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神は好きに生きるそうです。  作者: 空の宙
1章 神の大冒険の始まりだそうです。
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SS お菓子をよこせ



 それはまだ、馬鹿な話を始める前の話──。





「トリックオアトリート! 供物を出さなきゃ祟るぞこんにゃろー!」


「……ごめんなさい。どこからツッコミいれればいいですの?」


「とりあえず菓子をくれ」


「ああダメだこの人。何とかできる気は全くしないけれど……」


 フォルトゥーネは自分の家の扉をうるさく開けてやって来た、突然の来客者に天を仰ぐ。

 その来客者は、なんというか、非常に可愛らしいコスプレをしていた。

 自作なのか、赤い髪を二つに分けて、黒い魔女っ子の格好をして、お菓子を持つための籠まで持っていた。

 一体どこまで本気で、どこまで冗談なのか。


「冗談だろうとなんだろうと、私はいつだって本気だ! そんなわけで菓子をくれ!」


「自重するという選択肢は……?」


「ないねっ! 何故私の星で私が自重しなきゃいけないのさ。おかしいでしょ」


「うんおかしいですの。全部おかしいですの」


「お菓子だけにー?」


「おかしいですの。お菓子は美味しいですの。……用意するんで待ってて欲しいですの」


「あら優しい」


「そりゃイタズラされるかもしれないなら、大人しく渡すですの。どうせその籠の中に既に入れてくれた人達も、同じような理由だと思うですの」


「えー、むしろ私のイタズラを楽しみにする人はいないのー?」


「ないですね」


「ないのか」


 レイは大人しく椅子に座った。

 なんというか、時折この主はこういう子供っぽい面をみせる。

 それはもう全力で、楽しむ気満々なのだ。

 逆に本人が楽しむだけじゃなくて、周りのものも楽しませようとすることもあるので、周りとしてはあまり強く出れない。

 まあ、そこまでの迷惑はかけてないので、大抵は子供をあやすような気分で対応しているのだろう。


「相変わらず散らかってんなー。魔女らしいけど」


「今一番ネタ的に魔女らしい格好を全力でしている人に言われたくはないですの」


「ネタの魔女と、神の言う本物の魔女は全然違うからいいでしょ」


 そう言いながら、既に貰ったお菓子を一つ食べながらくつろぐレイ。

 フォルは律儀に紅茶と実験の過程で作ったお菓子を持ってくる。


「で、どうして供物と祟りなんですの?まあ、ハロウィン自体をあまり知ってるわけじゃないですけど。精々貴女様から聞いた話から、他の星にある似たようなお祭りを知ってるという程度ですの」


「いやね、今は子供が仮装して家々を回ってお菓子を貰う楽しい行事だけども、なんか地球の文献とかちょっと調べたら、元の行事にはいくつか説があってね。その一つが、ハロウィンとは死んだ人のいるあの世とこの世が繋がり、お化けが出てくるだけじゃなくて、そこの死者達がちゃんと死者を祀っているか、家々を回って確認する日だーみたいなのもあってさ」


「なるほど、それで供物と祟りですか」


「しょゆことー。まあ私の勝手な自己解釈だけど」


「で、それが貴女様がお菓子をねだることとなんの関係が?」


「特に意味は無い。なんとなく、こっちの世界での十ヶ月と三十一日目の今日にはっちゃけようと思った」


「……ちょっと頭が痛くなってきたですの」


「材料は上げるからいい頭痛薬作ったら?」


「それはありがたいですのー」


 ふうっ、と一息つきながら、フォルはお菓子の入った瓶を開けて、お皿に移し替える。

 それはなんというか、簡単に言えばコットンキャンディであった。

 ただ、何かぱちぱちと、本当に静電気のようなものが漂っているが。


「ナニコレ?」


「雷の破片を封じ込めたなんちゃってぱちぱちキャンディーですのー」


「物理的にも名称的にもあかん。でも美味しそうだから食べる」


 手で掴み、静電気のようなものを常に感じながら、レイはそれを口に含む。

 そして、もぐもぐ、ぱちぱちとしながら、味を吟味する。


「……うん、リアルぱちぱちキャンディーだこれ」


「ええ、リアルぱちぱちキャンディーですの」


「これ普通のやつが食べたら痺れてくるんじゃないの。ていうか痛い」


「でしょうね。雷を魔力に留めた魔術の残骸含んでますもの」


「甘いし美味しいけど、お菓子というか実験の副産物だよねこれ?」


「まあほら、お菓子とイタズラを掛け合わせたと思って」


「お前がイタズラしてどうすんねん!」


 そう言いながらもレイはもぐもぐと食べていく。

 そして食べ終わると手を合わせる。


「ごちそうさま」


「お粗末さま」


 レイは席を立ち、扉に近付くと、最後に振り返る。

 イタズラ顔で持った手には、何故か、小さな観賞用かぼちゃをくり抜いて作られた、炎の代わりに何かが入ったジャック・オー・ランタンが。

 そしてそれを持ってノリノリに捨て台詞を言う。


「私曰く、お菓子を貰おうが貰わまいが、平等にイタズラしてあげるべし。そんな訳で、ハッピーハロウィンだよー!」


「え、ちょま……」


 そう言ってレイは、かぼちゃを手榴弾の如く部屋の宙に投げると、とっとと扉から出ていった。

 フォルトゥーネが唖然とした瞬間──


 パーン!


 ──かぼちゃの中身が爆発した。


 パラパラと宙に舞った部屋の中の研究用紙を眺めながら、フォルは尻もちをついていた。


「……いや、理不尽ですの」


 そう悪態をつきながら立ち上がろうとすると、手に何かあたった。

 それは一口サイズの、キャンディ状に包まれたクッキーであった。

 いつの間にか、爆発したかぼちゃの破片と、いくつかのクッキーがその場に散らばっている。

 どうやら、かぼちゃの中にあったクッキーが、爆発と同時に飛び出して来たらしい。

 包の方に何か魔術の細工がされているのか、爆発しても一切割れていない親切設計。

 フォルトゥーネは地味に手の込んだイタズラに、感嘆のため息を吐く。


「まったく、これだからあの方は」


 フォルトゥーネはクッキーを口に含む。

 これでクッキーまで心底美味しいというのだから、最早何も言うまい。

 彼女は一人、部屋の中で一言こぼす。


「ハッピーハロウィン、ですの」



S『爆発オチなんてサイテー』

レイ「それを言っちゃあいけねえ」

S『……トリックオアトリート』

レイ「え? 何か欲しい? んー、じゃあなでなでをやろう。よーしよしよしよし」

S『……ふふ』


チョロい(確信)

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