけ話してると、凄く疎外感を受ける、三人グループの法則。


『それはあれでしたっけ、三人グループだと、大抵話す時に二と一になるっていう』


 そう、グループあるある。

 それの一になってルーリアが拗ねていらっしゃる。


 なんだよむ〜って、子供か。

 尖らせた唇が苛立ちじゃなくて可愛さ産んでるだろが。

 よく分からんがイラッとしたので、ほっぺたをつんつんしてやった。


「ふぇっ? な、なに〜。なんでつんつんするの〜」


「いやなんとなく。ああ、あと、こいつも仲間に入れることにしたから」


「……えっと、どういう?」


「私の魔法講座仲間。私が先生だってバラしたからさ。弓使いなら矢に付与出来るようなの教えられるし」


「……お前はなんでもありか」


「良かったんだ? ……はっ! じゃあじゃあ、セルト君は私の弟弟子ってこと!?」


「え、あー、うん、そうだね。そうですねー」


 お友達少ないからって嬉しそうですね箱入り娘よ。

 一方のセルトは弟弟子という所でフードを深く被った。


「……お、弟弟子」


「お前はなんで若干顔を赤らめてるの」


「な、なってねーし! 同じ弟子になって距離が近くなったとか思ってねーし!」


「いや墓分かりやす過ぎでしょ……。ていうか、私の弟子になってるってとこにツッコミはないの?」


 私がそういうとセルトが鼻で笑った。


「……少し違和感はあるけど、強くなれるなら本望だ。なんだってやってやんよ」


 ほう、ほほほうほーう。

 つまりやる気十分と。

 それはいいことを聞いたなぁ。


「じゃあ、遠慮はいらないよね! やる気満々な奴に遠慮なんて失礼だよね!」


「……え? まあ、うん、そうだな?」


 やったぜおもちゃが増えましたー!

 ふひひ、さてさて、何してやろっかなー。

 私が心の中で楽しい訓練を企んでいると、ルーリアがセルトの肩に手を置いた。


「ルル、ルーリアさん?」


「セルト君、覚悟した方がいいよ。レイちゃんは無理難題をやれとは言わないけど、私達の出来る範囲ギリギリを攻めてくるから」


「えっ……」


「つまり、死にはしないけど、死ぬ気でやらなきゃやってらんないくらい鬼畜ってことだよ。頑張ってね!」


「ちょ、ルーリアさん? そんな笑顔で言われると逆に怖いんですけど!?」


「大丈夫、結果的には強くなるから! びっくりするくらいにね!」


「結果的にはって、途中では一体どうなるんですか!?」


 なんだか弟子達が五月蝿いのう。

 そうか、私の訓練が楽しみなのか!

 そーかそーか!

 嬉しいなあ!


『こうしてまたマスターのおもちゃが増えましたとさ、と。名ー無ー』







 ********



『今回は休憩』



レイ「ルーリアが眩しいなって思った」

S『心が穢れてるんですかね』

レイ「やだなあ私に穢れなんてあろうはずがございませんよおほほほほ」

S『そういうところですかね』

レイ「るっさいわい」


良い子は眩しい。

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