98 コスプレ大会
「ひゃーい! レイレイマジでかわいいよー! 大好きー! ロリっ子レイレイちょー可愛い!」
「何故、何故この私が幼稚園児の服なんて……。ていうか! なんであるんだこんなの! 必要ないでしょ!」
「趣味で作ったっす!」
「万能か! 万能ゴリラか!」
「レ、レイちゃん……可愛い……」
「マスターが尊い……とっても尊い……」
「マスター可愛すぎます……大好きです……」
「やめて! みんな変な病気発症しないで! この変態に感化されないで!」
「はっ、完全にただのガキじゃねーか」
「うっさいわクソガキ! つかお前その格好だと格好つかないぞ!」
「だーまれクソ女神! てか服にツッコミ入れんじゃねえ! 俺様が一番嫌だわ!」
「にゃー……」
(パタパタ)
リグアルド達と故意に温泉で会った、次の日の夜。
宿屋木漏れ日亭の、一人用の狭い一室に、複数人がぎゅうぎゅうになって集まっていた。
ルーリアはベッドに、レグはロリータな服をユウキに無理矢理着せられ、窓淵に腰掛け、ほとんど体を外に投げ出している。
そしてメルウィーとスーレアは、ドア付近で立ったまま身悶え、アレンとウレクは部屋の外で気配と姿を消している。
そして、一番奇声を発しているユウキは、スマホを片手にレイの周りをグルグルしながら写真を撮っていた。
ここは地球じゃないんだが。
「あー……こいつのスマホを何時でも魔力変換式モバイルバッテリーで充電出来るようにさせなきゃ良かった……。ド変態を加速させるだけやん……」
「どーせ電波繋がってなくて、どこにもうp出来ないからセーフ!」
「大量に撮ってるのがアウトなんだよ……。ハッキングしてデータ全削除してから謎データでメモリーいっぱいにしようか?」
「え、やだ怖い。よしてくれっす」
レイにリアルな脅しをされて、ユウキはヒュッとスマホを背中に隠す。
Sと協力すれば、レイは機械に関して敵無しになるかもしれない。
ツララはレイの頭の上にちょこんと乗って、ふふんと笑う。
脅しのポーズのつもりなのだろうか、出来てないが。
「ユキさんのその謎の機械って、聞いていいものなのかなあ?」
「ハイテクノロジーのなせる技! 以上!」
「あ、聞かない方がいいんだね、理解しました〜」
ユウキの雑な説明に、ルーリアは乾いた笑いを口から漏らす。
理解出来ないし、させる気がないということを理解したらしい。
まあ確かに、ここら辺も話すのは色々面倒くさいことになるのは明らかだろう。
さて、ちなみにレイの泊まっている部屋で、しかも煩くしても良いように態々防音の結界まで張って何をしているかというと、端的に言えば、コスプレ大会である。
詳しく説明するならば、リグアルド達に温泉の無料券をあげて、偶然を装ってリグアルドの湯上り姿を見に行くイベントを仕掛けてもらったことへの、ルーリアからユウキへのお礼の代金という名の、着せ替え人形券である。
なので、アヴィーラウラを撫でているルーリアも、今はユウキから渡されたメイド服を着ている。
お嬢様にメイド服を着せるユウキ、中々に強者。
「ルーリアはさ、いくら取引とは言え、お嬢様がメイド服でいいの? しかもめっちゃシンプルなビクトリア式云々なやつ」
「え〜? 普段屋敷の世話をしてくれてる人達と似たような格好するの楽しいよ〜? 昔その服を着てみたいって言ったら止められちゃったし」
「そりゃいいとこのお嬢様が着ようとしたら止めるよ……」
「でもルーリアちゃん可愛いから何でも似合うっすよねー。あ、次このロリータ系とかどうっすか?」
ユウキが指で宙を弾くと、フリフリした愛らしいワンピースがベッドに落ちる。
ルーリアは物珍しいものを見る感覚で、それを手に取った。
「わあ〜、なんだかドレスとは違った意味で重そうだね〜」
「正直、ここまでくるとあーしの趣味じゃないっすけどね。なんか材料が余ったんで適当に作ったらこうなったっす」
「ねえお前って色々器用なの? 余り物でどうやったらこうなんの?」
「ユウキさんって、色々出来るんですねえ……」
「羨ましいです……」
「いやただのド変態だろ」
レイからは呆れられ、メルウィーとスーレアからは女性としての羨望を向けられ、ルーリアが着替え始めたため、上半身が完全に窓の外に落ちて下半身だけを部屋に残したレグはいつもの様に罵倒した。
散々に言われたユウキは、なんてことないように頬をかく。
「うーん、母親に少し仕込まれたのもあるけど、テキトーにやりたいようにやってたら出来てたんで、そこまで器用ってわけでもないっすよ」
「いやそれを器用って言うんだよ」
「そうなんすか? じゃあ、そうなんすかね」
そう言って笑った時のユウキの目は、少しだけ、感情が抜け落ちたような無機質な色をしていた。
それをレイが見つめると、周囲に悟られる前に、ユウキはいつもの笑った顔に戻す。
「まあ器用なのはいいもんっすよね。色々できっから。こうしてレイレイの色んな可愛い姿も見れるし! てなわけで、はい次これ! 私立小学校制服風!」
「まだあんのかーい!」
そう文句を言いつつ、レイはそれを受け取る。
それを見て、メルウィーとスーレアはヒソヒソする。
「マスター、色々言ってるけど、なんだかんだで着てあげてるわよね」
「何も取引してないのにね」
その言葉を耳が拾ってしまったレイは、着替えてる途中でピタリと止まる。
「……いや、その……温泉とか連れていってもらったし、あられ貰ったし、お礼っつーかなんつーか……」
レイは何かを誤魔化すように、ごにょごにょと言葉が尻窄みになっていく。
周りは黙ってレイの言葉を待つ。
「……その、色々服着たりするのも、案外楽しいから、つい……」
「レイレイ可愛いー! 大好きだー!」
「だー! 着替え中! 抱き着き却下ー!」
素直に可愛いことを言ったレイに対して、ユウキは至近距離で抱き着きにかかる。
まだブラウスまでしか切れてないレイはユウキを押しのけようとするが、幼女では勝てるわけもない。
「あだぁっ!? なんか今ピリッときた!?」
「ふんっ、天誅に勝てると思うなよ!」
「神様チート!? ズルいっす! 《痛覚無効》効かないとか反則っす!」
否、Sとの連携プレーなら勝てた。
神様ズルいである。
「ふふっ、レイちゃんもこういうの好きなんだ〜。じゃあ素直に楽しもうよ〜。ほら〜」
早速フリフリロリータ系のワンピースに着替えたルーリアは、レイをこちら側に引きずり込もうとする。
お嬢様でありながら、中々フリフリが似合っている。
「いや、だって、そんなにはしゃぐほどではないし、それにこいつが調子乗るから嫌だし」
「そりゃあもう! いろんな服着るのが好きと言われたらいっぱい出すっすよ! ほれっ!」
ユウキが両手を上げると、何も無い宙から様々な服が落ちてくる。
まだこんなに趣味で作ったのがあるのか、と一同は思った。
「ほらー! こうなっちゃうからー! もー!」
「いいんじゃない? 着れる時に色々着てみようよ〜」
「そっすよそっすよ! ほれ! このゴスロリとかどうすか! 着物ワンピとかどうっすか! 他にも色々あるっすよ! ほれほれ!」
「っ〜〜〜〜!」
レイは二人から服をグイグイと押し当てられ、ぐぬぬぬと嫌がる様子を見せる。
が、二人に壁際まで追い込まれると、両方の服を掴んで勢いよく持ち上げた。
「んだー! もー! 分かったよ! 着るよ! お前の作った服全部着尽くす勢いで着てやるよ全部よこせ!」
「きゃー! レイレイ男前ー! じゃあ全部着せるっすねー!」
「レイちゃん色々似合うからいいと思うよ〜」
「ああ、マスターがどんどん可愛くなっていく……」
「もうマスターは何しても尊いよね……」
そうして、女性陣は夜中になるまで、レイとルーリアを着せ替え人形にして遊びまくった。
レグはその間、窓枠に脚だけかけて、ずっと外にロリータな上半身を投げ出してたとさ。
「ほんと、変態ばっかだなー……」
ちゃんちゃん。
【扉の外組】
ウレク「ねえ兄さん。今マスターが着せ替え人形にされてるわけだけれども、もしメルやスーレアがやってくれたらどう思う?」
アレン「お前は俺に死ねって言ってるのか?」
オボロ「なんだ、アレンは恥ずかしがり屋なのだな」
アレン「スーレアが可愛い服で俺に迫ったりしたら多分死ぬ」
ウレク「やれやれ……」
【どこかの闇の空間】
S「あの、ルルディー様」
ルル「なあに?」
S「その、嫉妬していらっしゃいます?」
ルル「あら、何を? もしかして、レイを着せ替え人形にして散々かわいい服を着せて好き放題に遊んでいる正直よくやったと思わなくもないあの人間に対してかしら? してると思う?」
S「あ、いえ、もう、ナンデモナイデス……」
こっちもこっちで変態ばっかりでした。




