92 温泉の隣で
今回は温泉回、湯上がり後の話です。
空気が研ぎ澄まされ、緊張感が漂う。
向けられているのは、木刀と木刀。
向き合っているのは、鬼と人。
無言のまま、お互いに木刀を構える。
クズハとユウキの決闘の審判を務めることになったレイが、両者を確認して手を上げる。
「────始めっ!」
言い終わるか否や、二人の剣先がぶつかる。
都市ビギネルの道場に、気持ちの良いくらいの激突音が響く。
はてさて、一体全体どういう流れか。
事の始まりは半日前、湯上りの頃まで巻き戻る────。
「しっ!」
「せいっ!」
小さな剛速球が、左右に飛び回る。
最早やかましいと思うような軽い音が、湯上りの卓球場に響き渡る。
周りの者は、最早慣れたと言わんばかりに、その隣で平然と各々の会話をしていた。
だが完全に慣れていないものもおり、約一名に関しては苦笑いのまま魂が抜けたような表情をしていた。
それら状況の全ての原因が、誰もが予想出来ていたであろう、あの二人。
ユウキとレイの卓球が原因であった。
「やるじゃねえかレイレイ!」
「ふんっ! そっちは口調が崩れるくらいに興奮し過ぎてるみたいじゃん! そろそろ私のターン来ちゃうんじゃないっ?」
「はんっ、ほざけっ!」
正直、アイシャとの対戦時と以下同文、と済ませられるほどではなかった。
粗雑ながら天性のセンスで力強く打つユウキ。
その玉の動きを全て利用して流すように返す器用なレイ。
湯上りのほのぼのとした卓球とはなんだったろうか。
「ふふっ、私はもう慣れた、慣れたんだよ〜……」
それに対し放心状態のルーリア。
ツヤツヤして見えるのは温泉のせいだけではなさそうだ。
そんなルーリアの横で、レグとその腕に抱えられた猫のアヴィーラウラはルーリアを呆れ顔で笑った。
「おい牛女。今更あいつらの超人っぷりに驚いてんなよ。正体知ってんなら慣れたもんだろ?」
「いやいやいや……。それもあるけど、それもあるけどね? 今日一日で、色々知っちゃったってことを今更ながらに自覚してさ……。スーレアさんのお目目とか、アイシャさんがさり気なく狐になってたりとか、ユキさんがユウキさんとか……。私、こんなに色々知ってて消さりたりしないかなあって……」
「あー……。まあ、大丈夫なんじゃね? 多分」
『レイならちゃんと守ってくれるでしょ。……まあ、口封じの契約魔術をかけられるとかはあるかもだけど』
「ガチの口封じ、ありそうだな」
「え、なに、猫ちゃんと何を話していたの? 怖いよ? ガチってなあに!?」
「首が飛ばなきゃセーフだろ」
「アウトかな!?」
なにやら物騒な話をしているらしい。
それが杞憂となるか、現実的な話となるかはレイ次第なわけだが。
とりあえず、そろそろ閉店間際ではあるが、一同はまったりしていた。
が、閉店間際の店となれば、必ずくるものがある。
それは閉店の────
「ユウキー! さあやろうぞ!」
「わっつあだっ!?」
「あー! レイレーイ!」
────お知ら、せ?
いや、お知らせではなさそうだ。
どちらかというと決闘のお申し込みのようである。
閉店間際とは一体。
ちなみに今起こった現象を冷静に言語化してみる。
いち、クズハが突然薙刀持って現れた。
に、それに驚いたレイがその弾みで球を外し、謎に勢い余って顔から机に突っ込んだ。
さん、ユウキがレイのデコを心配しに傍に駆け寄った。
とまあ、こんな具合である。
ギャグとしか思えない。
「レ、レイレイ? なんで突っ込んだんすか? 危ないっすよ?」
「いやお前も驚けよ……。なんか武器構えた不審者来たんですけど……?」
「ホワイ?」
ユウキが首を傾げながら後ろを振り向く。
後ろでクズハが薙刀を構えたまま餌を目の前にした犬のようにニコニコしている。
「ユウキ! さあやろうぞ!」
そしてそのまま同じことを口にした。
「えー、タイショー、こんな夜遅くからやるんすかー?」
そして何故か平然と会話が始まった。
「私は構わん。なんなら終わったあと、ここの従業員用の仮眠室で寝ていけば良い」
「いやいやいや、あーしも宿を普通にとってるっすから。帰るっすから」
「じゃあとりあえずやろうか!」
「あんさんそれだけっすね? 支払いとかそういうの関係なくただ闘り合いたいだけっすね? いやまああーしも人の事言えないっすけども」
目的語が見えないから、周りからすればポカンとする会話である。
いや、多少分かるのだ。
クズハの薙刀とか物騒な単語とかのせいで、理解はしかけているのだ。
ただ、理解してないフリをしていたいだけなのだ。
ユウキと似たような人種が増えたことに。
「えーと、どちら様で?」
とりあえずレイは、ぶつけた額にヒールかけつつ擦りながら、ユウキに目を向けてクズハのことを聞いた。
「ああ、さっき顔を合わせたのはキクノさんだけっすもんね。ここに来たのも初めてだろうし」
そういって、ユウキはクズハを手で示しながら紹介した。
「こちらはクズハさん、通称女大将クズハさんっす。鬼人族指折りの強者で、女衆のなかじゃ最強って言われてる、ちょー強い人っす」
「純粋な闘技ならユウキから五本くらい取ったことあるしの! ワハハハ!」
「えっ」
クズハの豪快な笑い話に素で驚くレイ。
レイは素直にユウキを認めている。
正直、とっくの昔に人間辞めているんではないかと思うくらいには、その戦闘センスを認めているのだ。
そのユウキに対して、例え魔法無しの純粋な闘技だけだとしても、勝ったことがあるという事実は、素直に驚くべきことなのである。
「そんな奴知らなかったわ……。何せあっちの管理はほぼあいつに任せてるからなあ……。あいつもそれをわざわざ教えることないと思って教えなかったのか……? まあいいけどさあ……人族じゃないし……」
「レイレイ、何一人でブツブツ言ってるんすか?」
「うんにゃ、こっちの話。んで? その最強の女鬼人さんが、一体全体どういうわけで物騒なもん構えて、ユウキと物騒な会話してんのさ?」
「決闘じゃ決闘! お互いの強さをぶつけようぞ!」
「うっわバトルジャンキーやつー。増えんなしー。はー」
うんざりと言わんばかりに顔を覆うレイ。
疲れているのか、大分リアクションが雑になっている。
卓球でうっかり負けたことの悔しさも含まれているのかもしれない。
ユウキはクズハを宥めるように説得しにかかる。
「明日、明日にしようっすよー。明日約束の料理の提案とタイショーとの決闘しに来るっすからー」
「はーい、言質は取りましたからねー」
「うわぉキクノの姐さんまで」
卓球場の入口から、ひょこっとキクノが姿を表した。
裏の話だが、どうやら先程まで寝惚けていたのに、突然起きてユウキの元へ駆け出して行ったのを追いかけて来たらしい。
興奮し過ぎである。
「ユウキさんには、そこの猫ちゃんの分の特別料金として、お料理を教えてもらわないといけませんからねえ。キッチリ来てもらいますよー」
『あ、ボクが入れたのってそんな取引が裏であったからなんだ』
「よくオーケーでたな」
アヴィーラウラがレグの腕の中で納得し、レグは軽く苦笑いした。
キクノはやれやれと頬に手を当てた。
「本来なら使い魔でも入れたりするような例はないんですけどね。常連であり、度々特別なお願いもしてるユウキさんが、安全な使い魔だからどうしても、とお願いするもので」
「んで、特別料金代わりに、料理を教えてやることになってるんすよ。そのレシピの権利を丸ごと売るんす」
「マジかい。え、でも、特例への料金、お店側的にはそれだけでいいの?」
「ふふっ、ユウキさんの教えてくれる料理はうちにピッタリな雰囲気ばかりなので、メニューを増やすのにいいんですよ」
「ようするに、地球での知識を横流ししてるだけっす」
ユウキがすかさずレイの傍によって、耳打ちした。
レイは成程、と鼻で笑った。
「あるあるの、異世界人知識ズルいやつじゃん」
「やだなー、裏チートな神様に言われたくないっすよー」
「おいおい、私を誰だと思ってんの? この私だよ?」
「わぁー。この私様チョーツヨイっすわー」
傲慢なレイに、ユウキもやれやれとため息をついた。
そしてキクノは脳内で予定を確認し、ユウキに告げた。
「じゃあ明日の朝ちょっと過ぎたぐらいに来たらどうですか? お客さんも比較的少ないし。隣の道場も、クズハの毎朝の二十人抜きも終わった頃なら、鍛錬してる子も少ないし」
「毎朝二十人抜き???」
レイが頭にハテナを浮かべる。
ユウキは、ああ、と言ってレイに説明する。
「鬼人の里から出たやつとか、この都市でもクズハさんの腕を知ってて尊敬してるヤツらが、弟子として集うなんちゃって道場があるんすよ。それで、剣を教えてやる代わりに、参加出来るなら毎朝の二十人抜きに付き合えっていう条件付きでさ。つまりはそういうわけっす」
「一種のパワハラかな?」
「まあたまに興奮して骨をおってしまうこともあるがな!」
「なんて理不尽」
それでも人が集まるというのなら、このクズハという鬼人の実力と人望は相当なものなのだろう、とレイはこめかみを抑えた。
ユウキもため息をついて頷いた。
「分かったっすよ。明日行くっす。それが終わったらお料理会っすね」
「はーい。待ってますからねー」
…………といった具合の出来事を通し、そして現在。
「はぁー……。レイレイの前で格好つけたかったのに、まさか引き分けなんてなー」
「私も、まさか二人が同時に耐えきれなくなって木刀ぶっ飛ばすとは思わなかったよ。壁に突き刺さったままじゃんか」
床で仰向けになってへばっているユウキに対して、ツララの冷たさを額に乗っけて貸してやるレイ。
ツララはへばったユウキの汗の滲んだ額をぺちぺちと叩いた。
ちなみに、昨日のうちにアイシャはダンジョンにツララと交換で帰り、ツララはレイと行動を共にするようになった。
そして、レイの言う左右の壁には、それぞれ木刀が斜めに突き刺さっていた。
どういう物理法則で飛んだらそうなるのかさっぱりである。
ちなみに、そのうちの片方の木刀の近くには、アヴィーラウラと、立てかけられた大太刀のレグがいた。
ギリギリヒットしなかったらしい。
カタカタして見えるのは見間違いではなく、恐怖と怒りで震えているのだろう。
「レグってば可哀想に。当たればよかったのに」
「言葉の前後が合ってないっすよ」
(カタカタっ!)
「にゃあ……」
野郎ぶっ殺してやらー! とか聞こえそうなカタカタである。
アヴィーラウラもやれやれと鳴いてみせる。
相棒が相棒なら主人も主人である。
「ナハハッ! 流石はユウキだな! この私相手に引き分けたぁ、私もまだまだ鍛錬が足りんな!」
へばるユウキを見下ろして、クズハが豪快に笑う。
向こうも汗を流しているが、興奮しているのか全く疲れているように見えない。
ユウキは元気なクズハに苦笑いした。
「タイショーも充分に強いと思うっすけどね。やっぱまだまだ剣だけじゃ勝てねえなあ」
「大抵は勝ってるんでしょ?」
「ぶっちゃけ、その時の調子とまぐれっすよ。バフスキル切ってやってるっすけど、追い詰められると間違えてオンにしちゃうことあるし」
「え、お前バフ切ってたん?」
「普段から全部切ってるっすよ?」
「え」
この決闘は、当然ながら純粋な剣技のみの勝負。
アクティブスキルは使用禁止。
魔力での身体強化も禁止である。
しかし、身体能力の一部ともなっているバフスキルを切れとまでは縛ってない。
切ってしまえば、普通の弱い人間と同じレベルになるからだ。
なのにユウキは、自分から全部切っているというのだ。
ドMか何かだろうか。
勿論、システムそのものであるSは、このことを知っていたわけだが。
「あ、でも五感強化系だけはいつもオンっすよ。便利っすからね。レイレイの匂い辿れるし」
「その情報は聞きたくなかった。じゃあお前、普段から純粋な肉体戦してんの? マジで筋肉ゴリラなの?」
「だってバフスキルをオンにしてたら、大抵楽しめないじゃないっすか。ワンパンで終わっちゃうし。ていうか、手加減しなかったら、魔物を文字通り木っ端微塵にすることあるし」
「なにその人間兵器怖い」
「それがあーしっすから」
ナハハッと軽く笑うユウキ。
レイは頭が痛いのかこめかみを抑える。
床に倒れるユウキに近付きしゃがみ込んだクズハが、その額を指でつついた。
ツララもそれを真似して、両手で可愛らしくつんつんとつつく。
「私も流石に、魔法アリ、バフスキルオンの全力のユウキには勝てる気がせんよ。が、純粋な剣技だけなら、まだまだ引けを取る気はないさ。もっと精進し、私を楽しませ続けるんだな」
「ハイハイ。付き合って上げるっすよ、タイショー」
呆れ笑いをしながらようやく体を起こすユウキ。
その拍子に、ユウキの腹の上をツララがこんころりんと転がる。
レイはそれを受け止めてやり頭を撫でてやると、ふと何かに気が付いた。
「あれ? そういえば今更だけど、鬼人達はユウキのことユキって呼んでなくない? いいの?」
ユウキはとある事情により、ユウキではなく冒険者ユキとして名乗るようにしている。
なのに、鬼人達は誰一人としてユキと呼んでいない。
ユウキにとってその状況はいいのか、とレイは聞いた。
「ああ、それっすか。あーしも始めはユキって名乗ろうとしてたんすけどね」
ユウキは頭を掻きながら、ちょっとした昔話をし始めた。
「鬼人の里には、始めはそんなに長く滞在するつもりも、仲良くするつもりもなかったんすよ。でも、レグと話している際中、ユウキって名前がうっかりバレちゃって。んでまずいことになるかなーって思ったら、タイショーが木刀を一本投げ付けてきたんすよ」
「おう。んで、私は言ってやったわけだ。『お前が何者であるかどうかなど、どうでもいい。所詮、人の噂話など、誇張された与太話である事の方が多い。言葉など当てにならん、語るなら剣で語れ』とな。結果、私はこやつに負け、そして素直に認めることにしたのさ」
「なにそれ戦闘部族怖い」
(ぷるぷる)
レイの肩の上でツララもレイに同調するように震える。
ユウキは昔を懐かしむように笑った。
「それから、あーしの身分はタイショーが保証してくれるようになって、あーしは鬼人の里で受け入れて貰えるようになったんすよ。少しだけ気が楽になって助かったんす。だから、あーしにとってはタイショーはちょっとした恩人みたいなものなんす。その恩を返すためにっていう意味合いも含めて、こうして度々剣を交わしてるんすよ」
「へぇー。単純に両方バトルジャンキーだからってわけじゃなかったのね」
「「まあ実質その通りなわけだが」」
「そこは否定しようか。今のいい話な雰囲気を壊さないために否定しようか」
「本心を偽ってなんの意味があるかい童よ。力は全てを語るのだ」
「あー、あー、聞こえません聞こえません。脳筋発言聞こえませーん」
親指をグッと立てるクズハのドヤ顔に対して、レイは両耳を両手で塞いだ。
ツララも真似をして聞こえないフリをする。
結局のところ、どこか似たもの同士、通じるところがあったのだろう。
「ところで、ユウキとつるんでいるお主は強いのかえ? 私はまだまだやれるのだが。一戦どうだ?」
「あーっと! それはあーしの権利なんすよ! レイレイと闘っていいのはあーしだけっす!」
「そんな権利お前に寄越した覚えもなければ誰かに配った覚えもないわ!」
「あだばっ!」
アホなこと言いつつも、咄嗟にレイを守ろうとしてくれたユウキを、レイはチョップでツッコミを入れる。
流石のユウキも、レイとクズハでは色々とマズいと思ったのだろう。
「ちぇー、仕方ないのう」
クズハとしても、流石に子供のレイを間違っていたぶってはいけないと思ったのか、素直に引いた。
「じゃあしばらくはユウキもこの街にいるらしいし、付き合ってもらおうか」
「はいはい。了解っすよ、タイショー」
「お前も大変だねえ」
レイが珍しくユウキに同情するように肩をポンポンと叩く。
そしてユウキが立ち上がるのをクズハが手伝い、お互いに拳をコツコツとぶつけた。
「して、次はキクノのところだな。恐らく待ちくたびれている頃だろうぞ」
「そっすね。じゃあ次はキクノ姐さんのところまで行くっすかね。レイレイはどうするっす? ついてくればお零れで何か食べれるかもっすよ?」
「うーん、どうしよっかなあ」
レイが本日の予定に迷ってると、ツララがレイの耳元で小声で話す。
「ん? なになに? ……あー、なるほど? それも楽しそうだね。道すがら魔物も倒せるし。うん、そうしようかな」
(こくこく)
「おん? もしかしてアイちー達のところ行くんすか?」
「そーすることにした。てなわけで、また夜に宿でねー」
「あいよーっす」
「次はお前も手合わせしようぞー」
「お断りしまーすよー」
レイは手を振りながら、道場を出ていった。
ツララも肩の上で小さな手をフリフリと振った。
残ったのは、ユウキとクズハ。
「それじゃ、タイショーは弟子達の指導っすか?」
「おう。あとで美味そうなもの残しておいてくれ」
「はいはい。了解っすよー。みなさーん、終わったっすよー」
ユウキがレグを持った後、そう言って扉を開けると、外で待機していた鬼人族の弟子達がゾロゾロと入って来た。
本当は観戦したかったのだが、久々二人が本気でやりたいといったため、咄嗟の流れ弾ならぬ流れ剣に対応出来るレイ以外は残念ながら外で待機していたのだ。
正直、この二人が本気になると、斬撃の余波だけでも危ない。
なので、己の未熟さを自覚している賢い弟子達は、部屋の外で歯噛みしながら座っていたのであった。
「お疲れ様です、ユウキさん」
「どっちが勝ちました?」
「今日は引き分けっすよー。もー、悔しいっすー」
「さ、流石はユウキさん……」
「師範に引き分けだなんて私達には到底届かない世界ですよ」
「全くこの軟弱な弟子共め。この私を超えるくらいを目指して貰わなければつまらんではないか! 訓練内容を倍にされたいか?」
クズハは木刀をヒュンヒュンと上下に振りながら弟子達にブーブーと不満を漏らす。
その剣先だけでも恐ろしい弟子達は震え上がりながらそそくさと中に入って鍛錬の準備をし始める。
「か、勘弁してください」
「いつも通りのをこなしますからっ」
「あっははっ。楽しそうっすねえ。それじゃ、タイショーまた後でーっすよ」
「おう、後ほどな!」
ユウキはクズハに手を振って、足取り軽く温泉の方に向かった。
背中の腰辺りの高さにレグをやると、大太刀から闇の紐のようなものが出てぴったりと背中に張り付く。
「さてさて、次はクッキングタイムっすよーん。ふんふふふーん、いえいっ」
たんっと軽く跳んで、スキップ風に歩いていくユウキ。
後ろの道場からは、朝から威勢のいい気合いの入った掛け声が響く。
少しだけ騒がしいような、しかしいつも通りの平穏な朝を、都市ビギネルは迎えた。
レイ「お前さ、ユウキのバフスキルオフ問題知ってたでしょ。なんで教えてくれなかったん?」
S『すみません。態々教える必要も無いかと思いまして』
レイ「まあ知った所で衝撃しかないけども……やっぱやべえなあいつ、ステータスマックスなら、もう人間やめてんじゃない?」
S『違いないですね』
規格外人外に規格外人外と呼ばれるユウキ。
恐ろしい。




