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神は好きに生きるそうです。  作者: 空の宙
2章 ダンジョンは神にとって波乱万丈の地になりそうです。
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22 神の方が主人公に決まってる

 


 なんですかこのガキンチョー。

 上から狙撃とかちょい腹立つんですけどー。

 でも実際ピンチだから文句は言えねえ。

 それどころかこのチャンスを掴まないのは大間抜け。


 好機を見逃さず、〈ウィンドショット〉と〈ファイアボール〉による合わせ技でゴブリンを大炎上させる。

 燃えたゴブリン達の悲鳴が聞こえるが、構わずどんどん撃ち込む。

 炎上炎上ー!


 私が魔法を撃ち込むと、四人パーティーの方もハッとして、体制を立て直す。

 そしてパーティーの方は、グレッドが先頭に立ち、トラップを踏んだ間抜けが魔法使いの近くでゴブリンを倒していき、魔法使いとシーフ風の女がやりやすい状態で攻撃を当てていくという、中々の連携で、一気にゴブリン達をたおしていく。


 やれば出来るやんけ。

 私はそう横目で見ながら、風を纏った短剣でゴブリン達を倒していく。

 魔法だと目立つからね。

 だが、私と同じくらいのペースで、私達のスキを狙って襲ってきたゴブリンの脳天に矢が刺さっていく。

 ……あの短弓少年やるなー。

 ほぼ命中してない?

 最私は心中で感嘆しながら、後のゴブリンにトドメを刺す。


 《経験値が一定に達しました。Lv9からLv10になりました》


 《各種基本ステータス値が上昇しました》


 《レベルアップボーナスにより、各種スキル熟練度が上昇します》


 《熟練度が一定値に達しました。アクティブスキル「罠解除 Lv1」が「罠解除 Lv2」になります》


 《熟練度が一定値に達しました。バフスキル「短剣技 Lv1」が「短剣技 Lv2」になります》


 《スキルポイントを取得しました》


 おお、レベルアップですか。

 ……もうレベル10とか早くね? やばくね?


『まあ、マスターは効率良くやり過ぎていますし、あとスキルレベルの方は、マスターの魂がシステムの創造主というのも少しあるのではないのでしょうか。システムへの適合率が高いがために、少しだけスキルレベルが上がるのも早いかと』


 うーん、そのチートはどうしようもないくねー。

 その関係はどうやっても切れないし。

 まあどうせ封印してるんだから、その効果なんてちょっとでしょ。

 気にしない方向で行こう。


「いやー、迷惑かけて本当にすまなかっな、助かった。ありがとよ、お二人さん」


 グレッドがそう私と少年に言ってくる。

 全くだ、大迷惑だよ。

 まあ優しい私はそんなこと言わないけどね。


「まあ、結果的に対処出来たから、問題ないよ。これからはもっと気を付けるようにした方がいいと思うね」


「……俺も、気にしてないから、いい」


 少年がフード引っ張りながらそう言った。

 いやあからさま嫌そうにため息ついてたやん。

 とは言わないけども。

 気を使ったのだろう。

 流石にこんなダンジョンでそれに引っかかるなんてダサいからなー。


「本当にその通りだ。おい、お前もちゃんと謝れ!」


「いでっ! す、すいませんでした。ってか叩かなくても!?」


「死ぬのに比べたら安いだろーが」


「そうだけど、そうですけどねえ!?」


 楽しそうな連中だなぁ。


「そういやまだ名乗ってなかったな。俺はグレッド、このパーティーのリーダーだ」


「レイだよ、よろしく」


「……セルト」


「ん? セルトって、あのセドウィンじーさんの孫か?」


「……そう」


 誰だっけ。

 有名人か?

 色々面白そうな奴は目をつけてたつもりだけど、覚えてないや。

 まあじーさんってことは少し前かもしれないし、目をつけてた奴はいっぱいいて詳しく見てたわけじゃないし、知らなくても当たり前か。


「なるほどなー、流石の弓の腕だな。おっと、こういうことを言われると嫌なタイプだったか?」


「……別に。じーちゃんは俺の誇り」


「だよなあ。羨ましい孫だな」


 グレッドはセルトの頭をポンポンと叩く。

 どうやらセドウィンは弓の扱いが上手いそうな。

 おじいちゃんに憧れてなったタイプのやつかね?

 初々しいのー。


『そういうこと考えるから、マスターもババくさいとか言われるのでは』


 ガキをガキと呼ぶだけで、私はただの大人です!

 ババアではない!


 私は全滅して地面に伏しているゴブリン達を一瞥した。


「で、このゴブリンはどうするの?」


「そうだな、そっちが持って帰りたいだけ持って帰っていいぞ。こっちは迷惑かけた側だからな、文句は言わねえよ。な?」


「え、ま、まあそうっすねえ。でも俺らも少しは倒し……」


 空気読めないお馬鹿をグレッドが睨む。

 まあ、別に私としては今日は既にそこそこ稼げてるわけだし、そんなにいらないんだけどなあ。


「そっちの言う通り、全部倒したわけじゃないし、分け合えばいいんじゃない?私としてはセルトが一番多くていいと思うけど」


 いきなり呼び捨てにされたことが気にかかったのか、こっちをムスッとした表情で見てくる。

 どうせそんなに歳変わんないでしょーに、心狭いなー。

 私の提案に、グレッドが頷く。


「そうだな、俺の仲間も救ってもらったことだしな」


「私としてもいいよ。あ、私はメリダだよ。さっきはありがとね」


「あたしも不満はないよ。あたしはトーナだ。君の魔法、凄かったね。そっちはうちの仲間を助けてくれてありがと」


「俺はラズロルドだ。マジですまなかった」


 それぞれが自己紹介をして、握手してくる。

 少年セルトは、それにたどたどしく返していた。

 私は適当に握手を返す。


「今度会ったら、何か奢ってやるよ」


「お酒は飲めないけど、クレープなら好きだよ」


「……俺は、別にいい」


「おいおい、一番の功績者が遠慮するなよなー。勿論レイちゃんも凄かったけどな!」


「……か、勝手に肩を組むな」


 その後お互いの納得する分量を分け合って、そのパーティーとは別れた。

 別れる直前、一瞬悪寒がして、私はグレッド達の方を振り返った。


 ……んー?

 なんでもない、か。


 その場に残ったのは私とセルトだけ。

 しばらく互いに何も話さなかったが、若干の会話を試みることにした。


「ねえ、さっきの穴って隠し部屋のだよね。ここのダンジョンの隠し部屋の中なんて、もうなにも無さそうだけど、なんであんなとこから出てきたの?」


 ダンジョンにはもう一つ、私が設置した隠し部屋やら隠し通路などの隠し要素がある。

 部屋の中には隠れた宝箱やら、知性ある魔獣やらが。

 通路は階層をとばせたり、近道したりする通路がある。

 あそこは私の記憶によると、確かとうの昔になんの価値も無くなった隠し部屋だったと思うけど、なんであそこにいたんだろ?


「……秘密基地」


「ダンジョン内なのにアホなの?」


 そうくるとは思わなかった。

 確かにもう、冒険者達は価値が無いと分かってて寄り付かないから秘密基地に出来るけど、なんでやねん。


「……じーちゃんから教えて貰ったんだよ。一人でなんかしたい時や、野営するのに使ってる程度の場所だ」


「ダンジョン内で中々楽しそうなことをするねえ。ちなみに中を見せてもらっても?」


「……断る。別に大したものもないし、大抵持ち帰ってるから、意味ないし。でもあんまり入られたくない」


「あっそ。ならいいや」


 本当にちょっと何かしたい時にしか使ってないのだろう。


「……今度はこっちから質問いいか」


「どうぞー。もう帰るから、歩きながらね」


 私とセルトは地上に向かって歩き始める。


「……お前みたいなチビが、なんで一人なんだ? 最初あのパーティーの一員かと思ったら、違うみたいだし」


「おいこらチビっていうなガキ」


「……じゃあお前いくつだよ」


「十二ですけどなにかー」


「……俺より二つも下のくせにガキ呼ばわりすんなし」


「はっ、二つしか離れてないなら、互いにガキだからいいでしょ。そっちこそチビと言わないでくれる? まだ成長途中なだけなんですけどー」


 お互いに歩きながら火花を散らす。

 やがて、妥協するようにセルトが口を開く。


「……じゃあ、レイ」


「うむ許す」


「……あくまでも上から目線だな」


「まあ私ですからー」


 実年齢精神年齢共にずっと離れてるガキなど圧倒的格下!

 私の方が上で当然!


『傲慢というか大人気ないですよ。というか精神年齢も大差ないのでは』


 ふーんだ、知りませんよーだ。


「で、なんで一人で来てたかって? そんなの一人でも問題ないからに決まってんじゃん」


「……普通はパーティー組んで来るものだろ」


「いやお前に言われたくないわ」


「……俺は必要最低限にしか戦闘をしてない。第十層以降は行かないし。ほとんど宝箱探しだ。それにそこそこ慣れてるから、お前よりも全然問題ない」


 私と同じじゃんか。

 言われる筋合いねー。


「ちょっと弓が上手いからって調子乗らない方がいいんじゃない?」


「……そっちこそ、少し闘えるからって、これから先も通じるとは限らないぞ」


 またバチッと火花が散る。


「「……生意気な奴」」


 本格的に互いに青筋が浮かぶ。

 そんな時、魔物の気配がした。

 狼型の魔物が四体だ。

 二人共即座に戦闘態勢をとる。


「よーし、そこで見てるんだね。私がちゃっちゃと片付けて証明してやんよ」


「……俺の矢の方が先にトドメを刺すかもな」


「うし勝負だっ!」


 私は魔物に向かって地を蹴り、間合いを詰める。

 後ろからは弓の放たれた音がした。

 互いの武器が、同時にそれぞれが狙った魔物に当たる。

 二匹の魔物は同時に絶命した。


「今のはしょうがないから引き分けでどうよ」


「……別に、次は先に当てる」


 その後も何度か魔物と遭遇し、ダンジョンの入口にたどり着くまでずっと競い合った。

 結果としては同点くらい。

 さっきのゴブリン集団に向けて少し魔法を撃ちまくったのもあるし、あまりじっくり見られてる時に手の内晒したくないので、ほぼ魔法は使わずに短剣で闘って全力じゃない状態での同点だ。

 だったら絶対私の方が上のはずだ。

 いくら弱体化してたってこんなガキに負けるわけがない!


『何やってるんですか全く……』


 いや、途中から若干楽しくなってしまい、つい。

 くそう、ガキのくせに、くそう。


 途中から何故か連携して倒したりして、もう何やってるんだろと思った。

 はい、大人気ないし馬鹿でしたよーだ。

 そんななんやかんやを続けながら入口にたどり着き、夕日を浴びる。

 お互い地上に出た時は、ゴブリンと戦闘した時より疲れていた。


「はあっ……、中々、やるじゃんか」


「……けほっ、そっちこそ、短剣もそこそこ上手いんだな」


 互いに疲れた足を止めて息を整える。

 いや、目に付いた魔物全部相手したのは流石に馬鹿でした。

 何故互いにやめようとしなかったのか。

 そんなの敗北を認めるに等しいからに決まってるじゃんか!

 私は止まらんぞ!

 こいつが止まるまで止まる気など無かったのだ!

 クソガキに負けるわけにはいかんのだ! 

 プライド的に!


「全く、ここまでやる必要無かったと思うんだけど」


「……そりゃこっちのセリフだ」


 互いに無言になる。

 夕焼けが疲れた体にはやけに眩しく感じた。

 お互いの息の上がった肩もよく見える。


「「……でもまだ認めたつもりはない」」


 双方冷たい笑顔を浮かべた。

 最終的に都市ビギネルまで走って競走し、私の勝ちで終わらせた。


 よーし勝ち逃げ出来た!

 やっぱり私の方が強い!

 完!


『うっわぁ……』







 ********



『今回は休憩』



S『新しい主人公の名前、セルトですってね』

レイ「私の方がつよいもーん! 主人公としてかっこいいもーん!」

S『既に世界の事実になってることを言われましてもねえ』

レイ「ん!? 褒めたの今!? 褒められたの!?」

S『ノーコメント、です』


なんだかんだ言ってマスターが一番。

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