91 温泉茶番舞台裏
S『えー、お久しぶりです。突然ですが、残念なお知らせがありマース』
S²「せんぱーい! お願いだからもう少しやる気出してー!」
S『はいっ、みんなにお知らせがあるよ! 8月から投稿する3章の後日談だけど、いつもの二日置き投稿じゃなくて、一週間ごとになったの! 本当にごめんね!』
S²「せんぱーい!! さては貴方人口精霊のくせに夏バテしてやがりますねー! 働かせてごめん!」
はい、というわけで。
3章後日談、一週間ごとに投稿となります。
いつも通りだと思った方、申し訳ございません。
頭が発酵して納豆菌生えそうです(色々とおかしい)
ユウキ達が楽しいダンジョンに出発した後の話……。
「……お、お邪魔します」
都市ビギネルにある、鬼人族が経営する日帰り温泉にて、一人の客人が恐る恐る扉を開ける。
客にしては、なんだか怯えた様子だ。
横開きの扉に吊るされた竹の入店ベルがカラカラと鳴ると、すぐ目の前の受付から人が出てくる。
「はぁい〜、ようこそ当館へ……」
影響スマイルを浮かべてやってきた鬼人族の女性は、その来客者の顔を見るなり、あらまぁ、と驚いたように口に手を当てた。
「オボロじゃない、一人でどうしたの?」
来客、否、黒装束の覆面を下ろしてやって来たオボロは、言いにくそうにモジモジする。
どうやら、この二人は知り合いらしい。
「その、この店の予約を、姐御、ユウキさんの代わりに……」
「あら、肝心のユウキさんは?」
「新しく出来たダンジョンに、パーティーと共に遊びに行っている」
「ええ? パーティー? ユウキさんって一匹狼で活動していなかったかしら? ここにだって、今まで誰かと来たことなんてなかったじゃない」
鬼人の女性は、意外な所に首を傾げる。
女性のその疑問に対して、オボロは頷いた。
「某も大抵姐御と共にいるが、誰かとパーティーを組んだり、長くいたりすることはほとんど無かったな。どうやら、そのパーティーの中にいる一人とは、付き合いが長いらしい。今まで見たことの無いはしゃぎ方をしていた」
「素面でも相当濃い性格をしてるあの方がはしゃぐだなんて、むしろ見てみたいわねぇ」
「あれは見ると結構驚くぞ。今まで里で課されたどの任務よりも驚いた」
「あらっ、昔私達が悪戯で掌サイズの虫の魔物の死骸を置いといただけで里中に響き渡りそうなほど絶叫してた貴方が?」
「おい、比較対象がおかしいぞ。というかっ、そんな醜態は忘れろっ! 何年前の話だ!」
「あらヤダー、あんな楽しいこと忘れてあげるわけないじゃない〜。覚えておいてあげるから安心なさいな」
「っ〜〜〜!」
完全に手玉に取られていた。
どうやら顔見知りどころか幼馴染らしい。
オボロはらしくなくプルプルと屈辱に震えていた。
やがて、これ以上やられると癪だと思ったのか、コホンとわざとらしく咳払いをした。
「して、とりあえず予約だ。四日後か五日後ぐらいに、閉店するまでの一時間ほど、貸切をしたいそうだが」
「貸し切り? いえまあ、閉店前ならあまり人もいないし、別に可能だけれど……。ユウキさん一人じゃないの?」
「おそらく、今共にいるパーティーメンバーとだろう。男女共に貸し切りたいとのことだ」
口ではそう伝えるが、オボロは恐らくそうではないと感じている。
何故なら、頼まれた人数は、女子五人、男子四人だからだ。
あのパーティーは、ユウキ含めて、女子三人、男子三人だ。
レグを男子として入れるつもりなら四人だが、まだ人型になると明かしていないのに、突然合わせるとも思わない。
どう考えても人数が合わないのだ。
となると、レイの周辺に潜んでいるであろう、謎の存在達か、とオボロは推察していた。
一度、レイに命令されてユウキを足止めしているアレン達を、オボロは目にしている。
ユウキといい勝負をしていたが、全員うちのめされてしまい、オボロはユウキの影で合掌していた。
相当な強者であろうということは予測している。
だとすれば、四人の内の女子二人と、ユウキとレイと、あのパーティーの中でもよりレイと親しく見えたルーリアという少女を合わせて五人か、というところまで、オボロは考えていた。
だとすると、男子の方はパーティーメンバーではないのだろう。
レイの影にいる二人と、レグと、あと一人は誰なのか。
まさか自分を入れる気ではあるまいな、と思うが、互いに姿を隠している者同士を入れることは無いだろうと考えを振り払う。
「あらあらあら……。面白いことが起こるものねえ。ちょっと待って頂戴。計算するものを持ってくるから。上がりなさいな」
「えっ、その……」
「こんな入口で、大金のやり取りする訳にはいかないでしょう? クズハ〜? 起きてオボロにお茶でも出してくださる〜?」
オボロが静止するも虚しく、正論で無理矢理上がることになってしまい、そして女性が呼んだ名前に戦慄した。
女性が受付室の扉の向こうに消えて、何やら作業をしている間に、別の人物が扉からのっそりと現れた。
「……ねみぃ」
その人物は、従業員の着物をキチンと着ているものの、髪は寝起きで乱れており、目は眠そうに開いたり塞いだりしていた。
とても接客の態度とは思えない。
だが、そのやる気のない、クズハと呼ばれていた女性に対して、オボロは身体を固くして挨拶に片手を上げる。
「ど、どうも、クズハさ────」
────ヒュッ、と、空気を斬る音がなる。
いや、もしかすると、恐怖によりオボロの喉から漏れた声かもしれない。
「……なんだお前」
突然クズハの手に現れたのは、一本の薙刀。
その刃先が、オボロの喉に当てられていた。
視覚で捉える事も、聴覚で認知することも出来ない、刹那の一線であった。
「お、おおお落ち着け! 落ち着いてくださいクズハさん! 某はオボロです! 侵入者じゃありませんから!」
その先制攻撃に怯えたオボロは、両手を上げて自らの正体を口で述べた。
その言葉に、クズハはぐるんぐるんと首を左右に傾け、オボロをマジマジと見る。
「んぁー……? そんな奴が、知り合いにいたような、いなかったような……いたような……」
「います! いましたから! なので威嚇しないでください! あと少し動かされたら食い込みますんで!」
「んんん…………くかぁー……」
「寝た!?」
だが悲しいかな、クズハは思い出そうと脳を動かしたことに疲れたのか、薙刀を綺麗に構えたまま寝始めた。
器用なものである。
だがやられた側は溜まったものでは無い。
構えられたままということは、眠ってはいるが警戒されたままということ。
下手に動けば首が飛ぶ恐れがあった。
「キクノ! 助けてくれ! クズハがまた寝惚けている!」
「あらあら〜、それは大変ね〜」
「他人事のように言ってる場合か! 動くのが怖いからなんとかしてくれ!」
キクノと呼ばれる女性がいる受付室に叫ぶも、返って来たのは呑気な返事。
どうやらいつもの事らしい。
慣れとは恐ろしいものだ。
計算道具の準備を終えたキクノは出てくると、紙を置いて書く木の板で、ポンポンとクズハの頭を叩く。
「クズハ、起きなさいな。どうやらユウキさんのお使いで来たらしいわよ」
「…………なにっ!? ユウキだとっ!?」
ユウキという単語に、反射的に起き上がったクズハ。
その拍子に手元がぶれて首が飛ばないかとオボロはハラハラしていたが、興奮し始めたクズハは即座に薙刀をオボロから床に突き立てた。
オボロはようやく一息吐き出すことが出来た。
「ユウキ、そうか! ユウキか! そーかそーか! んで、どこにいるんだ?」
「だーから、オボロがお使いできたのよ。ここには居ないわ」
「えー……なんだそれつまらん……。折角今ので二日酔いが覚めたというのに」
「何二日酔いを営業にまで引きずってるんですか。相変わらず飲んだ後が弱いんですね」
「それでも酒を飲むのはやめられんから仕方ない。ちっ、折角血が沸くかと思ったのに。代わりにオボロでも扱くか」
「それはマジで勘弁してください。貴方加減を間違えて骨の一本とか折りに来ようとするんですから」
「はんっ、これだから軟弱な若人は。骨の一、二本で喚くんじゃない。嫌だったら、私のうっかりで折れないようにもっと身体を鍛えるんだな」
「うっかりで折られたらたまったもんじゃないですよ」
オボロは頭が痛くなってきたのかこめかみを抑えた。
目の前のクズハという女性は、今は休暇中なのかここで従業員兼用心棒をしているが、鬼人族の中でも指折りの力を持っており、沢山の弟子を従えている。
か、如何せんやりすぎな所がある。
指導する間に興奮しすぎて骨の一本二本を折り、毎度応急処置のための回復担当がその場に付いているのは、最早鬼人族にとっては日常である。
しかも酒をよく飲むくせして後に引きずる。
寝ぼけていると、知り合いや侵入者に対してだけだが、先手をとって先程のようなことをする。
また妙に濃いキャラがいたものだ。
そんな、全体的に鍛え上げられた者が多い鬼人族の中でも指折りの強さを持ったクズハが、規格外の強さを持つユウキを気に入るのは、ある意味突然の事であった。
ユウキは素直に強さもあるし、骨の一、二本折れたくらいで挫けるような精神も持ち合わせていない。
クズハにとっては絶好の相手である。
おかげでいつも、ユウキと剣を交えることを心待ちにしているのだが、出来ない時はオボロがとばっちりをくらう。
オボロが優秀なのは、あくまで忍びとしての範囲内なので、純粋な剣技となっては勝てるわけもないのだ。
何時だって自由奔放なものに付き従う者は、それだけ苦労を背負うことになる。悲しいことに、これは世の真理なのだろうか。
「まあそれは後でにして、とりあえず勘定だけ済ませてしまいましょう? 終わったら好きなだけこき使ってあげるから」
「待て。何故勝手に某が働く事が決定しておる。そんなこと一言も……」
「あら、貴方の妹の近況報告とかお手紙とか、貴方宛てのプレゼントとか届けられてるのだけれど、いらないのかしら」
「さっさと済ませてキリキリ働いてやろうじゃないか」
乗り気でなかった態度なぞ最早なく、途端にオボロはやる気に満ちていた。
それを見てキクノは苦笑いを浮かべる。
「……貴方って本当に」
「私、ユウキに聞いた事あるから知ってるぞ。こういう奴をシスコンと言うのだとな!」
的確な言葉を当てて豪快に笑うクズハ。
そんな言葉は聞かないフリして、オボロはいそいそとする。
ふと、その途中でオボロは思考した。
(まて、まさかとは思うが、姐御、某がこうしてここに捕まることを想定して使いにだした訳ではあるまいな?)
大抵、オボロがここに来ると、男手として扱き使われることが多い。
今回も、乗せられはしたが、結局働くハメになった。
もしかすると、それを読んでいたのではないか、と。
(いや……まさかな……)
それはあまりにも計算ずく過ぎると、オボロは頭を振って疑念を振り払った。
とりあえず、予約をするのが先なのだ。
その果てに、妹からのプレゼントが待っている。
そう思うだけで、オボロはどこまでも機嫌が良くなり、結果ユウキが帰ってくるまでこき使われる羽目になったのであった。
一方その頃のユウキ……。
「オボロん、ちゃんと捕まってくれたかなー。でないと、レイレイとダンジョンおデート出来ねーもんなー」
「おーい、ユキー? また寒さにビビってんの? 早く行こうよ」
「はいはーい。今行くっすよーん」
どうやら、考えすぎでは無かったそうな。
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『今回は休憩』
適当な紹介
クズハ:強い、酒好き、決闘好き、と三拍子揃ったやばい鬼さん。
キクノ:おっとりしつつ、怖いお姉様。クズハのブレーキ役。
キクノはオボロと幼なじみで、クズハは歳上です。
え? オボロシスコン疑惑?
知らんな。




