押してダメならいっそ押し倒してみればいいじゃない的な
S『えー、この話は、3章以降の時間軸という設定ですが、ぶっちゃけ今までの話を覚えていなくても大丈夫です。ほんとにただの寄り道なので「そーいやこんなバカ共いたなー」とぼんやり覚えてさえいればオーケー。え? 今誰かマスターのことバカにしましたか? はい天誅』
レグ『酷いもん見た』
「いっそ分かりやすく、一回告白してみればいいんじゃないかと思うんだよね。ただ好意を伝えるんじゃなくてさ」
「え、なに、いきなりどうしたのレイちゃん……」
「レイレイにちょー同意。いっそ告ったらどうなんすかルーリアちゃんや」
「え? もしかしてこれ話についてけてないの私だけ?」
「「何の話か分かってるくせにとぼけるんじゃない」」
「て、手厳しい……」
冒険者ギルドの一角、食事やら談笑やら作戦会議やらギャンブルやらをしてオーケーな、それだけ聞くとちょっぴり治安の悪そうなテーブルのある場所。
その机の一つに着いていた美少女三人組は、最近冒険者たちからは影でルーリア軍とか呼ばれてるパーティーメンツである。
一人目はレイ。
周りからは、最近冒険者になったまだまだ発展途上のちっちゃい子とか、実は魔法がめちゃくちゃ上手いとか、いやいや剣技が結構凄いんだろとか、どうにも噂の内容が一貫しないらしい。
特徴的なのはその赤髪で、それは燃える炎というよりも血の赤を彷彿とさせる濃い色であり、同じくその瞳も鮮やかな赤色。
しかし顔は十分美少女で、そういう意味で将来有望だな、なんて周囲の野次馬からは勝手に期待されていた。
おかげでまだ冒険者になったばかりだが、少しだけ目につきやすく、僅かに噂にもされている。
本人はその全ての噂を耳にしているが、まあどれも間違ってないしそう過大評価されてないからいいか、と周りの目は差程気にしてはいないらしい。
二人目はユウキ、冒険者としてはユキという偽名を使っている。
こっちはむしろ普通に有名人だ。
魔法も武術も格闘術も超一流で、最強の冒険者の一角と言えるのではないかというレベルの才能の持ち主だ。
そして何より、その才能を持った上での戦闘狂。
強い存在と戦うことをとことん好み、戦うことを心底楽しむ本物の戦闘狂だった。
お陰で黙っていれば相当な撫子美人なのに、全く黙ってられないからかなり残念なことになっている。
そのまんま残念美人であった。
もはやギャップ萌とか生まれないレベルの残念さなので、フォローのしようがないのである。
そして三人目が、そんな二人に突然なんの脈絡もなく糾弾された、ルーリア軍の筆頭ことルーリアである。
軽くウェーブがかった鮮やかな金髪に、宝石のようなエメラルドグリーンの瞳だけでも視線を集めるというのに、顔も大変綺麗に整っているのだからもう完璧である。
その上、魔法使いとしてもかなりの才能を持ち、誰にでも優しく明るく接するというのだから、文句無しの完璧美少女だ。
が、しかし、そんな彼女にも、既に影で周知されてる欠点があった。
それが今回の話題として上がった、恋愛。
非の打ち所の無い完璧美少女は、どうしようもなく、言ってしまえば、恋愛バカであった。
「いや〜、今更そういう話をされてもね〜。なんなら一回やったことあるしなぁ〜」
「「あんの!?」」
「あれ言わなかったっけ?」
「知らないから話してみたまえ」
「聞きたいから白状してしまえっす」
「気になるって思いっきり顔に書かれてるなぁ〜。いや別に、ほんと言った通りだよ? 一回告白してみたけど、伝わらなかったってだけだよ〜」
言うに、ルーリアは昔一度、リグアルドに告白したらしい。
幼なじみで両親同士も仲がいいため、しょっちゅう互いの家に遊びに行くくらい、仲が良かった。
そのため、告白の機会などいくらでもあったわけだ。
ある時、ルーリアは思い切って告白してみた。
ただシンプルに、「剣に打ち込みひたむきに努力する貴方が好きです」と言ったことを伝えた。
そして返答は、
ありがとう、僕のことをいつだって応援してくれて、何事にも一生懸命なルーリアが好きだ。本当に良い友人を持ったなと思ってるよ。いつもありがとう────。
「え? ルーリアお前ちゃんとアイツのこと刺してきた? せめてビンタくらいした?」
「やっべぇわ。こいつぁやっべぇわ」
「いや〜、流石リグルだよね〜。あの時に道のりが長いことを悟ったよ〜」
「こいつ目がちょっと死んでるよ、あの世に飛びかけている」
「ルーリアちゃーん! 強く生きろー!」
ふふふふふ、と少し遠い目をしたルーリアに、レイは物騒な言葉を投げかけ、ユウキは目の前で手を振って魂を現世に戻してやる。
正気に戻ったルーリアは一つ咳払いをして、話を続けた。
「まあそんなわけで、リグルっていうのはそういう人なわけだから、逆に無闇に告白とかしたくないんだよね〜。下手するとどんどん友情の方だと思われていきそう」
「アイツ絶対、『付き合って!』って言われたら『分かった、何処に行くんだ?』って返すタイプでしょ。私には分かる」
「て、典型的ー。その上本人なんの悪気もないんすよ。さっきの話のも、全部本気で言ってたに違いないっす。しかも遠回しに振るとかそういうのもなんもなく、マジモンの友情としての好意の告白。なんてやつだ。リグリグ恐ろしい子……」
「え〜でも〜、リグルのそんなところも、今となっては可愛く見えてきて、大好きなんだよね〜。惚けてる訳でも避けてるわけでもないあの顔、最早一周回っていいと思うんだ〜」
「やばいわ、ルーリアの方が恐ろしい子」
「どんどん恋愛煩悩になって来てるっすね。なんとかに効く薬は無いとは言うが本当にその通りっすわ。ダメだこりゃ」
すっかり恋心に溶けた顔をする恋愛バカ。
これで由緒ある侯爵家のご令嬢なのだから、世の中実に面白いものである。
「なんか、もうそうなってくると、リグアルドって照れ顔ってするの? っていう疑問さえ湧くんだけど、どうなんですかねえ幼馴染様」
「あ、それは確かに、あーしも気になる。リグリグに照れなんて概念あるんすか?」
「え〜? 照れ顔〜? 照れ顔かぁ〜。たしかにあんまり見たことないなぁ〜」
「大好きなお兄さんに褒められた時くらいしか無いんじゃないの?」
「うわあレイちゃん大正解」
「ダメだあのブラコン。お兄ちゃん大好きにも程があるんじゃないすかね。いや分からなくはないけども」
うーむと思案顔で真剣に悩み始めた三人。
ちなみに、今までの話の全て、聞き耳立てていた周囲の野次馬達に丸聞こえである。
冒険者はいつだって話題に飢えているのだ。
但し何名かはあまりの話の内容に胸焼けしていたが。
「三人で何を悩んでいるんだ?」
「おーっす三人ともー。どしたどしたー」
「お、本人登場」
するとそこに、丁度話題の本人、プラスでノクトが現れ、レイが背後に顔を向ける。
「難攻不落の城をどう落とすかについての話っすかね」
「……??? ダンジョンの話ですか……?」
「そうだね。ある意味迷宮入りだね。マジで光明が見えないタイプの」
「おーっと俺は察しちまったぜこんにゃろう。来たばっかりだけど帰っちまおうかな」
「せめて助け舟を出すんだ! 打開策を! 名案を!」
「あーしらじゃこの難解は解けないんじゃ! 三人揃って知恵が出ぬなら四人目っす!」
「離せー! いつも飛び火を受ける俺の身にもなってくれー!」
即刻立ち去ろうとするノクトにしがみつくレイとユウキ。
傍からは一見役得なように見えなくもないが本人の心中はお察しの通りである。
だが、肝心の話題の中心たるリグアルドは、未だに脳内クエスチョンマークで埋め尽くされているのだから全くもって報われない。
「……うん、よし」
そしてその間も一人思案顔してたルーリアは、徐に顔を上げた。
「ねえねえリグル」
「ん? どうしたルーリア」
ルーリアがその顔に浮かべたのは、眩しいくらいの微笑み。
その笑顔をただ一点に、リグアルド一人に向けてこう言い放った。
「やっぱりリグルは、剣を振ってる姿も、誰にでも優しくて気遣いが出来る姿も、目標のために真っ直ぐなところも、全部かっこよくて素敵だなって、改めて友達として思うんだ。隣に居てくれていつもありがとう」
どこからどう見ても、さっき無闇な告白したくないとか言ってたのはどこのどいつだ! と二人から突っ込まれそうな熱烈発言。
そしてそれを真正面から受けた本人。
「ありがとう。僕も、優しくてひたむきな努力を重ねて頑張り続けるルーリアはとても凄いと思ってる。間違いなく自慢の友人だ。僕の方こそいつも感謝ばかりだよ」
結論、リグアルドはリグアルドだった。
「ね〜、見てよ二人とも〜。リグルの貴重な笑顔だよ〜素敵な笑顔だよ〜ほらほら〜」
追記、ルーリアもルーリアだった。
「はーいはーい、本日は解散かいさーん」
「閉廷へーてー。罪状はリア充爆発しろでよろしくっすー」
「よーしじゃあクエストいくかー」
「あれえ無視〜? 照れ顔はさせられなかったけど笑顔は引き出せたよ〜。ね〜ね〜」
「結局、なんの話だったんだ???」
そしてこの一部始終を間近で聞かされていた、子猫と剣と思念体。
『いやあ、今日も平和だなあ』
『俺様めっちゃこの場から離れたいんだが。動けないこの立場を呪うわ』
『よしなるほど、あのニブチンに天誅落とせば万事解決ですね?』
『やめてあげて』『やめて差し上げろ』
世はなべて事もなし、だ。
S『あとなんかこの作品また一から書き直すそうですよ。設定やらなんやらをプチ修正したせいで。予定は未定だそうですが。いやあ笑えますよねハッハッハ』
レグ『酷いもん見た』




