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神は好きに生きるそうです。  作者: 空の宙
2章 ダンジョンは神にとって波乱万丈の地になりそうです。
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黒翼は惑う

 


 殺して、殺して、殺して。

 壊して、壊して、壊して。

 そうして時折腹が減ったら、本能的にナニカを食べる。

 いつも何を食べているのか、自覚はない。

 ただ、食べなければという感情だけがあった。

 食べて、生きなければと、本能が訴えている。


 自分が何をして、何をしたいのかは知らない。

 ただ目につくものを壊したり、食べたり、時には無視したりしている。


 果たして何がしたいのか。

 自分は何を望んでいるのか。


 望み?

 自分は何かを欲しているのか?

 分からない。

 分からない分からない分からない。


 そうしてまた、何かを見つける。

 人間か神か、別の何かか。

 分からないし、どうでもいい。

 今回は無視をしよう。

 今は、この思考の方が、食欲より大事だ。


 望み、か。

 自分は、何かが欲しくて、何かが成したくて、こんな意味もないことを繰り返しながらも生きているのか?

 でも、分からない。

 思い出せない。


 思い、出す?


 いや、前にも、こんなことが、あったような。

 この思考を、したはずだ。

 でも、いつ?

 どこで?

 思い出せない、分からない。


 思い出せ、思い出せ、思い出せ。


 きっと、それは忘れてはいけなかった、手放してはいけなかったはずのものだ。

 なのに、どうして何も思い出せない?

 自分の中には、どうしてまともな記憶がない?


 分からない、分からない、分からない。


 ただ、痛いのは分かる。

 痛くて痛くてたまらない。

 自分が壊そうとしたナニカに反撃をされて攻撃を受けた時だって、そんなに痛くはない。

 自分は丈夫だから。

 何故、丈夫なのかは知らないけど、丈夫じゃなかったらとうに死んでいるだろう。

 どうして死ぬような目にあったりするのかすらも分からないけど、多分何度か死にかけている。


 自分の中のナニカが痛む。

 魂なのか、体のどこかなのか。

 ただ、何かを思い出そうとする度に、痛くなる。


 思い出したくない、思い出せない、思い出せない。

 怖い、怖い、怖い。

 嫌なノイズが思考を埋め尽くす。


 これは、嫌なものだ。

 痛いから、壊してしまおう。

 壊せばきっと、この痛みも消える。

 こういう痛いのは、嫌いだ……。



 ───────。



 ……あ、れ……?

 自分は、何を?


 ああ、分からない。

 自分が何をしていたのか、自分が何を考えていたのか全く思い出せない。


 またか、と、自分の中の何かが言った気がする。

 また自分は、間違えたのかと。


 これは、自分の記憶の欠片だろうか?

 分からない、でも、何かをやってしまったということは分かる。

 また、自分は、ナニカを壊してしまったのだ。


 ああ、嫌だ。

 また、真っ暗だ。

 自分はまた、ただ彷徨う。


 空に何かが飛んでいた。

 あれは、龍だっけか。


 丁度いい。

 またお腹が空いたから、あいつらでも喰おう。

 どうせまた、あいつらから攻撃をしてくるはずだから。


 突然視界を覆う程の咆哮(ブレス)と、魔法弾が辺りを埋め尽くす。

 ほら、また、自分は何故か殺されかける。

 何かをした訳では無いのに。


 いや、したか。

 多分、知らないうちに、あいつらの仲間でも殺してしまったのかもしれない。

 そういうのを、敵討ちって言うんだっけか。


 勿論、自分は何も思わない。

 ただ、攻撃されてるなと、思うだけだ。


 そして、自分の腹を満たすために、自分を殺そうとするものを消すために、あいつらを殺して、食べるだけ。

 なにも、変わらない、変わらない、いつも通りのことだ。


 そうして、自分はそれを壊すため、空を飛ぶ。

 この壊れた体と、壊れた羽で、自分を生かすためだけに、他を壊す。


 ああ、自分は一体、どこに向かうんだろう。

 そんな疑問は、戦闘音で掻き消され、やがてまた忘れゆく。





 ────そうして、その黒翼は、また一人ぼっちになる。



レイ「誰だこいつ」

S『さあ。誰か言ったらネタバレじゃないですか』

レイ「それもそやね」


きっと誰かです。

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